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100年の時を超え復活!!幻の酒「イムゲー」を堪能しよう
琉球王国時代から庶民が愛した酒、現代に復活
昨年の秋、沖縄の歴史・文化、ネタ好きにはビッグなニュースが世に放たれました。
それは、100年以上前に途絶えてしまった、庶民が自家製で造っていた芋酒が現代の技術で復活した、というもの。
琉球王国時代、泡盛は主に首里の一部でのみ造られることが認められていたこと、大変高価であったこともあり、酒が飲みたくてたまらない庶民が身近に手に入りやすい芋やサトウキビを使って造っていたお酒が芋酒でした。
しかし酒税法の制定等で自家造酒は禁止となり、そのうち製造は完全に途絶えてしまったのです。
そして昨年10月、時を超え復活した芋酒は「イムゲー」と命名され、産業まつりと離島フェアで限定販売!!
昨年は石垣島の請福酒造のみが販売していましたが、今年は更に2つの酒造所が販売を開始し、沖縄タイムスビルで一夜限りの試飲イベントを開催することに。
その名も「IMUGE.BAR」。
今回はこのイベントで3酒造所のイムゲーを味わってみることにしました。
いざ、一夜限りのイムゲーイベントへ!
やってきました沖縄タイムスビル
今回のイベントである「IMUGE.BAR」は、沖縄のオフィス街久茂地に堂々12時からオープン。
写真は夕方4時頃のものなのですが、屋外席には人の姿はほとんど見られません。
さて、仕事終わりのリーマンたちは一体どれだけここに駆けつけるのか・・・楽しみです。
会場である沖縄タイムスビル1階エントランスには、結構な人がごった返しています。
みな仕事を終えたリーマンなのかと思いきや、
今回イムゲーを出品している石垣島の請福酒造、宮古島の多良川酒造、久米島の久米仙、3酒造所の代表からのお披露目セレモニーが開催されたのでした。高そうなかりゆし着た人が多いと思ったら、なるほど概ね関係者。
マスコミ向けの取材タイムが始まったので、とりあえず中に入って話聞き始めたんですけど・・・
いや、これでは内容が新聞と同じ内容になってしまう!ここはDEEが目指すべき場所ではないだろ!!
そう気が付き一時撤収することに。まずは直接イムゲーを見てこよう!
各社が開発したイムゲー、ここに
さて、試飲販売ブースではオーダーに応え、次々にイムゲーがお客さんの手元に渡っています。
かつてない未知のお酒に、受け取ったお客さんもなんだか嬉しそう。
それではまず、各社のイムゲーをボトルから見ていきましょう。
こちらは久米島の久米仙。
ラベルは紫と金の2色刷で少し高級感を演出しており、四隅には「沖縄芋酒」と絶賛芋PR。なんというか、高級感と庶民感のバランスとってる感じですね。
イムゲーの材料は紅芋、黒糖、米ということで、
ラベルには芋の葉、稲穂、キビの芯?が装飾にあしらわれているようです。芋本体じゃなくて葉っぱってのがポイント。
アルコール度数は25度と、一般的な焼酎とほぼ同等。
こちらは多良川酒造。
ボトルの形がちょっとウィスキーっぽい。
色は黒がベースに金、紫。絵柄も稲穂とキビと、芋は・・・よく見たら紫の円、紅芋の輪切りだ!!
そしてアルコール度数は37度。試飲はロックの予定なんですが・・大丈夫かな。
そして請福酒造。
ラベルは銀地に文字が紫、原料の絵柄をデザインにあしらうこともなく、男前に『芋』と白地の文字が。他とはちょっとテイストが異なる感じでしょうか。
こちらの度数は25度。
こうして並べて見てみると、「IMUGE.」の文字は共通ですがあとは自由ですね。
文字や輪切りで「芋」をPRしている点も共通ですが、一緒に見に来た知人いわく「泡盛じゃない、イムゲーだと主張してる割には多良川と久米仙はデザインが泡盛引きずってる(笑)」とやや厳しめの感想が漏れてました。
・・・まぁほら、どこも泡盛メーカーなんだからそうもなりますよね。。
飲む前にもう一度会場の様子を見てみよう
さて、このタイムスエントランスは地域や離島のPRイベントがよく開催されているんですが、今回のようにお酒に関するイベントも行われています。
最近であれば、「ザ・プレミアム・モルツ・フェスティバル」、「泡盛カクテルナイト」が開催されたのでいずれも足を運んだんですけども・・・
混雑
外も大賑わい
テーブル代わりに使われる門札
それゴミ箱ーーー!!
