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つぶれそうでつぶれない国頭村の伊部売店
ピンポンを押して待つ
国頭村の東海岸側安田地区にある「伊部売店」。
住所は字安田ですが、安田の集落から2キロほど離れている人口10人ほどの小さな集落の小さなお店です。しかし地域に根ざしたお店で県外からも視察が来るとかなんとか。
いったいどんなお店かとずっと気になっていたのですが、先日近くを通ったので、行ってみることに。
こちがら伊部売店。目の前に自動販売機があり、中にアイスクリームケースが見えます。
ここを目指して来たのでお店だとわかりましたが、何も知らずに通ったら、看板も出ていないのでお店と気付かずに通り過ぎてしまいそうな佇まいです。
「こんにちはー!」と入ってみるもののだれもいません。
木でできたカウンターの後ろの棚にはきれいに商品が陳列されています。
そういえばお店に入る扉の横に呼び鈴がありました。
押してみます...。ドキドキ
するとすぐにお店の隣の家から、「あらあら」とかわいいおばあちゃんが出てきてくれました。
こちらが店主のスミ子おばあちゃん。
初めてお店を訪れたわたしたちに「いいよ、中に入って見ればいいさ」と、カウンターの中に入って商品を見るように促してくれました。
商品を見つつ、お店のことを聞いてみることに。
日の出から日の入りまでいつも開いている売店
- お店に来たら呼び鈴を押したらいいのですよね?
そうだよ。いつもおばあちゃんはお家にいますよ。だからあのブザーがありますよ。あれを押したらそのときに出てくるから。
- お店は何時からやってるんですか?
夏場は6時半からやってますよ。5時に起きてね。閉めるのは日が落ちたらね。
自分たちの急用ができたら閉まる。お正月もお盆も開いている。
休みっていうのは用事ができたとき。行かなければいけない用事の時は閉まる。
- おひとりでやってるんですか?
次女が仕事が休みのときは交代。
そのときはおばあちゃんは畑に行きますよ。野菜づくりね。自分たちが食べる分だけ。
今年はじめて風邪引いたね。次女が仕事場から持って帰ってきてしまって。
娘がいるときは仕入れもさせますけどね。娘がいないときはぜんぶ自分がやりますよ。多く仕入れているのは名護の崎浜商店さん、氷は国頭冷凍さん、お菓子は宮城製菓さん、たばこも辺土名の崎浜さん。
- お店の商品がみんなきれいですね
近くの人たちが買いに来てくれるからね。買う商品がだいたいわかっているから。
とっても売れるっていう商品はないですけどね。みんなボツボツですよ。このお店はおばあちゃんのボケ予防かね。
ここはつぶれそうでつぶれない店ですよ。だれが見てもつぶれそうではありますよ。でもつぶれない(笑)
- おいくつなんですか?
いま83歳。若く見える?ありがとうね(笑)
夏場は賑やかですよ。近くに1ヶ月ほど子供たちが来る学校があるから、とっても賑やか。みんなとってもおりこうさんたちですよ。前を通るときはこうやって(手を振って)「おばあちゃんー!」って。挨拶やるだけでとっても嬉しい。
- お店はいつからやっているんですか?
ここはもともとは安田協同店の支店でしたよ。それで赤字で維持が難しいからという理由で、わたしたちが自宅の隣りの土地ごと買い取ったんですけどね。
呼び鈴はその後から3〜4ヵ年してからつけたんじゃないかな。便利ですよ。鳴ったらすぐ来ますから。ここはしょっちゅうお客さんがいらっしゃるわけじゃないから。家であれしたりこれしたりやって、テレビ見たり。おじいちゃんとふたり。そして呼び鈴がなったら出てくる。おじいちゃんが考えたんですよ。それまではとっても大変だった。いつも台所にいるから台所で音が鳴りますよ。
- お店をやるまでは?
山歩いたり、きび作ったり。おじいちゃんが海やったり。なんでもやりましたよ。 やらないと子供たちを教育させられないから。長女と七女は内地ですね。次女が帰ってきて、いま一緒に住んでいます。
- お子さんは何人?
女の子が7名で、一番末っ子が男の子。
双子が入っているからね。それでもこんなに育てて教育したのは、どうしてやったのかね。おばあちゃんは(笑)
今でもなにかあったらみんな来ますよ。婿さんたちもとっても気持ちがいいから。長男が男ひとりでも心強いはずよ。長男の子供が一番小さくて次に高校生になる。孫たちは大きな病気とかはなくてみんな健康だった。おじいちゃんとおばあちゃんはそれが嬉しい。それが幸せさね。
この冷蔵庫は長男が買ってきたんです。でもあんまり電気が食うもんだから、棚にした。返すのも大変だから。こっちの小さいので十分。ここでは。本当は使える冷蔵庫なんですけどね。
だー。あんたたちなんかコーヒー飲んで。おばあちゃんが買ってあげる!
- いやいやいやいや!
なんで。おばあちゃんがあげるのに。こんな楽しいおしゃべりさせてもらって。
- いやいやいやいや!
おもしろかったね。また来てね。
- ありがとうございました。また来ます!
すごいぞ伊部売店
ということで伊部売店でした。
いやもうですね。当たり前のようにある伊部売店ですが、このお店って奇跡のようなお店ではないでしょうか。
集落の人からしたら、歩いていけるところに売店があるだけでも本当にありがたいと思うのです。しかもほぼ年中無休で夜明けから日の入りまで開けてくれている。
大変なこともたくさんあるはずなのに、地域や誰かのためと言わずに自分のボケ予防でやっているというスミ子おばあちゃん!いつもお店にいなくても大丈夫なように、呼び鈴をつけてくれたおじいちゃん!お店が無人のままでも問題ない治安!小ロットでも届けてくれる卸屋さん!
「だれが見たってつぶれそうなお店。でもつぶれない」とスミ子おばあちゃんは笑っていましたが、おばあちゃんをはじめたくさんの人がつぶれないようにしているんだと思いました。
大型店舗が増える中、都心部のマチヤグヮーはどんどんなくなりますが、伊部売店のようなお店が当たり前にあるような、そんな世の中だったらすごく良いのだろうなと、大きなことを思いつつ本日は終わります。