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ジャングルカーよ、永遠なれ!
みなさんは、車の屋根に木や草花がワサワサ生えたまま走る、通称「ジャングルカー」を目撃したことはあるでしょうか。
DEEokinawaでは2014年に『車の屋根から木が生える凄すぎるエコカー』という記事で取材をさせていただきました。
その取材の際、車の持ち主である知念さんはこう言っていました。
エアコンの代わりとして車の屋根を芝生で緑化したら、いつのまにか草が根付き勝手にガジュマルやアコーまで育った。 取り外し可能なのでルーフキャリアと同じ扱いで交通違反ではない。この車で走っていたら人に笑われまくるので、「こんな車乗れない!」と急に我に返って恥ずかしくて車に乗れない日もある。
知念さんの思いつきが、とんでもないことになってしまった愛すべき車なのですが、なんと明日7月28日(土)に走り納めになります。
車の本体であるトヨタスターレットが今月末で車検切れになるのですが、年季が入っているので壊れても新しい部品が見つからず、これ以上は維持ができないので車検の更新はしないそうなのです。
ではジャングルカーは廃車になってしまうのでしょうか、それとも?
本日は、先週行われた「さよならジャングルカー。ラストラン一週間前・みんなで乗ろう!笑われよう!」イベントの模様とともに、ジャングルカーのいく末をお届けしたいと思います。
みんなで乗ろう!笑われよう!
車検切れになる1週間前の日曜日、知念さんの呼びかけでジャングルカーに乗ってみる会が開かれました。
その名も「さよならジャングルカー。ラストラン一週間前・みんなで乗ろう!笑われよう!」
知念さんに鍵を借りてジャングルカーを運転しているという企画です。
最後に車に乗って笑われる感覚をぜひ味わって!という感じでしょうか。
わたしは以前の取材時に助手席に乗せてもらったことがあるので、今回は夫と息子を送り込みました。
夫たちがどんな顔をして帰って来るかはあとに置いておいて、ドライブしている間にこれまでのジャングルカーについて知念さんに改めて伺いました。
ジャングルカーの軌跡
ジャングルカーがはじまったのは2008年。最初は知人から譲り受けた車のクーラーが壊れていたので、少しでも涼しくなればと屋根を芝生で緑化する計画でした(そのアイデアもすごいけど)。
ここからはインタビュー形式でお届けします。
2015年からのこと
- 2014年までは前の取材の際に伺ったので、2015年の日本一周について聞きたいのですが、反応はどうでしたか?
やっぱりね。沖縄の人はもう見慣れているじゃない。笑われるのも、指を指されることも少なくなってきていたんだけど、日本一周は久しぶりの感覚だった。みんなこの車を見ると目が点になってね。約1ヶ月かけて鹿児島から秋田まで周って地域行事や学校に訪問して。この車のおかげで、たくさんの子供の笑顔や良い出会いがあったのでとても良かったですよ。
- 2016年の車検は受けないかもっておっしゃってましたが、車検は受けて代わりにガジュマルの根をおろす作戦を開始したんですか?
日本一周の前に、いろいろ修繕したのでもう一回車検は通すことにしたんだよ。でも、2年後はもう無理だろうと。
廃車にするよりは、せっかく育ったジャングルをどうにか残したくて。この車のままでどこかに寄贈できないかと考えた。 僕は水を3時間か4時間に1回はかけているんだけど、それを譲渡先の人にお願いはできないな、と。大変でしょう。 だから水やりをしなくてもガジュマルが生きていけるように、根っこを下に伸ばそうと思って。濡れたタオルで誘導したらちゃんと下に伸びたんだよ。
- 2017年はとうとう屋根に穴が空いちゃったんですね
雨の日に仕事に行くために車に乗ろうとしたら、運転席の足元が浸水してたんだよ。慌ててちりとりで水をすくって出して。今の車じゃ電気系統がダメになるだろうけど、昔の車だからね。ちゃんと動いた。でも違う日に会社から帰ろうと思ったらその日も浸水してて。ちりとりを探しても見つからなくて。しょうがないから、その日は浸水しながら爪先立ちで運転して帰ったよ。
- 危ないですよ!(笑)
今はちゃんと穴を塞いだから大丈夫!
これからの譲渡先は?
- そしてもうすぐ車検切れになりますね。譲渡先は見つかったんでしょうか?
