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安田のウフシヌグ見学記
さて、皆様お待たせしました。簡単レポートに続く、国頭村安田集落にて行われた国指定の無形文化財にも指定されているシヌグという行事についてのレポートです(miooonがハードルを上げすぎ…!)。
行事を紹介するにあたって、そもそも「シヌグ」とは何なんでしょうか?沖縄大百科事典から引用すると
収穫がすみ、次の新しい農作に移る前におこなわれる祭り。その本質については、まだ研究の余地が残されているが、古い時代の年越しの祭とみるのが穏当であろう。
(中略)
行事内容は地域差が大きいが、めだつ共通行事がある。それはどこのシヌグでも必ず祓いの行事がみられることである。
沖縄大百科事典 1983年 沖縄タイムス社
と、記載があります。
沖縄だと旧暦の6月15日「六月ウマチー」が稲の収穫祭、旧6月25日、26日の「六月カシチー」「アミシー」が稲の収穫を感謝する日(綱ひきが行われたりする)なので、農耕暦でいうと稲の収穫も終わりちょうどキリのよい時期ということなんだと思います。そのキリのよい時期に行われる集落の祓いを伴う行事がシヌグなんですが、地域ごとにやることが違ったりするので、ざっくりそんな意味の行事だと思っておいて頂けるとよいかと思います。
ちなみにシヌグは安田が有名ですが、他にも国頭村では奥や安波、本部町や名護市、伊是名、奄美諸島でも行う場所があるようです。
安田のシヌグが行われるのは旧暦7月の最初の亥の日。今年は8月21日・22日の2日に行われました。安田のシヌグはウフ(大)シヌグとシヌグンクヮー(小)を1年交代で行うスタイルなのですが、今年はウフシヌグが行われています。
時間的な制約もあって参加できたのは1日目の昼から行われたヤマヌブイ(山登り)という行事だけなのですが、いったいどのようなことが行われたのか、今回はそちらをご紹介したいと思います。
3つの山に登るヤマヌブイ
まずはヤマヌブイ前の安田公民館の様子です。
公民館の向かいには(写真だと見えにくいですが)「豊年」と書かれた旗、そしてちょっと可愛いムカデ旗が掲げられています。ムカデは龍の耳に入って龍を恐れさせたという昔ばなしがあって、航海安全の意味合いを持つらしいです。
公民館の敷地にあるこの建物は神アサギ。祭祀の場として使われる建物で割と本島北部ではよく見かけます。
公民館前には藁とわら縄が用意されており、男性は腰に縄を、頭に藁でガンシナを作り草木を身につけます。そこまで人がいなかったのですが、今年は自宅で準備している人も多かったのだそうです。
僕も控えめに草木をまとっておきました。
12時を過ぎたあたりで、各々が連れ立って山に向かいます。これからメーバ、ササ、ヤマナスと呼ばれる3箇所の山に分かれて登り、再び集落に下りてきます。どの山に登るのかは門中(一族)で決まっているそうです。
そして、このヤマヌブイを行うのは男性のみ。女性は山に入る事ができません。
今回ついていったのは集落の西にあるメーバ(だと思う)。2009年に見学した時は多分ササに登っていると思います。山によっては川を越えるコースもあるらしいですが、今回は普通に道路を通って階段を上る感じでした。山の入り口でさらに大きなクロツグの葉を身につけ、手には葉っぱ付きの枝を持ち山にのぼります。
山の上でしばし待機します。待機中は記念撮影したり、行事のために安田に戻ってきた人に声をかけたり和気あいあいな雰囲気でした。
しばらくして他の山から太鼓の音が聞こえたタイミングで、山に向かって御願。それが終わると海に向かって御願を行います。この時の説明で「山の神からセジ(霊力的なもの)を受け取って神になる」というのがありました。草木をまとった人々はこの時点から神様(それか神様の使者)となっている訳ですね。
御願が終わると太鼓を叩きながら独特なかけ声「エーヘーホーイ」と唱えて、山の広場を3周ほど回ります。
動画の方が分かりやすいと思いますので、動画でもどうぞ。
さらに広場を1周回るごとに手に持った枝で地面を叩く動作が入ります。これが悪いモノを祓う所作だそうで、かけ声は「スクナーレ」と言っているらしいです。
山の広場で三周ほど回ったら、そのまま山を下りていきます。途中で一箇所祓いの所作をする場所があり、その後は安田の集落へと向かっていきます。
行きは道路を通って山に至ったのですが、下山後は結構な道を通って集落方面に。
人々が合流して大きな渦に
一方こちらは集落にある橋。ヤマヌブイから下りてきた神様を女性達が待っています。
このあたりで他の山から下りてきた人々とも合流。
集まった女性を囲んで回りながら、バシバシと枝で祓いを行っていきます。
その後は神アサギ、公園と同じように祓いを行いながら一行は浜の方に移動していきます。
3つの山から合流すると結構な人数で渋滞気味。
浜にやってきました。ちなみに山同様、浜も女性が入る事ができないのだそうです。
浜に下りた一行はまず山に向かって御願を行い、次に海に向かって御願をします。
そこで身にまとっていた草木を一箇所にまとめて(昔は海に流していたそう)、海の水で身を清めてヤマヌブイはおしまいです。
脈々と受け継がれてきたシヌグ
ヤマヌブイの後は神アサギの屋根に丸太を突き刺す「ヤーハリコー」という踊りが踊られたり、ウシデークという輪踊りが行われたり(2日目もウシデークが踊られる)するのですが残念ながら全てを見学する時間が無かったので見学記は以上です。
安田のシヌグは400年の伝統があるそうで脈々と続けられてきた行事はやはり圧巻でした。シヌグについては色々な研究がなされていて、色々な説があるらしいのですがまぁ学術的なことは置いておいて一見の価値があると思います。
安田共同売店のTシャツのモチーフにもかなりシヌグが入っているのでこちらも是非注目ください。