2018.03.02

幻の琉球料理?「はんちゅみ」を食べてみたい

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「はんちゅみ」という食べ物をご存知だろうか。琉球宮廷料理のひとつらしいのだが、今ではほとんど作られておらず、もはや幻の食べ物となっている。今回、書籍の作り方を参考にして再現してみた。

「はんちゅみ」とはなんぞや

つい先日のこと、友人のSNSで「はんちゅみ」という見なれぬ文字を見かけたのです。
どうやら食べ物のことを指しているようなのですが、かれこれ沖縄に10数年間暮らし、沖縄関連の調べものをする機会は多いはずなのに、これまでついぞ目にしたことも耳にしたこともありません。沖縄歴20年になるやんばるたろうさん、そしてウチナーンチュの友人数名にも聞いてみたのですが、みんな一様に「知らない。なにそれ?」という答え。レストランなどではわざわざ提供されない家庭料理のひとつかと思いきや、ウチナーンチュでも知らない人がいるとは予想外でした。もはや幻の食べ物といえるのではないでしょうか。

ネットで調べてみると数少ない情報ながらいくつかのサイトで紹介されており、どうやら「はんちゅみ」とは沖縄の昔ながらの宮廷料理のひとつで「肉そぼろ、肉でんぶ」のような長期保存できる豚肉の加工食品のことを指すことが分かりました。
よく似ている食べ物として、中国、台湾あたりには「肉松(肉鬆)」(読み方はローソン ròu sōng)という食べ物があるようで、お粥に入れたりパンに塗ったり挟んだりして食べられているそうです。

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そんな「はんちゅみ」。どこか沖縄で食べられるところがないかと探してみたところ、那覇にある料亭『四つ竹』の琉球料理コース「いじゅ」の前菜のひとつに「はんちゅみ」があるようなのですが、お値段は8,000円...!たったひと口のはんちゅみのためだけに気軽に支払える値段ではありません。

それならば!と作り方を調べてみたのですが、主婦の味方クックパッドにはもちろんレシピ無し。

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ですよね

その後もネットでいろんな検索キーワードを駆使してコツコツと調べていくと、どうやら『大琉球料理帖』(高木凛 著)という書籍にはんちゅみの作り方が載っているらしいのです。これは貴重な文献!

幸い図書館で借りることが出来ました。この書籍は琉球王朝時代の食医学書『御膳本草』を基に、60種類の食材と70種類の料理を再現して紹介したもの。「じーまみー豆腐」や「中味汁」など現代でも馴染みのある料理から「ミヌダル」などのちょっと珍しいものまで様々な沖縄の食べ物が紹介されています。以前ご紹介した、運動場に生えているヌルヌルした苔のようなモーアーサを使ったアーサイリチーや、塩水に漬けた島豆腐を天日干しにしてギリギリ腐る手前まで発酵させたイタミルクジューも載っていました。

さて、肝心のはんちゅみのページを開いてみます。

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ありました!これが「はんちゅみ」なる食べ物だそうです。
なんとなく想像していたよりも佃煮っぽい見た目です。

しかしなんと、作り方に分量が載っていません
醤油と泡盛は何ml入れたらいいの?かつお節はどれぐらい?気長に煮るっていったい何分なの?
概要は分かったものの、まさかのざっくりレシピでした。

もうこうなったら適当にやるしかありません。
 

仕方ないのでなんとな〜くの分量で作ってみる

ネットで見かけた「肉松」のレシピでは、先に肉を柔らかく似てから細かくほぐしつつ味付けをするものなどもありましたが、今回の作り方は書籍『大琉球料理帖』に忠実にいきたいと思います。

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まずは材料を準備。豚ウデ肉(グーヤーヌジー)以外は、特別な材料は無く家庭に常備している調味料などでいけそうです。

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まずは出汁用のかつお節をなんとな〜くひとつかみ、フライパンで乾煎りします。しばらくすると辺りにかつおの香ばしいかおりが。

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乾煎りしたかつお節を鍋に移したら、なんとな〜く醤油と泡盛を1:1になるよう180mlずつ入れ、なんとな〜く砂糖を40g入れ、なんとな〜く生姜の千切りを半かけほど入れてみました。

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鍋を火にかけて煮立ったら、豚の肩肉(グーヤーヌジー)300gを一口大に切って入れます。

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書籍には落し蓋をして気長に煮る(だから何分やねん)とありましたが、時短のためここは圧力鍋で。高圧設定でなんとな〜く15分ほど加圧してみます。すべてにおいて「なんとな〜く」という枕詞を付けざるを得ないテーゲー分量ですが、果たしてどんな味に仕上がるのでしょうか。ドキドキです。

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火を止め鍋の圧が下がったら、蓋をオープン!

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小さめの角煮っぽい見た目です。
においがすでに美味しそうですが、後のお楽しみにするためここでのつまみ食いはがまん。
そういえば、鍋に残ったかつお節はどうするんだろうか......。鍋の中からかつお節がうらめしそうにこちらを見つめていますが、作り方では煮込んだ後のかつお節について触られれていないので、とりあえずお肉だけを取り出して使うことにします。ごめんよ、かつお節。

そしてここからが手間のかかる作業。

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冷めた豚肉を箸で細く裂いていきます。
豚肉はかなり柔らかくなっているので、ぐっとお箸を入れるとパラリとほぐれてくれます。とはいえ、細かく裂くにはほぐれたかけらをさらに突きまくらないといけないので、わりと手間がかかります。

箸で細く...

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箸で細く...
箸で細く...
箸で......細く......
箸で..................

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まあ途中から手でやりましたけどね。
分量の四分の一ぐらいはちゃんと箸でやったので許してください。全部やってたらたぶん腱鞘炎になってたと思うんです。というか昔の琉球の人々もきっと誰も見てないときは手で裂いてたと思うんです。きっとそうだ、きっとそうだ。

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というわけで、こちらが自己流の分量で作った「なんとな〜くはんちゅみ」のできあがりです。
書籍の見た目とはちょっと違いますが許してください。
 

またひとつ、沖縄の食を知ることが出来た

早速アツアツごはんにのせて食べてみましょう。

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...うま!

いや、そもそもはんちゅみの正解の味が分からないので「これがはんちゅみだ!」と胸を張って言えるわけではないのですが、ちゃんと美味しいです。ごはんがとまらなくなるやつ。
もともと脂身の少ない肉の部位のうえに、圧力鍋を使って泡盛で煮ているので、臭みも無くあっさりとしています。かつお節の風味もついているので、言われなければ魚のように感じられるかもしれません。

本当の「はんちゅみ」をご存知の皆さん、どうですか? 大体あってますか...?

若干の不安を残しつつも、沖縄に10数年住んではじめて「はんちゅみ」という食べ物を食べてみることに成功しました。
いやいや奥の深さよ、沖縄料理。もしかしたら、まだまだ自分の知らない沖縄料理があるのかもしれないと思うとワクワクしますね。また面白いものを見つけたらご紹介したいと思います。

そしてお料理上手な方、残った煮汁の活用法をどうか、私に伝授してください....。

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