・・・こんなに混雑してるイベント、これまで見たことがないってくらいに混んでました。
幻の酒復活!!ってことで、お酒の好きな沖縄県民は機会を逃すかとばかりに駆けつけたんでしょうかね。
それより何より、
この圧倒的男性率!!
主催側も全く意図していなかったと思うのですが、一見すると男性率90%の男祭りですよ。。
まぁ・・・幻の酒とはいえ芋酒だし、飲み方もロック、焼酎、ソーダですから・・・
純粋に「酒が好き」という男性が集まる結果になったのかもしれませんね。
いよいよ試飲だ!
お待たせしました、ついに試飲です。
今回は最も味の分かるロックでいただきましょう。。価格は1杯200円と大変お買い得。
右から請福、多良川、久米仙。シールで酒造所が判別できるようになっています。
まずは、請福から・・・
うはっ!さすが25度、お酒強くない私には結構キますわ。
鼻孔をくすぐるのは泡盛特有の黒麹に、芋由来らしい特徴的な香り。
しかし黒糖焼酎のスッキリ感があり、かつ芯が強いというか、太い?味わい。
芋のクセは多少あるものの、黒糖がそれを緩和してるようにも感じます。結構スッキリ。
次は多良川いきますか。
うへっ、強い!!全然ゴクゴクは飲めないや。
あと、香りが全然違う!甘さが際立つ感じ?とでも言えばいいんでしょうか?ただ、口に含むと強いアルコールに香りが持っていかれるような感じがします。
ちなみに後ほどやってきた職場の上司は、「家族が食べてる乾燥レーズンみたいな香り・・」と言ってました。
れ・・レーズンて?
最後は久米仙ですね。
ふああ、久米仙は香りが強い!
華やかとでも言えばいいんでしょうか?
総評すると、以下のとおりです。
●請福:
最もクセがない。飲みやすいが泡盛に慣れたおじさま方にはちょっと物足りないかも?
●多良川:
軽くクセがある感じで泡盛好きには一番ウケそう。
ただ、ロックは辛い、炭酸割りだとより美味しく飲めそう!
●久米仙:
香りが最も特徴的で、好みが分かれそう。
関係者曰く「久米仙色まるだし〜〜w」だそうで、久米仙好きな方にはお勧めしたい。
関係者がいたので話聞いてみましょう
イベントがしに混んでいたのでイムゲー買って相席をお願いしたのですが、そのテーブルにいた方が関係者だったのでちょっとだけお話伺ってみました。
沖縄県産業振興公社の新垣順一さん。今回のイベントの仕掛人
−イムゲーの酒造所は全て離島のようですが
離島で原料を仕入れようと思ったらどうしてもハンデがあるからね。イムゲーの原料は米(麹)、黒糖、紅芋なんだけど、黒糖と芋はそれぞれ地元で採れたものを使ってるよ。イメージとしては、酒造所の前で芋とサトウキビつくって、それでイムゲー造ってる感じ(笑)
でも生産量が少なくて芋がまだ高いから・・・イムゲーの価格は720mlで各社1,800円〜2,000円だけど、正直泡盛のちょっといいやつと同じ値段だよね。それでも今はほぼ原価だよ。
−王国時代は庶民の酒のはずが、現代ではお高めという逆転現象が生じてるわけですね(笑)
今回はYoutubeでイベントの告知をやってたみたいですね
今年度は生産量あまりないので、ちょっともったいぶった戦略立ててる。より興味をそそられるようなね!
