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めくるめくウチナー菓子の世界!マルキヨ製菓に潜入取材
いざ、マルキヨ製菓へ!
去る2月のコネタ大賞に輝いた記事、『マルキヨ製菓のクッキーはたぶんクッキーじゃない』を覚えていらっしゃるでしょうか。たしかにクッキーではあるのだけど、ただ単にクッキーという商品名で呼んでしまうには違和感のある、いかにも沖縄らしいお菓子をご紹介したのですが、なんとこの記事を目にしたマルキヨ製菓の担当者の方からわざわざお礼のメッセージをいただいてしまったのです。
2月のコネタ大賞にマルキヨ製菓のクッキーを取り上げていただくなど、いつかお礼を言わねばと思いつつ、シーミーの忙しさに流され、お礼を差し上げるのが遅れてしまいました。改めて、こちらの商品を取り上げていただき、ありがとうございます。
クッキーに限らず『THEかるかん』『THEレモンケーキ』『THEマドレーヌ』など、これまでウチナー菓子の紹介記事では必ずといっていいほど登場してきたマルキヨ製菓のお菓子たち。その都度しっかりチェックしてくださっていたのだそうで、なんともありがたい限り。
こちらもこちらで、商品情報などを調べる際にマルキヨ製菓のウェブサイトをチェックしていたのですが、こう言っては失礼かもしれませんがただのお菓子屋さんとは思えないコンテンツの量と情報の厚みに驚いた記憶があります。特にこちらの『お菓子な琉球話』というスタッフブログ。自社製品の紹介はもちろんのこと、美味しく食べるためのひと工夫、旧暦/新暦で行われる沖縄の行事、はたまた人物伝まで、多岐にわたるジャンルの話をこれまたなかなかの頻度で更新されているのです。
うっかり私たちも登場
そこで、この絶好の機会を逃してなるものかと「ぜひ工場見学をさせてください!」とお願いしたところ、快くOKをいただきその日を迎えることとなりました。
マルキヨ製菓は昭和39年に那覇市で創業開始。二度の移転を経て、現在は浦添市牧港の牧港ドライビングスクールのすぐ近くに工場兼事務所の立派な建物を構えておられます。2018年現在、創業54年の老舗菓子店です。
建物2階にある事務所で今回お話を伺ったのは、仲宗根テル子さん(左)と川満弘子さん(右)。お二人は実の姉妹なのですが、それとい うのも現社長である友利正雄さんを長男とする友利8兄弟(!)のうちの5人が現在中心となって経営を支えているのだそう。いわば「友利ファイブ」。なんだろう、そんじょそこらの戦隊ヒーローより強そう。
マルキヨ製菓はもともと、叔父にあたる清太郎さんが農連市場に出していたもち屋を、弟の正吉さんが引き継ぐ形で創業。清太郎さんの「清」と、正吉さんの妻「キヨ」さんの名前が共通していたため、そのまま「丸清」をカタカナに変えて「マルキヨ」という屋号になったのだそうです。
工場見学に先立って、まずは日頃気になっているウチナー菓子についていろいろ伺ってみたいと思います。
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僕、ずっと気になってることがあるんですけど、お供え用の「もち」ってあるじゃないですか。あれって砂糖ありと砂糖なしがあると思うんですけど、実際のところどっちが売れてるんですか?
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やっぱり砂糖なしが売れていますね。沖縄では法事などで定期的に使うので、砂糖なしのほうが売れます。ただ、砂糖なしのもちは日持ちがしない(すぐにカビが生えてしまう)んですよね。砂糖が入っているほうが保存が効くんです。でも最近だと若い人はこだわりが無くなってきていて、お供えは故人が好きだったもの、例えばよもぎ餅とかを供えるということもあるみたいですよ。
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通の人は砂糖なしのもちでその店の実力をはかる、みたいな話を聞いたことがあります!
そういえばふちゃぎも甘くなったのは最近ですよね。
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そうそう、もともとは周りの豆に少し塩味がついているだけで甘くなかったんですが、あるパン屋さんが豆のかわりに甘納豆を使って甘いふちゃぎを作ったらそれが人気になって、だんだん広まっていったと聞いています。今では紅芋だったり黒糖だったり、いろんなバリエーションが増えていますよね。
ふちゃぎー「お菓子な琉球話」より
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あの見た目だけは、沖縄生活が長くなった今も全然慣れません。
ところでマルキヨさんではすごくたくさんの種類のお菓子を作られていますが、だいたい何種類ぐらいあるんですか?
