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沖縄のお米はなぜ真空パックで売られているのか
先日読者の方よりこのようなメールを頂きました(平良さんありがとうございます!)。
自分は沖縄在住なのですが、関東に住んでいるいとこが沖縄に遊びに来たときに、スーパーに並んでいるお米を見たときに真空パックになっているのを見てびっくりしていました。
何気なく見ていた真空パックのお米が関東では見たことがないと言っていました。
いろいろネットでも調べてみたのですが、具体的な理由はわかりませんでした。
ぜひ調査していただき、理由がわかればと思っています。
言われてみたら、確かに沖縄のお米はカチカチの真空パック状態で販売されていることが多いような気がします。これって沖縄だけのことなんでしょうか?
ちょっと自信が無かったのでTwitterでも情報を募ってみたところ、ものすごい反響で多くの方からの情報が集まりました(38万インプレッションもあった)。頂いた意見をまとめると内地でも真空パックのお米は存在するが、沖縄みたいにほぼ全てが真空パックな訳では無い模様。「確かに言われたらそう!」という意見が多かったです。
そうなると次に気になるのはその理由。皆さんの推論をまとめてみると以下のように分類できました。
● 運送上のメリット説
・真空パックで固めていると船便などに積みやすい
・航空便だと気圧の関係で袋が膨らむので真空にしている
● 保存状態を良くする説
・沖縄の気候が高温多湿なのでその対策
・お米を劣化させないための工夫
● 化粧箱に入れるため
ここで出てくる「化粧箱にいれるため」というのは、沖縄の贈答品事情が関わるもので沖縄だとお中元やお歳暮に化粧箱に入れたお米を送ることが結構あったりします。化粧箱にお米を入れやすいように真空パックでカチカチにしているということですね。
化粧箱説については琉球新報の副読誌である「週間レキオ」でもインタビューを交えて紹介されています(お米のギフト、沖縄だけ!? - 週刊レキオ ~LEQUIO WORLD~)。
そう考えると「化粧箱説」がかなり有力になりますが、まだまだ釈然としない点も残ります。理由が化粧箱に入れるためだけであれば、お中元やお歳暮の時期のみ真空パックにすれば良いわけで、それだけが理由ではなさそうですよね。
というわけで、本日は「沖縄のお米はなぜ真空パックで売られているのか」その謎に迫りたいと思います。
輸送上のメリットはそこまでない
今回謎を明らかにすべくお伺いしたのは沖縄食糧株式会社。沖縄県民誰もが歌えるウェイクアップなCMソングのあの会社です。創立は1950(昭和25)年で琉球政府すらない時代。米軍政府の食糧配給機構が民営移管される形で設立されたという経緯を持ちます。
お話を聞いたのは営業部企画課の川満元暉さん(左)と営業本部長の田幸正邦さん。ちなみにTwitterでめちゃめちゃ反響があったこともご存じでした。
― 本日はよろしくお願いします…!沖縄のお米が真空パックなことについていくつか推論を持ってきたのですが、ズバリ正しいのはどれでしょうか?
そうですね。航空便の説だけが間違いで他は全部それなりに合っていると思います。
ただ、もともとどういった経緯で真空パックが始まったのかについては答えられないですね。僕が入社した20年前に聞いても明確に答えられる人は居なかったです。お米を化粧箱に入れるギフトの販売は1982(昭和57)年に始まったことははっきりとしているのですが、昭和50年代初めくらいにはお米を真空パックにする技術を開発しているはずなんです。
当時のメンバーは会社には残っていませんし、「聞いた話だけど」みたいな理由はいろいろ残っているのですが定かではありません。
― 運送上のメリット説の航空便説は間違い…「船便に積みやすい」はどうでしょうか?
