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泡盛を匂いだけで古酒にする
泡盛本が発売されました
さて、冒頭からPRなのですが、DEEokinawaでライターをしている泡盛ライターのkudakaさんが編集長を務めた「泡盛マイスターの編集長と酒好きにすすめたい泡盛の香り」という書籍が発売されました。先週くらいから県内では各書店で並んでいるようです。
泡盛初心者にも泡盛の魅力を伝えるようなしっかりとまとまった本なのですが、なんと我々DEEokinawa編集部も原稿を書いています。
といわけで本のPRも兼ねて、書籍でやった実験をこちらの記事でもご紹介したい所存です。
泡盛の新酒をハックして古酒にする試み
泡盛の魅力といえば、いろいろあるけどやっぱり長い年月をかけてじっくりと熟成させた古酒にあるんじゃないかと思います。僕はたいしてお酒の味が分かる方ではない(ビールと発泡酒の違いもおぼつかない)ですが、泡盛の新酒と古酒の違いはわかります。
そして、新酒の時のアルコール臭さというか、とげとげしさみたいなものがぐっと丸くなった古酒はやっぱり僕でもうまいと思うのです。
さて、古酒についてですが最後の琉球王の四男だった尚順男爵という人が以下のように記しています。
元来、古酒には色々のよい香りがでるものだが、標準の香気はまず三種しかない。第一は白梅香かざで鹿児島より這入ってきた小さいびん付け油の匂いだ。第二はトーフナビーかざと行って、熟れた頬付の匂いを言うたものだが、第三が少しおかしいが、これはウーヒージャーかざと称し、雄山羊の匂いのこと。
(『松山王子尚順遺稿』山里永吉 尚順遺稿刊行会 1969)
古酒の匂いは鬢付け油、熟れたほおづき、雄の山羊の匂いの三種類…全然ピンとこないですよね。
でもちょっと待ってください。ひょっとしたらですよ?泡盛の新酒に上記の香りをつけることで古酒になるんじゃないでしょうか。
古酒の匂い6選
さて、今回用意した匂いの紹介の前に2017年に琉球大学、沖縄工業高等専門学校、沖縄県工業技術センター、沖縄国税事務所の職員を中心メンバーとして作られたという「泡盛フレーバーホイール」というものを紹介させてください。
これまで泡盛の香りや味の表現は色々な人がぞれぞれ工夫をして表現してきたのですが、それを整理したものが泡盛フレーバーホイールです。これによって「この泡盛はここらへんの匂い・味わい」みたいな表現が可能になり初心者でも分かりやすくなりました。
こちらで定義されている「古酒香」をご覧下さい。
尚順男爵が記していた鬢付け油、熟れたほおづき、雄の山羊の匂いの他に「石鹸」「カラメル」「バニラ」という3つの香りが入れられています。
というわけでもう一度用意したものを確認していきましょう。
左上から舞踊で使うワックス、バニラエッセンス、カラメルシロップ、石鹸、左下から山羊汁、食用ほおづきです。
これらを新酒の泡盛に混ぜ(あるいは匂いを嗅いで)その変化を確かめてみます。ではレッツトライ!
バニラエッセンス
まずはバニラエッセンス。泡盛にバニラ?とちょっと思う訳なのですが、泡盛から漂う甘い香りは「バニリン」という成分らしく、これが古酒の中にあったりするのだそうです。
つまり新酒の泡盛にバニラエッセンスを加えれば…古酒に…!
……!
どうせ、大した結果にならないだろうな、と思っていたのですが新酒に数滴バニラエッセンスを垂らしただけで、劇的な変化が。これは…古酒の匂い!
まぁ味は普通に新酒でしたが、初回でまさかの成功です。他の素材にも期待が膨らみます。
カラメルシロップ
ではカラメルシロップはどうでしょうか。ちなみに古酒からただようカラメルの匂いはソトロンという成分が由来しているらしいです。
なんか全体的にぼんやりした匂いになりました。
なんだろう。分量的な問題か、あるいはちょっとお金をケチってホットケーキにかける安いカラメルシロップを買ってきたのでそれが良くなかったのかもしれません。
味もほんのり甘くなって、なんだか微妙に。
石鹸
続いては石鹸。泡盛に石鹸で意味がよく分かりません。一応無香料のものを選んできました。
さすがに泡盛に混ぜるわけにはいかないので、片鼻で石鹸の匂いを嗅ぎながら片鼻で泡盛の匂いを嗅ぎたいと思います。
信じられないことが起きました。
原理は分かりませんが、ある一定の距離に石鹸と泡盛が来ると完璧に古酒の匂いがします。状況が状況だけに脳がバグってるのかと思いましたが、これはすごい体験です。
トーフナビー香
続いては尚順男爵の話に出てきたトーフナビー香。熟れたほおづきの匂いです。なかなかほおづきが無くて苦労しましたが、ファーマーズマーケットで食用ほおづきが売られているのを見つけたのでこちらを使います。
そのままだと匂いがほとんどないので、絞ってみました。
なんだろう。単純に青臭くなりました。確かに青臭さは新酒のトゲトゲした感じをやや緩和してくれるのですが、そこまで臭みが消えるわけではありませんでした。たまに年配の方が泡盛にキュウリを入れて飲んでるのを見るのですが、多分これと同じような臭み消してきなものなのかなぁと思いました。
ウーヒージャー(雄ヤギ)香
次はウーヒージャー香。雄ヤギの匂いなんでヤギ小屋とかに行きたかったのですが、時間の関係で山羊汁にしました。封を開けただけで漂うヤギの香り…。
うん。山羊の匂いと新酒の匂い、どっちもするのですが両者が混ざらずどちらの匂いも割と強烈です。
泡盛に山羊汁を入れてみたけど、結果は同じ。
白梅かざ
最後は白梅かざ。「鹿児島より這入ってきた小さいびん付け油の匂い」と記されています。
琉装専門店で探してみたのですが、鬢付け油はなく髪につけるワックスみたいなものしかありませんでした。モノによってはラベンダーの香りとかがついていたりもするので、無香のものをチョイス。
箱には化粧下地と書かれていますが、鬢付けにも使えるそうです。主成分は木蝋とひまし油など。
石鹸に近い感じだったので、石鹸と同様ある距離まで鼻に近づけると完璧に古酒の匂いに。
本当にこの瞬間がちょっと笑っちゃうくらいすごいです。
泡盛の新酒は石鹸を嗅ぎながら飲むとよい
以上、検証を終えましたが新酒の泡盛を古酒の匂いに変えられたものは上記の3つ。石鹸、鬢付け油、バニラエッセンスです。これ実際に試して見ないと伝わらないと思うのですが、本当に古酒の匂いになります。是非皆さん試してみてください。
ということは普段の飲み会も、これらのグッズがあれば新酒を古酒の匂いで楽しむことができるわけです。
とはいえちょっとバニラエッセンスの持参は恥ずかしいし、鬢付け油はそうそう持っているものではありません。そう。石鹸です。石鹸ならば居酒屋のトイレにもあるんじゃないでしょうか。トイレで石鹸の匂いを嗅ぎつつ、泡盛を飲んで古酒気分…うん。完全に不審者ですね。
多分普通に古酒を頼んだ方が色々面倒臭くない気がしてきました。でもホントちょっとでいいので試してみてください。笑っちゃうくらい古酒の匂いなので。