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消滅の危機から見事復活!ウメーシの製造現場を見学してきた
沖縄の食堂や沖縄そば屋などでお馴染みの、赤と黄色の色鮮やかなお箸「ウメーシ」。一時は消滅の危機に瀕したものの、沖縄県内で製造が継続されることになり県産品として復活。製造を行っている那覇市内の就労支援センターを見学させていただいた。
沖縄の食堂でおなじみの赤と黄色の竹塗箸
沖縄の食堂などでよく見かける赤と黄色に塗り分けられた竹製の色鮮やかなお箸。
商品名としては「竹塗箸」ですが「ウメーシ」や「赤黄箸」とも呼ばれ、沖縄県民から長年に渡り親しまれ愛されてきた日用品です。
※正確にはお箸全般をうちなーぐちで「ウメーシ」といいます
そのウメーシ(※以下、便宜上「ウメーシ」と表記)が今から4年前の2019年、県外にある製造工場の廃業を理由に製造がストップしもう無くなってしまうかもしれない...というニュースが駆け巡ったことを覚えていらっしゃるでしょうか。
あたりまえのように使っていたあのウメーシがなくなってしまうなんて...と驚くとともにショックを受けた方も多かったと思いますが、その後、製造元と長年取引のあった那覇市壺屋に事務所を構える卸売業「カネナガ商事」の代表・田川さんが立役者となり、那覇市内にある就労支援センターに製造方法が継承され見事復活を遂げたのです。
今回ご縁をいただき、なんとその製造現場を特別に見学させていただけることとなりました。
ウメーシ消滅の危機と復活までの経緯
こちらがウメーシの製造を行っている那覇市繁多川にある就労支援センター「心輪(しんわ)」さん。
手前のスペースで行っているのはおせんべいの梱包で、奥のスペースがウメーシの塗装作業。 他にも何種類かある作業のうちのひとつがこのウメーシ作りなのだそうです。
左がカネナガ商事の田川さん、右が就労支援センター心輪の里さんです。
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こんにちは。今日はよろしくお願いします!
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よろしくお願いします。実はDEEokinawaは以前から読ませてもらっていたのでとても嬉しいです!
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早速ですが、こちらでウメーシを作ることになった経緯を伺えますでしょうか?
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はい。私が壺屋で日用品雑貨製造卸業を営んでおりまして、この赤黄のウメーシも取り扱いがあったんですね。 九州の鹿児島県にある「中西竹材工業」さんから卸してもらっていたんですが、そこが2019年に廃業することになり、ウメーシの製造がストップしてしまったんです。
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あのニュースは衝撃でした。
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そうですよね。実は福井県にも赤黄箸を製造して沖縄県に卸しているメーカーがあるんですが、入荷コストなどの面で同じ価格帯では販売できなかったんです。そこで、じゃあ自分たちで継承しよう!と。鹿児島まで行って製造方法などを教えてもらってきました。
スーパーで見かけたウメーシ2種類はどちらも福井県で製造しているものでした
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行動力!
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ひととおり製造方法などを学んで沖縄に帰ってきたんですが、もちろんひとりで出来ることではありません。そこで以前から、私の事務所の近所で野菜販売などをされていてお付き合いのあった心輪さんにお声がけして、一緒にやることになったんです。心輪のスタッフの方々の仕事に取り組む真面目な姿勢が以前から素晴らしいなと思っていて、きっといいものができると思ったんです。
鹿児島県のメーカーで製造方法を直伝してもらったものの、ある程度機械も導入されていたので全く同じ工程というわけにはいかず、ああでもないこうでもないと試作に試作を重ねていったそう。なかなかうまくいかない時期は、食堂などでこの箸を見ると気持ち悪くなってしまう日々が続いたと田川さんは笑います。
また口に入れるものなので塗料にもこだわり、食品衛生法に適合した自然由来のものを探して取り寄せ、出来上がった製品を東京の食品安全研究センターに送りチェックを行うなどとにかく安全性を徹底したそうです。
そうして出来上がったのが「元祖 沖縄県産 赤黄うめーし」。
価格は1膳660円(税込み)、10膳入りで5,500円(税込み)。
令和2年5月20日。那覇市制100周年という節目の日に発売された、正真正銘の「県産品」です!