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現在製造しているのはおそらく50種類ぐらいですが、すでに販売終了になったものも含めると累計650種類ぐらいあると思います。
現在いちばん売れているのは「黒糖カステラ」という商品で、毎日1,500個製造しています。あとは「もち」各種や「レモンケーキ」もよく売れていますね。レモンケーキに関しては、護得久栄昇先生の「れもんけーき節」がヒットしてからリアルに売上が伸びてちょっと驚いています。
そして同業者から人気があって私たちもイチ押しの商品は、こちらの「紅いもしっとりまんじゅう」ですね。中に久米島産の紅芋を使った餡が入っていて、しっとりもちもちとした食感が好評です。
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あとは「アップルパイ」や「た〜む(田芋)パイ」も母の日なんかによく出る人気商品ですよ。ワンホール540円と手頃な価格なのも人気の理由だと思います。
反対にすぐ消えていった商品もあって、うっちん(ウコン)入りのサーターアンダギーや、にんじんやほうれんそうの餡が入ったまんじゅうを作ったりしましたが、あれは全く売れませんでしたね(笑)
あとあんまり数は作れないのですが、「クラムケーキ」にはコアなファンがついていたりしますよ。
クラムケーキー「お菓子な琉球話」より
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おお、これは初めて見ました。美味しそう!なんとなく、ジャーマンケーキを彷彿とさせますね。
そういえば以前、「タンナウチャヌク」をコネタで紹介させてもらいました。あれはマルキヨさんのオリジナル商品なんでしょうか?
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そうでしたね!ありがとうございます。
コンペンでできた「コンペンウチャヌク」という商品が以前から市場にあったのですが、取引先さんから 「コンペンのウチャヌクがあるから、タンナファクルーでも作ってみては?」という話があり、それから作るようになったものなんです。7~8年ぐらい前ですね。
日持ちもするし、美味しく食べられるということで人気が高まっているようで、行事のときには予想を超えて売れていますね。商標登録もしているんですよ。
タンナウチャヌクー「お菓子な琉球話」より
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あれ、ちゃんとウチジフェーシ用がついてるのもいいですよね。
ちなみに作るのが難しい商品とかってあるんでしょうか?
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「ロールケーキ」という商品があるんですが、ひとつひとつ職人が丁寧にクリームを塗って大きな生地を手で巻いて、トッピングもつけているのでとても工程が多く手間がかかっています。大きいロールのままでは買っても食べきれないという声をいただいて、ロールケーキとチョコロールが一切れずつ入ったセット商品も販売しているので、包装もまた手間がかかるんですよ。
ロールケーキー「お菓子な琉球話」より
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作るのが難しいというのではないんですが、ムーチーの時期は毎年大変です。もちをカーサで包むのは既存の機械ではできないので、ひとつひとつ手作業。またその前段階として、仕入れたカーサ(月桃の葉)を選別して、きれいに拭くという作業があるんですが、これまたすごく骨の折れる作業で...(涙)
ムーチーの時期だけ毎年臨時のアルバイトを雇わなければ間に合わないほどです。
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忙しいといえばシーミーの時期も大変。ムーチーは一極集中で終わりますが、シーミーは期間が長いし週末に集中するし、天候にも左右されてしまうのでその調整が難しいです。シーミーの時期が無事終わると毎年ほっとしています(笑)
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大量のもちを作ったのに豪雨とか、想像しただけで震えますね...!
というわけでマルキヨ製菓のお二人から、ウチナー菓子にまつわるいろいろなお話を伺うことができました。
それにしても、累計650個もの商品を開発されているとは驚き!ひとつひとつに、きっと涙なくしては語れない開発秘話があるんでしょうね...。
この取材のためにわざわざ社内アンケートをとっていただき、「自分が好きなマルキヨ製菓のお菓子ランキング」などの資料をまとめていただいたのですが、ちょっと今回は記事の長さ的に掲載できなかったので、マルキヨ製菓さんのスタッフブログにて開催中の「マルキヨ製菓お菓子総選挙」を是非ご覧ください。果たして1位センターはどのお菓子なのでしょうか!?
