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沖縄のヤード・ポンドを探して
日本にはまだ尺貫法が生きている
現在の日本では長さの単位はメートル、重さの単位はグラムが使われています。かつて日本では江戸時代から長さの基本単位に尺(0.30303m)、重さの単位に貫(3750g)が使われてきましたが、1959年(昭和34年)を境に土地・建物の坪という表記以外はメートルを使うことが義務づけされます。
そんなわけで現代っ子の僕は「尺」と言われても全然ピンとこないわけですが、世の中には割と尺を単位にしたものが残っているらしいのです
(ちなみにこの情報の元ネタですが、デイリーポータルZの林雄司さんが書いてるやつを読みました横断歩道の白と黒、タテ幅の長さを知っていますか?)。
例えば横断歩道。白の帯の幅と間隔は450mm。これは1間(6尺)=1800mmの4分の1に相当します。
道路の縁石は600mm間隔。これは3つで1間に相当。
他にもホームセンターで売られているブルーシートだったり、ベニヤ板は未だに尺を単位とした大きさが設定されているのだそうで、メートルが普及した現代においても未だに尺という単位は残っているわけです。
さて、沖縄を見てみましょう。沖縄あるあるですが、沖縄では牛乳などのパック飲料の内容量は946ml。半端に見えますがこれは4分の1ガロンに相当します。ガロンとはアメリカを中心として使われているヤード・ポンド法の体積の単位で、大戦後に沖縄を統治していたアメリカの影響が今でも残っているのです。
ということは沖縄には他にもまだヤード・ポンド法の名残があるのではないでしょうか。
というわけで今回は特にヤード・ポンド法の長さの単位であるインチに注目して、沖縄でインチが使われていそうな場所を探してみよう、という企画です。
沖縄のインチを探す
まずは100均で買った5Mのメジャーを片手に事務所の間近な場所で計測をしてみます。ちなみに1インチは25.4mm。メートルに直すとめちゃめちゃ半端な数字になります。
こちらの看板は450mm×600mm。これはどうも尺貫法に基づいてるっぽい。
石敢當の代表的なサイズは200mm×90mm。さらに石敢當が貼られているコンクリート板が890mm間隔。890mmといえば35インチ(889mm)に相当します。…ということはこのコンクリート板はヤード・ポンド…!となればいいのですが、たまたまインチっぽい数字なのか、ヤード・ポンドを元に作られているのかイマイチ確証がもてないのです(建築知識ゼロ)。
勢い勇んでやってみたものの、なんだかぼんやりした結果に終わりそうな予感がプンプンします。
米軍関係のものはインチなんじゃないか
これではいけない、ということでちょっと調査法を改めて明らかに米軍が関わっているものの長さを測ってみることにしました。
瀬長島
まずやってきたのは豊見城市にある瀬長島。瀬長島に行った事がある人は海に面した道路に中途半端なコンクリートの柱が建てられてるのをご存じだと思います。今ではホテルなどが建ち並ぶ観光地になっていますが、1946年(昭和21年)に米軍に接収されておりコンクリ柱は米軍接収時に作られた転落防止柵らしいです。
まぁ現在は当時のものは全部撤去されたようで、レプリカみたいなものが建ってるのですが。かつて建っていたモノを忠実に再現したものなのであればインチが使われている可能性はあります。
計測した結果は上記。インチ表記に換算してみると柱ごとの間隔2840mmが112インチ(2844.8mm)に近い気もしますが、柱の寸法はものすごく中途半端なので正直よく分かりませんでした。
普天間基地
瀬長島が不発だったので、もっと米軍っぽい所に。
宜野湾市は大山にある、友好園という場所です。ちょっとどういう経緯で作られたのか不明ですが、普天間基地の入り口付近にあるので日本とアメリカの友好的な目的で作られた公園なんじゃないかと思っています。まぁ何もないですけど。
友好園の看板の寸法は上記の通り。鳥居っぽい看板の上が40インチ(1016mm)、下の部分が36インチ(914.4mm)、緑色の看板部分が24インチ(609.6mm)に相当して、これは多分ヤード・ポンドで設定されていると思われます。
普天間基地の看板はどうでしょうか。
上部分が95インチ(2413mm)、下部分が54インチ(1371.6mm)、高さは48インチ(1219.2mm)と、これもおそらくヤード・ポンドで設定されているのではないでしょうか。
調子に乗って基地のフェンスに。フェンスの間隔は115インチ(2921mm)?
しかし、進入禁止看板はインチではない模様。またちょっとモヤモヤしてきました。
日本最古のショッピングモールはどうか
とりあえず基地関係のものはヤード・ポンドが活きているのは確認できました。でもまぁ基地関係のものがヤード・ポンドなのは当たり前といえば当たり前だと思うのです。この企画の趣旨はひっそりと残っているヤード・ポンドを探すことだと思い、最後に来たのは沖縄市にあるプラザハウス。
プラザハウスの開店は1954年7月4日のアメリカ独立記念日だそうで、米軍統治下から数えると60年以上前から営業している日本最古のショッピングセンターとされています。現在は日本人向けのお店も多く、不思議な異国情緒を感じるモールみたいになっています。
- 現在
- 1960年代の写真
新たに増築されたりはしているのですが、1階建ての部分は今も同じものが残っているように見えます。
プラザハウスの柱の間隔は2780mm。これは恐らく110インチ(2794mm)。
窓枠の890mmは多分35インチ。
どうでしょうか。恐らくプラザハウスの1階部分あたりはまだはヤード・ポンドで設計されたものがそのまま使われているのです。…と思ったんですがフロアタイルは290mmの正方形だったりとインチっぽくないので全部がヤード・ポンドな訳ではないのではっきりとは言えません。結局なんかぼんやりした結果になってしまいました。
沖縄にはまだヤード・ポンドが残っている、多分。
だんだんよく分からなくなりました。
というわけで本日は沖縄に残るヤード・ポンドの名残を探してみました。色々なものを測ってみて気づいた事ですが、メジャーを持ってひとりで色々なものの長さを測るのが意外と恥ずかしいということです。最低2人くらい居た方が絶対いいと思います。
そして、メジャーだと割と誤差もあるので「これはインチなんだろうか」という確証が全く持てないのでふんわりとした結果になりました。なんかすみません。
多分、建設や建築に関わる方はもっと沖縄のヤード・ポンドについて情報をお持ちだと思うんですよね。もしも何かご存じの方がいらっしゃったら是非とも教えて下さいませ。それでは本日は以上です。