結果的にはそのメリットもあるだろうとは思いますが、そこまでの理由にはなりませんね。
商品自体は内地から大きな袋に入った玄米を仕入れて、それを精米して小分けに販売している形なので、そもそもそこまで大きな移動があるわけではないですね。
宮古・八重山など離島には船便で運ばれていますが県外はほとんど出ていないのでかなり限定的なメリットになるかとは思います。
― 「保存状態を良くする」についてはどうでしょうか
これはそうですね。真空パックにすることよって保存状態は良くなります。私たちは買ったお米はなるべく早めに食べきりましょうというのを発信していますが、お米も生鮮食品なので、時間が経つとどんどん劣化していくからですね。
沖縄の高温多湿な気候はやはりお米にとってはよくありませんので、品質を保つためという理由は大きいです。
あとはお米を濡れたまま保存するとカビの原因にもなります。真空パックにすることで、物流や自宅に持ち帰るまでに雨なんかで水濡れしにくいというのもありますね。
― 余談ですが頂いた意見の中に「台湾も真空パックでお米が販売されている」というのがありました。
他国の事情はよくわからないですが、これも気候が影響しているのかもしれませんね。外国だとマレーシアも価格帯が高いお米は真空パックで販売されているようでした。
真空パックと化粧箱
― 続いての真空パックの理由「化粧箱にいれやすくするため」はどうでしょうか?
これは理由のひとつですね。しかし、ギフトが始まりで真空パックになった訳ではなく、真空パックの技術が確立された後にギフトの提案があって化粧箱に入れるようになったのだと思います。
また、ギフトのお米は沢山もらって長い間仏壇につみあげられているじゃないですか、その状態で品質を維持するためというのも大きいと思います。
― お米のギフトが始まったのが1982(昭和57)年ということですが、どういった経緯で始まったのでしょうか?
それまでは沖縄では政府米しか販売できなかったんですよ。それがこの時期に法律の改正があってコシヒカリやササニシキみたいな自主流通米を販売できるようになったためですね。
― お中元、お歳暮でお米をギフトとして贈るのは沖縄だけの風習のようですが、売り上げは変わりますか?
そうですね。この時期にあわせて社員総出で箱詰め作業をやっているんですが、箱詰めした商品からどんどん出て行く感じでいつもの1.5倍くらいの売り上げになりますね。逆にお盆と正月が終わった9月と1月は皆さんご家庭にお米がある状態になるので1ヶ月くらいはあまり動きがなくなる感じです。
― お米のギフトは5kgが一般的なのでしょうか?
今はそうですね。3kgもありますし、今はほとんどないですが2kgのものも今もあります。2kgは企業の方がゴルフコンペや株主総会で配られたりしていますね。昔は香典返しでも2kgの化粧箱でお米が贈られることもありましたが、今はお米のギフトといいえば5kgみたいなイメージが定着していますね。
沖縄のお米事情
― そういえば、そもそもなのですがお米の「真空パック」ってどうやっているんですか?
もともとはお米の袋に炭酸ガスを入れると、お米のタンパク質が炭酸ガスを吸い込んで真空状態になるという「冬眠包装」という技術が使われていました。今も冬眠包装を行っている商品もありますが、単純にお米の袋に針を刺して空気を抜いて真空状態にする方法も取られていますね。
― Twitterでは沖縄のお米のラインナップについて「20kgとか30kgの米が売られていない」という意見もありました。
多分色々理由があると思うんですが、ひとつは沖縄特有の事情が関係しているんじゃないかと思いますね。県外だと昔はお米屋さんしかお米を扱うことができない制度があったんです。一方で戦後沖縄では米軍の指示のもと昔から小さな商店などでもお米を取り扱えるような制度が定められていました。
歩いていける商店でいつでもお米が買えるので、大量にまとめ買いするような風習がもともとなかったんじゃないかというのがありますね。あとは先にも出ていたとおり、高温多湿な沖縄だとお米にカビが生えたりみたいなことがありますので少量を短いスパンで使い切る、みたいなことが実践されていたのではないかと。
実は30年前くらいに10kgの商品を一度出しているんですよ。でも結局売れずに一度なくなってしまいました。今また10kgの商品を出していますが、ギフト同様5kgが主流ですね。
― なるほど色々興味深いです!本日はありがとうございました!
沖縄のお米はなぜ真空パックで売られているのか
以上、インタビューでした。伺ったお話をまとめると
・ただし、詳しい経緯は分かっていない
・真空パックが確立されてから、お米のギフトが始まっている
・お米が真空パックで販売されている理由は「お米の品質を保つ」「ギフトの化粧箱いに入れやすくする」のどちらもあてはまる
という感じでしょうか。結局のところ、何があってお米の真空パックが始まったかは明らかにできませんでしたが、取材のあと田幸さんからお電話を頂いて「OBの方からも聞き取りをしています」とのこと。ひょっとしたらそのあたりがいずれ明らかになるかもしれません。
その際はまた記事にてご紹介したいと思います。続報をご期待ください!