7月初旬に琉球新報と沖縄タイムスの両紙に記事を出してもらった。
「ジャングルカーもらいませんか? 知念さん、引き取り手募集(琉球新報)」。
そうしたら3箇所からぜひ欲しいという問い合わせが来て。これから直接行って場所を見て、譲渡希望の方と話してこようと思っている。
- おおお。じゃあ廃車にはならず、これからもどこかでジャングルカーは生き続けられそうですね!
そうだね!
- でももう車検切れまではラスト1週間ですね。いまの心境は?
やっぱり寂しさがある。ジャングルカーはいろんな花が咲いて四季の移り変わりがわかったから。
これからはただの鉄の塊に乗るんだなーと思うとね。情緒がないよね。
- たしかに味気ないなぁと思いましたが、普通の車はそうですからね。
物足りなさを感じるかもしれないね。
- じゃあ、また二代目ジャングルカーなんてことも?
いや、それはない。人に笑われるのはもう終わり!
試乗組が帰って来ました
そんな話をしていたらなんだかんだと時間が経ち、夫たちが乗ったジャングルカーが帰って来ました。
夫とS夫妻によると、マクドナルドでドライブスルーをして、国際通りを走りたかったけれど歩行者天国「トランジットモール」で行けず残念だったと。
でも車で走っているだけで注目を浴びたり、手を振られたり、声をかけられたり、コミュニケーションが生まれる車は大変楽しく、癖になりそう!とのことでした。
「人に見られたい欲求が出てくる。でも、今日はお祭りなテンションだったからで、日常で乗る勇気はない」という言葉には、知念さんも静かに頷いていました。本当に癖になったら妻としては賛成できないので良かったです。
ジャングルカーは古宇利島で生きていく
と、ここまでが先週の話。試乗イベントが終わってから知念さんは譲渡先希望の3箇所を周ったそうです。
そして譲渡先が決まりました!
ジャングルカーは今帰仁村にある「古宇利島」にあるハートロック近くの駐車場に譲渡することが決まったそうです。
以下は知念さんのコメントです。
駐車料金が一日停めて100円というとんでもないところです。
その駐車場には柵や、ゲートなどは一切ありません。料金を徴収する人もいません。アイスクリームや軽食などの売店があるのですがそこの壁に料金箱が設置されていてそこに入れる形式で、そこで何かを購入された方は無料で、さらに自販機でドリンクを購入された方も駐車料金は無料なんです。
浦崎さんという方がオーナーさんです。地元の地主さんなんですがとても大らかな人物でした。
貸しビーチサンダルが置かれていて、幾らかな?とみると無料でした。
蛇足ですがシャワーは200円でした。でも、そのすぐそばに水道があって長いホースが付いていたのでそこで洗う人もいるでしょうね(笑)
その駐車場を見渡せる一段高い場所に浦崎さんは植物を植えるスペースを作っておられて、そこに木を植えたいと考えていて「二本の木が一体になった木を探していたんです。ハートロックを見に来られた皆さんが幸せな気持ちになってくれたら良いなと。でも、なかなかそういう木は見つからなくて」
この後に彼は僕たちの心を鷲掴みにする一言を発したのです。
「ジャングルカーを愛の象徴にしたいんです」と。
風貌からはとてもそんな言葉を言いそうな方ではありません(失礼!)
息子さんが近くでペンションをやっていて、駐車場の売店等も親族で切り盛りされていました。
彼がジャングルカーを置きたいと考えている場所の少し上からは、遠く海に浮かぶ伊平屋・伊是名島が見えます。ここでジャングルカーが、ガジュとマルゥが大きく育っていく様子が僕たちには見えました。
パブリックスペースではありませんが、ここが落ち着く運命だったような気がしていますし、これからジャングルカーがここをパブリックスペースにしていくのかも知れません。
次の土曜日28日の午後3時頃にジャングルカーを譲渡してきます。
ジャングルカーが知念さんの家を出発するのは明日。古宇利島までのドライブが、本当に本当のラストランになります。
「見れば幸せになれる」という都市伝説もあったジャングルカー。これまでたくさんの幸せをもらって来たので、もし最後のドライブを見かけたら「いままでいっぱい笑顔をありがとう!」とたくさん、たくさん、手を振りたいです。