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沖縄県立図書館は空も飛ぶ
与那共同売店で気になるものを見つけた
先日、国頭村に用事があって国頭村与那(よな)の共同売店に立ち寄ったのです。
おばあだけのクリスマスパーティーでも出てきました。
買い物をしながら雑談していると、お店の人は箱の中から本を取り出して、棚に並べはじめました。
- この棚に
- 本を並べてる
気になって話を聞いてみると、この棚は与那共同売店のプチ図書館。なんでもこの本は沖縄県立図書館の本を共同売店が一括で借りていて、与那の人は共同売店から本を借りて、共同売店に返却することができるのだそうです。
こんな箱に入って送られてくるようです
定期的に沖縄県立図書館にまとめて本を返して、また借りることでラインナップを更新しているのだそうで、集落での評判も上々。「あの本はないのか」みたいなリクエストもあるのだそうです。なかなか図書館に行けない人たちがこうやって共同売店で本を借りれるって取り組みは素敵なことだなーと思うのですが、そういったことを沖縄県立図書館でやっているというのも初耳でした。
気になって調べてみると沖縄県立図書館、色々と面白い取り組みをしているようなのです。そこで本日は沖縄県立図書館の職員の方に県民にむけて行っている色々なサービスなどについてインタビューしてみたいと思います。
沖縄県立図書館は他の図書館と何が違うのか
というわけでやってきたのは那覇市寄宮にある沖縄県立図書館。僕も普段は調べ物だったりネタ探しだったりでよく利用しています。
今回お話をおうかがいしたのは、奉仕班主査の新垣さん(写真中)、主事の仲尾さん(写真左)、主任の島尻さん(写真右)の3人。取り組みについてお話を聞く前にざっくりと沖縄県立図書館についてお話を聞いていきたいと思います。
- 本日は宜しくお願いします。
いきなりで恐縮なんですが、沖縄県立図書館の隣には那覇市立の中央図書館があるじゃないですか。そもそも市町村の図書館と県立図書館の違いってあるんでしょうか?
新垣さん:
そうですね。直接的なサービスと間接的なサービスがあるのですが、直接サービスとしては市町村の図書館よりもより高度で専門的な蔵書の取り揃えをしています。本の調査や相談に関しても他の図書館で答えられなかったものなどをこちらで答えたりしていますね。
間接的なサービスとしては各市町村の図書館の支援だったり、市町村の図書館への研修を行ったりなどをしています。図書館では他の図書館に収蔵されている本を取り寄せることができるんですが、それも一度県立図書館の巡回車が受け取ってこちらでまとめて、他の図書館に運ぶといったこともしていますね。
市町村図書館の本のやりとりをまとめる棚
- 今、沖縄県立図書館にはどれくらい本があるんでしょうか。
新垣さん:
現在で約80万冊の蔵書があります。そのうち沖縄県に関する郷土資料の割合は4割程度なのですがこれは他県の県立図書館ではない割合なんです。郷土資料の収集が強いというのは沖縄県立図書館の特長かもしれませんね。郷土資料に関しては沖縄に関するものは網羅的に集めるようにしています。書籍以外でもカレンダーやポスター、手帳なども収蔵されているんですよ。
- 特別に書庫の中も見せて頂いた。棚に並ぶ「八重山手帳」
- 一見関係なさそうな「小学六年生」とかもよく見ると沖縄特集が組まれていたりする
JTAの機内誌「コーラルウェイ」の創刊号。
仲尾さん:
ちなみに図書館の閲覧スペースに並んでいる本は約80万冊中の20万冊程度です。残りの書籍については表に出ていないのでカウンターなどで閲覧申請をする必要があります。
- いつも気になっていたんですが図書館ってどんどん新刊が増えていくわけじゃないですか。
仲尾さん:
はい。データを見てみると年間で図書の購入が2360冊、寄贈が8736冊なので毎週約600冊くらい増えている計算になりますね。
- 本棚はいっぱいにならないんですか?
仲尾さん:
年に1回、棚に入りきらなくなってきたら一部を地下の書庫におろしていますね。旅行ガイドだったりと情報が最新でないと意味がないものだったり、あまり借りられていない本を選んでいます。
- 1年間で全く借りられていない本というのもあるんですか?
仲尾さん:
実は結構ありますね。ジャンルとしては一般書というよりは研究者向けの専門書が多いです。
新垣さん:
そういう本こそ収集すべきでして、1年間誰も借りないような専門書は10年後には販売されずに、流通していない可能性があるからです。まぁ今は誰も借りないので痛し痒しなんですが、そこは県立図書館の責任で収集を行ってます。
どこでもプチ図書館「一括貸し出し」
- そうそう。うかがいたいことがあったんですが、国頭村与那の共同売店で図書スペースを見たんです。
新垣さん:
はい。あれは県立図書館が1987年から行っている「一括貸し出し」というサービスですね。かいつまんで説明すると、「沢山の本」を「団体」に「長期間」貸し出すサービスになっています。
- どんな団体が利用しているのでしょうか?
新垣さん:
共同売店で言えば、国頭村の奥共同売店でも利用してもらっていますね。他には小学校の図書室、少年院や児童相談所などでも利用がありますね。
- 具体的にはどのくらいの本を、どのくらいの期間借りられるのでしょうか?