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これまで何気なく使っていたウメーシですが、今度から見る目が変わりそうです。
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パッケージに「元祖」とあるんですが、実はこの赤黄のウメーシは大正から昭和初期にかけて沖縄県内で製造・使用されていたという記述があるものの、どこが最初に製造を始めたのかや赤黄に塗り分けられた意味などの具体的な資料が残されていないんです。そこで那覇市の特産品として今後なにかの資料になればと、私の手元にある関係資料一式やウメーシの現物を先日那覇市歴史博物館に寄贈したところなんです。
現在、準備が進められており9月頃には展示される予定とのこと。その際にはDEEokinawaでも続報をお知らせできればと思いますので楽しみにお待ち下さい。
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せっかくなので、よかったら体験していってください!
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え!いいんですか!
というわけで田川さんと里さんに習って、お箸に塗料を塗る体験をさせていただきました。
ウメーシ作りは暑さと湿気との闘い
ざっくりとした作業の流れは以下のとおり。
・まず素地となる竹箸を検品(曲がっているものや節の色が濃すぎるもの等をはじく)
・黄色い塗料を刷毛で塗る → 乾燥
・赤い塗料に漬ける → 乾燥
・赤い塗料を刷毛でなじませる → 乾燥
・検品(塗りムラなどがあれば削って塗り直し)
・保護用のクリア塗料を黄色い部分に塗る → 乾燥
・保護用のクリア塗料を赤い部分に塗る → 乾燥
・クリア塗料を黄色い部分に塗る(二度目) → 乾燥
・クリア塗料を赤い部分に塗る(二度目) → 乾燥
・最終検品、パッケージ
箸1本に対し塗料を7回も重ね塗りし、その都度しっかり乾燥させる必要があるため1本の箸が完成までには1週間以上かかるそう。
「とても地道で細かい作業ですが、みなさんコツコツと丁寧に取り組んでいただけるので本当にありがたいです」と田川さんはおっしゃっていました。
クーラーを入れているものの換気のため窓も開けており、マスク&手袋&帽子という姿で作業にあたるため梅雨〜夏の時期は暑さと湿気との闘いに。手袋の中が汗でびちゃびちゃになるので、汗が垂れないよう手首にティッシュを詰めて(!)作業にあたることもあるのだとか...。たしかに私もほんの少しの時間でしたが手袋の中がしっとりしていました。なかなか過酷!
耐久性を高めるため箸先までしっかり塗料を塗り重ねていきます。集中しないと塗料が色んなところに飛び散りそうで緊張しました。丁寧に、慎重に。
赤と黄色の境目が波打ったように少し斜めになっているのが心輪さんで製造しているウメーシの特徴。手作業ならではの温もりを感じるこだわりのポイントです。
工程を見てもお分かりの通り、ひとつひとつ手作業で丁寧に仕上げているため1ヶ月で出荷できるのは800〜1,000膳ほど。
県内外からまとめて注文したいという連絡も来るそうですが、現在はおおよそ半年待ちの状況。しかし、利用者さんたちの作業スピードも上がり少しずつストックもできるようになってきているのだとか。
完成品を手にとって見ると、指にしっくりと馴染む絶妙な細さと長さ。
塗料をしっかり塗り重ねているため、日常使いしてもほぼ色落ちすることなくかなり長持ちするそうです。
鮮やかな色あいが食卓に映え、より美味しく、楽しく料理を食べることができますね。
県産品として生まれ変わったウメーシを、これからもずっと
一時は消滅の危機に瀕したものの、田川さんをはじめ関わった方々の情熱と努力によって県産品として見事復活を遂げたウメーシ。
今まで「あたりまえ」にあると思っていたものが、時代の流れとともにいつのまにか「あたりまえ」じゃなくなってしまうこと。
古き良きものをしっかりと後世に伝えていくことの大事さを、今回のウメーシ復活ストーリーを通じて改めて感じました。
田川さん、里さん、心輪の皆さん、貴重なお話と体験をありがとうございました!
現在沖縄県内では下記のショップで「元祖 沖縄県産 赤黄うめーし」を購入することができるそうです。
・てんぶす那覇1F「ショップなは」
・第一牧志公設市場内の一部ショップ
・カネナガ商事(沖縄県那覇市壺屋1丁目8−2)
また、ビームスジャパンなど県外でも取り扱いの他、那覇市のふるさと納税の返礼品としてもセレクトされていますのでぜひチェックしてみてくださいね。