来年4月からは更に2社加わって、全国販売する予定。
その後、BS放送バカリズムの「大人のたしなみズム」で2週に渡って特集してもらうよ。あと雑誌「dancyu(ダンチュウ)」にも出ます!
さて、新垣さんの隣で寡黙にたたずんでいる方がいるのですが・・・
「パンフレットに僕出てるよ」と指をさすのは沖縄県工業技術センターの豊川哲也さん
実はこの方、この芋酒復活のきっかけになった立役者なのです!
−この芋酒復活のきっかけは豊川さんだと伺ったんですが?
5年くらい前かな。田中愛穂さんの「琉球泡盛ニ就イテ」(大正13年)を読んで、庶民が芋酒飲んでたことを知ったんだ。役人も泡盛より芋酒の方が美味しいと言っていると書いていた。
これは面白いな〜と思って、1年後に請福酒造の漢那さん(社長)に話を持っていったら、ノってきたので本格的にやることになった。そこから3年かけて実現したんだ。
−昔はこう洗練されてはなかったと思いますが(笑)スッキリ感といい香りが絶妙ですね
芋には柑橘系の香り成分の元がいっぱい入っている。泡盛の麹でこれが切れて、中から柑橘系の香りが出てくるんだ。出来たてはなんとミカンみたいな匂いがするんだよ!蒸留していくことで今の状態になってる。
香りは泡盛米麹由来のバニラと同じ成分、芋由来の柑橘系や花の成分、黒糖由来のキレ、といった感じ。
久米仙は芋の華やかな香りが強いですね。
・・牧さん、後ろ見てみてください。
振り返った先にいたのは、先程までメディアに囲まれていた請福酒造の社長、漢那憲隆さん。
せっかくなので、あまり一般メディアには載らなさそうなお話を伺ってみましょう。
−イムゲーを造る、その意義についてお聞かせください
芋は同じ耕作面積あたり、サトウキビと比べて3倍収入が違うんですよ!
キビは補助金込でもトン当たりの売上が2万円程度。離島の普通の規模(3ha)の農家で売上が100万円行くかな〜なんです。しかも収入になるのは17万円/haだから50万くらい?
−すっくなーーー!!だから補助金を入れざるをえないわけですか・・・
離島のような田舎で、生きていける収入のある産業を作らないと人口を維持できないじゃないですか。だから観光もいいけど、農業も絶対に必要なんですよね。
南大東島の製糖工場の文字が怖いと思ったけど、つまりはそういうことなんですね・・
芋は1haで20トンとれる。150円/キロだから、単純に3haで300万円。
キビはこれまで100%製糖工場が買ってくれたから安定してたけど、芋は買ってくれるところがなかった。イムゲーを造ることで需要が生まれ、それが農家さんの所得の向上にもつながるんですよ!
それに、作物の病気が畑に受け継がれるのと、土地が痩せるのを防ぐためにキビと芋の輪作を勧めています。
キビだってちゃんと肥料を入れてあげれば収入も2〜3割アップする。
沖縄の農業は闇が深いけれど、僕は、農家がしっかりやれば沖縄の農業は変わりきれると実感している。
−深い・・・・深いぞイムゲー!ただの芋の酒ではなかったんですね
沖縄の農業を変え、人をつないでいく可能性を秘めたイムゲー
漢那さんとお話が終わる頃、テーブルがなくて相席に入ってきた出張リーマンズを呼び込み、仲良く乾杯。
普段は芋焼酎を飲んでいるという福岡から来ていた方も、「これは美味しい!」と太鼓判を押していました。
これからイムゲーを造る酒造所が増え、芋を作る農家が増え・・・そして沖縄の新たな地酒「イムゲー」を手に、人と人がまたどこかでつながっていくのかもしれない。
そんなことを考えたイムゲーイベントでした。
今後もイムゲーを見守っていきたいと思います!