新垣さん:
最大400冊まで、団体への貸し出し期間は本島の市町村は6ヶ月以内、離島の場合は1年以内の貸し出し期間になっています。
- 400冊のラインナップは自由に選べるんでしょうか?
一括貸し出し用の本は沖縄県立図書館の蔵書と別に用意されている。
新垣さん:
はい。1冊ずつ選ぶことも可能ですし、あらかじめこちらで各テーマごとに選書した30から50冊のセットを用意しております。そのセットを組み合わせて借りて頂くことも可能です。
- こちらがセットの箱
- 一括貸し出しリスト
新垣さん:
貸し出し冊数が最大400冊なので、例えば300冊借りて、途中で50冊返して新たに50冊借りてみたいな形で本を入れ替えていってというような使い方ができます。基本は沖縄県立図書館に来館して頂いて貸し出しと返却が行えますが、離島・国頭地区の場合は郵送でやりとりが可能です。
このサービスは全県域でやっていますが、やはり離島で図書館がない所の利用が多いですね。県立図書館では2000年から離島や図書館の無い市町村を対象に「空飛ぶ図書館」というサービスも行っているんですよ。
- 空飛ぶ図書館?
日本一広いエリアをカバーする「空飛ぶ図書館」
- 空飛ぶ図書館とはどのようなサービスなのでしょうか?
島尻さん:
一括貸し出しは県内全域で行われているのですが、空飛ぶ図書館は図書館が無い市町村に向けての移動図書館という感じで提供しています。図書に触れ合う機会が少ない離島や国頭地域の市町村に沖縄県立図書館が直接本を持っていって一般の方に貸し出しを行うというサービスですね。
北は国頭村、東は北大東島、南は波照間島、西は与那国島ということでこれらを結んだエリアは本州の山口・金沢・東京・広島を結んだ面積とほとんど同じになります。なので「日本一広いお届けエリア」を謳っていますね。
- どのくらいの頻度で離島に来るのでしょうか?
島尻さん:
トータルで40回やっていまして、だいたい年間に2回、少なくとも1年に一回は各離島で開催される形ですね。沖縄県で図書館が無い市町村は15市町村ありまして、沖縄本島の国頭村、東村、大宜味村でも開催されています。貸し出し期間は1ヶ月で、地元の教育委員会などにとりまとめて返却してもらっています。
- 空飛ぶ図書館の様子(沖縄県立図書館より)
- 空飛ぶ図書館の様子(沖縄県立図書館より)
- 1回でどのくらいの本を持っていくものなんでしょうか?
持っていく本のリストを検討中
島尻さん:
持っていく本は多いところで2000冊、だいたい平均したら7-800冊ですね。開催場所の人口にあわせます。持っていく本は事前にリクエストを受け付けたり、前回行ったときに、このジャンルの本が借りられていたのでこのジャンルを多めにしようとか、クリスマスやハロウィンなどの時季にあわせて選んだりもしています。
仲尾さん:
以前に結構凝ったレシピが載っている料理本を持っていったことがあったんですが、「こんな材料、島にはないよ!」って言われてしまって。離島に住んでいないと分からないこともあるので教わりながらラインナップを決めていますね。
島尻さん:
会場では図書の貸し出しだけじゃなくて、しおり作りや消しゴムスタンプ作りなどのコーナーを作ったり、読み聞かせを行ったりもしています。
- 「すべての島んちゅに本との出会いを」ってコンセプトも格好いいですね!
沖縄県立図書館のこれから
- 本日は色々とお話ありがとうございました!最後に今度の取り組みについておうかがいしたいのですが。
新垣さん:
本の一括貸し出しですが、今度は学童や児童センターなんかにももっと本を借りてもらって「子供たちの居場所作り」に力を入れていきたいですね。来館することが困難な方への支援ももっと充実させる予定です。
島尻さん:
空飛ぶ図書館では、現在も外部から読み聞かせの講師の方や落語家の方に一緒に来てもらったりと、本だけでなく色々な情報に触れることができるイベントにしたい、というのがあるのですが今度空飛ぶ図書館のとりくみがJTAの機内誌のコーラルウェイに載るんです。その繋がりで向こうのイベントと移動図書館をくっつけて何かできないかみたいな試みも考えています。離島の方が図書だけでなく色々な情報にふれあえる機会が作れれば、と思っています。
仲尾さん:
あとは遅まきながら最近沖縄県立図書館でTwitterをはじめました(笑)。県立図書館ってなんだか固いイメージを持たれがちですが、そのイメージを変えたいと思っています。「図書館を使わないともったいない!」と県民に思ってもらえるように頑張りたいと思います。
以上、与那の共同売店で図書スペースから始まり、沖縄県立図書館の取り組みについてのインタビューをお届けしましたが、いかがだったでしょうか。他にも沖縄県立図書館の本の相談(リファレンス)の内容がホームページから見られるのですが「沖縄の「亀を食べない門中」について書かれた民話を知りたい。」とかかなりマニアックな事例だったり、めちゃめちゃディープな郷土資料だったりとご紹介したいことは色々あるのですがまた改めてご紹介できればと思います。
市町村の図書館しか行ったことがない、という方も是非沖縄県立図書館にも足を運んでみてください。面白いものが沢山ありますよ!