さて、お次は建物の1階に移動して、お待ちかねの工場見学タイムです。
ウチナー菓子の製造工場へ潜入
マスクと衛生キャップを装着していざ工場内へ。
通常工場見学は行っていないので、これは貴重な体験!
ああ、ドアを開ける前から、美味しそうな香りがぷんぷん漂っています。
工場の朝は早く、スタッフの方々はシフト制で朝7時頃から稼働しているそう。
午前中で集中的に菓子製造を行い、お昼休憩を挟んで午後は主に包装やラベル付けの作業、そして14時頃には製造を終了して片付けと清掃に入るのだそうです。
ひとつひとつ手作業の工程も多い
毎日すべての商品を作っているわけではなくローテーション制。だいたい午前中に5商品、午後に3商品の合計8商品を一日で製造しているそうです。但し、さきほどもご紹介した一番人気の「黒糖カステラ」だけは毎日作っているそうです。
超売れっ子の黒糖カステラ
決して広大な工場というわけではありませんが、製造スタッフがそれぞれの持ち場できびきびと手際よく働いている様子に思わず見とれてしまいます。あと右を見ても左を見てもできたてほやほやの美味しそうなお菓子に囲まれて、思わず手が伸びそうになります。
お盆になると食べたくなるレモンケーキの焼き型は各メーカーから専門の業者への特注品だそう。だからこそ各メーカーでかたちが様々なのですね。マルキヨのレモンケーキは昔ながらの銀色のパッケージが目印です。
あ、あれは!
そう、作るのに手間がかかるとおっしゃっていたロールケーキの1つ、チョコロールです。
近くで見ていると、流れるようなヘラさばきで丁寧かつスピーディーにクリームを塗り、トッピングをつけ、次々に出来上がっていくではありませんか。これが熟練のなせる技か...!
小さくて丸いものが整列していると、どうしてこんなにかわいく感じるのでしょうね。
大きな蒸し器からチラ見えしている売れっ子
ちなみに工場では、直接お菓子を買うこともできるそう。
タイミングが良ければ、できたてほやほやのお菓子を購入することができるかもしれません。
ファンキーなおばあが描かれたオリジナルビニール袋に入れてもらえます。
美味しい笑顔のために、そして沖縄の伝統行事のために
というわけで浦添市牧港にあるマルキヨ製菓さんから、インタビューと工場見学の様子をお届けいたしました。
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本日はごちそうさ...じゃなかった、ありがとうございました(試食でお菓子をたくさんいただいた)。
さいごに、マルキヨ製菓のこれからの展望をお聞かせいただけますか?
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そうですね、これからも美味しいお菓子を作り続けて、お菓子とともに皆様に笑顔を届けられるようにすることがひとつ。そして、旧暦で行われることが多い沖縄の行事を守り続けていくことがひとつ。これが私たちの使命だと思っています。
例えばさきほどのお話に出てきたムーチー作りなんかは、諸事情によりこの行事から脱退してしまう同業者も出始めているのですが、ムーチーを作る業者が減り続けてしまうと行事自体が衰退してしまう恐れがあるんです。
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沖縄は行事を大切にしている人が多いので、時代とともに行事が衰退していくようなことの無いように、美味しくて安全なお菓子を作り続けて、これからも皆様に届けていきたいです。
あとはこれからの時代、海外も見据えて、ウチナー菓子の美味しさや魅力をどんどん発信していけたらと思っています。
昨日は旧暦5月4日のユッカヌヒー(6月17日(日))。
取材時にカレンダーを拝見すると、ユッカヌヒー前の三日間はちんびんを集中的に製造するようでした。
「ユッカヌヒー」には「ちんびん」をー「お菓子な琉球話」より
沖縄の行事とともにあるお菓子。
沖縄らしさを感じるお土産としてのお菓子。
そして、ふだんのお茶の時間に楽しむ気軽なお菓子。
日々、マルキヨ製菓の職人さんによって心をこめて作られている美味しいお菓子は、どんなシーンにもやさしく寄り添ってくれます。
スーパーマーケットなどで見かけることがあれば、ぜひ、手にとってみてくださいね。
有限会社 マルキヨ製菓
〒901-2131
沖縄県浦添市牧港5-11-3
TEL 098-878-8583
ホームページ:http://www.marukiyo.jp/
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