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【連載】ハブでも分かる!?遺老説伝 Vol.75 牡馬の祟り
『ハブでも分かる!?遺老説伝』とは
『遺老説伝(いろうせつでん)』は1743年から1745年にかけて琉球王国の正史として編纂された『球陽(きゅうよう)』の外巻で、各地の御嶽や行事の由来、珍しい出来事などを首里政府が各地に命令を出して集めたものとされています。
当連載『ハブでも分かる!?遺老説伝』は、"ハブでも分かる" をコンセプトに、原文(漢文)をそのまま読み解くには難解すぎる『遺老説伝』を、沖縄出身の漫画家・吉元あきこが漫画で描き下してみる、という試みです。ただ、本当にハブでも分かるかどうかはハブのみぞ知るので悪しからず。
*当連載の内容はすべて史実というわけではなく、フィクションが大いに含まれていますのでご了承ください。
第75回『牡馬の祟り』
牡馬(おすうま)の祟り
ふだんうんと肥らせて、お正月には殺して食べようと思って養っていると、月日の過つのは早いものでお正月もせまって十二月二十八日になりました。
多真利は、この牡馬を殺すため斧を持って原ッぱに連れて行くと、馬は自分が殺されることをわかってでもいるかのように、路々いくどとなく悲しい声を出していななくのでした。
ようやく原ッぱまでひっぱってきた多真利は早速殺すことに決めて、斧を振りあげ今まさに打殺そ うといたしますと、不思議にもこの牡馬は四方へかわるがわるむかって声高くいななき、それが終ると今度は前の双足をまげて、人間が膝まづきでもして命乞いをする格好を致します。
これがすむと東の方へ向って淋しそうに三声いななき、そして静かに深く深く首をたれその両眼をおうようにしていましたが、とうとう多真利の斧にかかって死んでゆきました。
ところがその後珍らしいことに、この多真利の家では主人の多真利を始め、妻子までひきつづき病にかかって死んでしまいました。
今の世になっても彼の子孫はことごとく絶えていないそうです。
この事があってから以後、宇堅邑の人が牡馬を飼うと即座に死んでしまいますので、牡馬は決して飼はないことになったという話です。
『琉球民話集 全巻 球陽外巻遺老説伝口語訳』 P43-44より
琉球史料研究会編(1963年)
<バックナンバー>
プロローグ『クバとハナ』/第1回『那覇という地名の由来』
第2回『田芋のふるさと』
第3回『天久宮の伝説・前編』
第4回『天久宮の伝説・中編』
第5回『天久宮の伝説・後編』
第6回『辺戸の星窪』
第7回『羽地祝女』
第8回『邑(ムラ)を作った兄弟・前編』
第9回『邑(ムラ)を作った兄弟・後編』
第10回『神々の遊び』
第11回『貫玉』
第12回『普天間宮の伝説-1』
第13回『普天間宮の伝説-2』
第14回『普天間宮の伝説-3』
第15回『普天間宮の伝説-4』
第16回『普天間宮の伝説-5』
第17回『西表島の祖納堂』
第18回『水の恨み・前編』
第19回『水の恨み・後編』
第20回『御水マラソン』
第21回『おもろそうし』
第22回『睡虫次良・前編』
第23回『睡虫次良・後編』
第24回『時双紙』
第25回『城殿』
第26回『夫人の仇討ち-1』
第27回『夫人の仇討ち-2』
第28回『夫人の仇討ち-3』
第29回『夫人の仇討ち-4・完』
第30回『進貢船』
第31回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-1』
第32回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-2』
第33回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-3』
第34回『恐ろしい報い』
第35回『宝剣 千代金丸-1』
第36回『宝剣 千代金丸-2』
第37回『宝剣 千代金丸-3』
第38回『宝剣 千代金丸-4』
第39回『宝剣 千代金丸-5』
第40回『宝剣 大昔の世』
第41回『津波を防ぐ方法-1』
第42回『津波を防ぐ方法-2』
第43回『津波を防ぐ方法-3』
第44回『世誇宮』
第45回『平和の神-1』
第46回『平和の神-2』
第47回『淵の幽霊船-1』
第48回『淵の幽霊船-2』
第49回『神文の水』
第50回『安里神社-1』
第51回『安里神社-2』
第52回『安里神社-3』
第53回『亜佳渡前』
第54回『寺織名-1』
第55回『寺織名-2』
第56回『寺織名-3』
第57回『平松』
第58回『鄭大夫岩-1』
第59回『鄭大夫岩-2』
第60回『女傑諸樽-1』
第61回『女傑諸樽-2』
第62回『博打屋』
第63回『黄金の瓜子-1』
第64回『黄金の瓜子-2』
第65回『黄金の瓜子-3』
第66回『黄金の瓜子-4』
第67回『黄金の瓜子-5』
第68回『黄金の瓜子-6』
第69回『黄金の瓜子-7』
第70回『黄金の瓜子-8』
第71回『若狭町の地蔵堂』
第72回『化け物に負けた男-1』
第73回『化け物に負けた男-2』
第74回『鉄縄礁』
第75回『牡馬の祟り』
ゲストライター
- 吉元あきこ
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沖縄で生まれ育ち、京都の芸術大学を卒業。地元を愛し、沖縄マンガを描くことを生業としています。Twitterで作品を公開中です。
実はキジムナーに会ったことがあるのが自慢ですが、よく覚えていないことが残念。
好物はジミーのアップルパイ。
ワラビーにて「5年1組 でいご通信」連載中。
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BLOG:ありんくりん書房
Youtubeチャンネル:ウミナイビ城 / Uminaibi Gushiku
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