ペットのウチカビを作った話

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飼っていた猫の死から、ペット用のウチカビをつくるまでの話です


「にゃんすこう」は猫まっしぐらなのか

少し前に飼っていた猫が死んでしまった。保護猫なのではっきりと年齢は分からないのだけれど、多分12歳くらいで最近は随分と貫禄が出てきたなぁと思っていた。それが腎臓が悪くなって、入院。最期はあっという間だった。

ペットと暮らした時からそういった別れが来ることは覚悟していたつもりなのだけど、やっぱりつらい。今でも寝室の扉はちょっと開けておくし(必ず夜は寝室に入ってきてた)、寝ている時もつい足で猫を探してしまう。

小学生の息子と保育園生の娘の悲しみも相当なものだった。悲しみに暮れる子供たちに虹の橋を渡る話や、死後の世界の話などなど色々な話をしたのだけど最終的に子供たちに刺さったのは「お盆になったら戻ってくるから迎えてあげようぜ」という話だった。それからはお盆に梅(猫の名前)をどうやって迎えるとか、どうやって送るとか少しだけ悲しみに整理がついて前を向けている気がする。

 

さて、沖縄のお盆についてなのだけど沖縄のお盆の最終日にはウチカビという紙銭を燃やしてご先祖様に持たせるという風習があるのは皆さんご存じだろう。

だけど子供たちにお盆のことを話していてふと思ったのだ。ペットをウークイで送るときにお金を持たせても「猫に小判」状態なのではないかと。

そうだ。ペット専用のウチカビを作ろう。

ペット専用のウチカビを考える

ペットに贈るものは何がよいのか…ちょっとベタではあるが、猫は魚、犬は骨が良いのではないだろうか。そうして書いた企画書が上の写真である。普段はちょいちょい工作して終わりなのだが、なんだかペットのウチカビはちゃんと商品にした方がよいのではないかという使命に燃えていたのだ。

企画書を持っていたのは県内でウチカビを作っている(【大人の社会見学】うちかびが出来るまで)昭和製紙さん。こんな感じの商品を作りたいのでお金が刻印されていないウチカビの紙を購入できないかという相談をしに行ったのだ。最終的には紙を購入することはできなかったのだがサンプルとして無刻印のウチカビの紙を少し頂くことができた。

この紙を元に、次はどのように魚と骨を紙に打ち付けるかを模索していく。

最初に思いついたのは金属製のクッキー型。これを強く押しつけることでウチカビにならないか、と思ったのだがなかなかうまくいかない。

もうそれならばいっそ、作っちゃった方が早いのでは…ということで3Dプリンタで作ってもらった型のサンプルが上のもの。相談に行ったのは宜野湾市にあるデザイン&クラフトカンパニーという会社で活版印刷や箔押し機、3Dプリンターやレーザーカッターなどもの作りの設備が一式揃っている。こんなことをしたい…みたいな相談も親身になって聞いてくれてありがたかった。

ただ、やはりネックになるのが型から紙に押しつける方法で、かなり強い力が必要な事が分かってきた。その昔、ウチカビは金属製の型をハンマーでガンガンと打ち付けて作っていたらしいが、さすがに3Dプリンタで出した型をハンマーで打ち付けると壊れてしまいそうだ。


あと版を作る段階で猫犬共用に変更しました。猫飼いなので魚多めです。

さらに検討を重ねて最終的に金属の版を作ってもらって版画プレス機みたいなもので押しつけるという形に落ちついた。これによってくっきりとした刻印が可能に。跡もくっきりとしていて、すごくいいぞ…!

 

もう一度ウチカビの紙を考える

これで完成!と言いたいところなのだけど、先にも言ったように昭和製紙さんから材料となる紙を買うことができないので紙探し。

今回で気づいたことがあったのだけど、実は昭和製紙さんのウチカビの紙はちり紙の花笠にかなり近い。とはいえ白い紙だとウチカビっぽくないのである程度色があった方がよい(できれば黄色)。無印良品の無漂白紙の付箋が色的に風合いが近かったので無漂白のキッチンペーパーを使ってみたり、黄色いティッシュ(世の中にはそんなティッシュが存在するのだ)をわざわざ取り寄せたりしてみたのだが、なかなか思うようなものが見つからなかった。

これがベスト!というものがなかったのだが、検討を重ねて黄色い薄紙を使うことにした。

 

こちらがペットウチカビです

こうして出来上がったペットのウチガビがこちら。

ウチカビ一枚に魚が72匹、骨が48個刻印されている。これだけあればきっとあの世でも困らないだろう。

そしてサイズ感も見てほしい。通常のウチカビの3分の1サイズにしたのだが、めちゃくちゃ可愛くないか(自画自賛)。

結構長い時間がかかったし、それなりに苦労もしたけれど自分なりに飼い猫の死が昇華できた気している。あとはウークイの日に息子と娘にこのウチカビを燃やしてもらって完結だ。我が愛猫は大量に魚を贈られてちょっと迷惑かもしれないが他の猫とも分け合って食べてもらいたい。いつか天国で会うときには是非とも感想を教えてくれよな。


ちゃんと燃えるかの実験。

実のところそこまで量産できるわけでもなく、まだまだ課題も多いのだけど少量ながらDEE沖縄商店でもペットのウチカビを販売します。旧盆ギリギリになってしまったけれど欲しいという方はぜひ。

 

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