2019.06.12

ありがとうさようなら那覇市第一牧志公設市場〜中編

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2019年6月16日(日)に営業を終了し7月1日からにぎわい広場に設営された仮設店舗に移転が決定した那覇市第一牧志公設市場。中編では仮設市場のことや、建て替え後のことを伺いました。

公設市場前編のおさらい

沖縄観光におけるド定番スポットでもあり、年末や旧盆には地元のお客さんでも賑わうという観光客にも地元の人にも愛されてきた「那覇市第一牧志公設市場」。

ありがとうさようなら那覇市第一牧志公設市場〜前編〜では市場が開かれた歴史や全国的にも珍しいその特長について那覇市第一牧志公設市場組合の組合長である粟国智光さんにお話を伺いました。


この風景は建物が建てられた1972年から変わらない


鮮魚、精肉、食料品とブロックが分かれているのは戦前にあった市場からのなごり

中編では7月1日に移転オープンする仮設市場のことや、3年後に完成する新市場について伺いました。

 

そもそもなぜ建て替えに?


前編に引き続き組合長の粟国智光さんにお話を伺っています

- これまで移転案なども出ていましたが、現在の場所に公設市場を建て替えることに決まった経緯を教えてください

平成19年ぐらいから建物の建て替えをしないといけないという意見がでてきました。
その後、にぎわい広場に公設市場移転案が大きく出されて、公設市場内だけでなく周辺も含めて大騒動になってしまったんです。
このときに、現市場での建て替え、にぎわい広場への移転、そして第3案として市場組合が出したのがリノベーション案。
レトロ、昭和感というのが全国的に人気があるので、公設市場もこの建物のまま維持して長寿命化の案を出したのです。
しかし今後の50年後、100年後を見据えて、結果的にはこの場所での建て替え案になりました。

今はここで立て替えすることが最良だと思っています。

 

残るもの、変わるもの

- 建て替えによって雰囲気はガラリと変わってしまうのでしょうか?

いままでの来街者、地元の人や観光客の人から見れば、建物が良くて公設市場に来るというよりは"マチグヮーらしさ"、相対売りや空間の良さだろうと言うこと。なので「今ある"市場らしさ"を残す」というのがベースの考え方です。


売手と買手が話合いで取引するの相対売り

今の公設市場を踏襲する。
基本的には現在の建物と同じものを作るという考えです。外周もそのまま、1Fも同じようなフラット空間、もしかしたら柱をなくすので、もっとオープンな空間になると思います。そして、いまと同じく、肉屋さん、魚屋さんと専門店によってブロックを分けます。

- 新しくつけ加わるものはありますか?

新市場のコンセプトは沖縄の食です。

3階は現在は業者用の倉庫や加工場ですが、調理室や多目的室になる予定です。1階で肉や魚を買って、3階で料理研究家など講師のもとで沖縄料理を調理体験できる。昔は家に調理方法を知っている人がいましたが、核家族になって調理方法を聞く機会がない。
市場なら肉の部位の使い方、魚の調理法を相対売りなので、肉屋さん魚屋さんなど専門家に聞くことができます。そこに加えて、調理室があれば沖縄の食文化に興味がある人も増えるのではないかと思っています。

単なる建物の建て替えではなく、沖縄の食文化を再構築する意味もあります。


公設市場3階が日本遺産に認定された「琉球料理」を学べる場になりそうです

 

市場の周りは?

- 建て替えによってなくなるお店はありますか?

やはりあります。後継の問題もありますし、このタイミングで終わりにしようというお店があるのは聞きます。
また市場周辺店舗で閉店するお店もあります。
そう考えると、ただ市場を建て替えるというより、町としての分岐点なのだと思います。
マチグヮー全体の移り変わり、そして新たなスタートなのかなと。


市場周辺には閉店するお店も

- 市場だけでなく周辺の環境もかわるということでしょうか?

公設市場の周囲3面のアーケードは建て替え時にいったん撤去します。
建て替えの間は仮囲い、そのあとは水上店舗側は再整備をしようという動きも出てきています。
公設市場と商店街、そしてアーケードは一体のもの。またアーケードがどうなるかは未定ですが、もしアーケードが再生できれば今の時代にアーケードが再生できるという事例は全国的にはないので、とても有意義なものになると思います。


再整備に向けた動きがニュースになっていましたね

- 市場らしさがなくなるのではないかと言われていますが、そうではないのですね

再整備をきっかけにして、ハード面、ソフト面から再構築していこうという考え方だと信じています。
いまのマチグヮーらしさを踏襲しながら、新たな魅力を加えて、市場を再構築する
大切なのは「市場は戻ってくる」ということ。
那覇の中心地に市場があるということが大切なんじゃないかと思う。
普通は移転の方がリスクはないです。でも同じ場所で建て替えをするということ。それだけ土地の魅力がある場所なので、 市場の建て替えで、街がアジクーターになればいいと思います。

 

仮設市場の3年間は建て替えまでの我慢の時間ではなくチャンスの時間

- 仮設市場のことはどう捉えていますか?

仮設市場の三年間は失敗してもいいし、成功してもいいし、いろいろな挑戦ができると思っています。仮設市場で仕掛けをして、いいものを新市場に残す。沖縄の食をもとにしたオリジナルの商品や、世界各国の料理が味わえるお店ができてもいいと思います。


仮設市場は7/1(月)オープン

またこのエリアは一人暮らしの老人が多いんです。でも高齢者の居場所がないのが問題です。
もともと公設市場は地元の人が多い市場でした。現在は外国人観光客が多いですが、最終的にはまた地元の人が定着しないといけないと思っています。地元密着型の市場作りをすることが3年間の課題です。

 

次の世代にバトンタッチ

- 今後の那覇市第一牧志公設市場はどうなっていきますか?

公設市場ができて、今年で42年。
最初に市場に訪れていたのは「県民の台所」とも呼ばれたように地元の人。そのあとに観光客、そしていまは外国からの観光客です。
公設市場の歩みをみれば、戦後の沖縄の歴史をみることができます。ある意味で象徴的な建物です。

いまの沖縄の魅力や市場の魅力、市場で働いている人の魅力、またこれから市場で何かやろうとする若い人の発想力などを鑑みると、沖縄の那覇のマチグヮーが世界に誇れるような一大マーケットになるかもしれません。
そう考えると悲観的な要素はない。面白くなるんじゃないかと思っています。

3年後が楽しみになってきました

というわけで那覇市第一牧志公設市場組合の組合長である粟国智光さんに公設市場の過去現在そして未来のお話を前編・中編の2回にわけて伺いましたがいかがだったでしょうか。
のうれん市場に続いて、那覇の代表的な市場がなくなってしまうことに寂しさを感じていましたが、粟国さんもおっしゃるように50年後、100年後を見据えたらどこかで新たなスタートを切る必要があります。再出発を成功させるべく、公設市場の関係者の方々はいろいろ計画を練られています。その歴史的な瞬間に立ち会えていることってとっても価値があることなのかもしれません。

ただ新しく建て替えするのではない、リノベーション案も考えた市場の人たちが現市場を踏襲して建て替えする新市場。どんな顔でこの場所に帰ってくるのでしょうか。3年後がめちゃくちゃ楽しみになってきました。

仮設市場も出来る限り現市場のままの配置だそうなので、雰囲気がどこまで一緒なのか、そして市場の人たちの挑戦を見に行きたいと思っています。

さて、前編・中編とお送りしてきて、最後の後編は6月7日(金)~9日(日)開催された公設市場のせんべろイベントに潜入したレポートです。お楽しみに!

 

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