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パラソル通り、おばあちゃんの丹前屋
パラソル通りの丹前屋
那覇の牧志公設市場近く、市場通りと平和通りの間ぐらいに《パラソル通り》と呼ばれる小さな通りがあります。
その名の通りカラフルなパラソルの下にベンチとテーブルが設置されており、市場で働く人や観光客のゆくい処(休憩所)となっています。取材に訪れたこの日は雨でしたが、アーケードが続く商店街にあって、ここはぽっかりと青空が見られる気持ちのいい場所でもあります。
おばーに人気のエステ店や、日本一短い商店街の八軒通りもこのすぐ近く。
ディープな雰囲気が感じられて、ぶらぶら歩きがとても楽しいエリア。
そんなパラソル通りの一画に冬の間だけ、おばあちゃんがひとりで営む丹前屋さんがオープンするという話を一昨年ぐらいにテレビカメラマンの友人から聞いていて、これは是非訪れてみなくてはと思っていたのでした。
《丹前(たんぜん)》とは厚く綿を入れた防寒用の室内上着のことで、いわゆる《どてら》と同じものだそうです。
おばあちゃんの丹前屋は、以前やんばるたろう氏が訪れた◯玉判断のお隣。
わずか畳一帖半ほどの小さな小さなお店で、ちょこんと座って作業しているかわいらしいおばあちゃんが店主の宮城さんです。
ひとつひとつ、丁寧に手作りされた丹前たち
壁や天井から吊るされたカラフルな丹前はひとつひとつ宮城さんの手作り。
こちらは子ども用の丹前
お店を開けているのは毎年12月〜3月までの冬の間だけですが、冬に間に合うよう毎年夏頃から作業を始めているのだそう。
「この布はね、大反(おおたん)から裁断するから大変。夏から作っておかないと間に合わないんですよ。
7月頃から綿を入れてね。綿を入れたらまたしばらく置かないといけないし。
とっても時間がかかるんですよ。」
ぽつぽつと静かに語る宮城さんは現在86歳。
昔から裁縫の仕事をしており、以前は織物などもやっていたそうです。
「結婚して子ども出来たら、昔は保育園も無いでしょ。内職しないとね。
子ども見ながら縫い物をしていましたよ。
復帰前は生地が無くて大変でした。
復帰してからは内地から生地を取り寄せて作れるようになりましたけどね。
昔はよく売れましたね〜。何名にも縫わせて。
ほんとは丹前もいろんな種類があるんですよ。袖なしとか。
でも手が間に合わなくてね。もう縫う人がいないの。みんな年取って。
内地の卸なんかも大量に作らないととってくれないでしょ。だから作らなくなって。
若い人がやらないもんね。あんまり儲けがないから跡継ぎもいない。」
現在のパラソル通りは昔は丹前通りだったそうで、何軒もの丹前屋が軒を連ねていたそうです。
それが今では宮城さんの店が一軒残るのみ。
左側の綿が入っていない青いものは着物を着たとき用のエプロン。
たくさん売れて、もう残りこの2枚だけになってしまったそう。
「この綿入りのほうは台湾にたくさん出るんですよ。
商売人がまとめて買っていって向こうで売るみたい。何十枚もね、もう縫うのが間に合わないぐらい。
最近は暖かいからあんまり来ないけど、前は毎週たくさん持っていっていたよ。」
残念ながら、今年3月で閉店予定
そんな貴重な宮城さんのお店ですが、なんと今年の3月で閉めてしまう予定なのだそうです。
「もう歳だからね、この3月で終わり。自分ひとりで縫うから身体がもたなくて。
年寄りがいつまでも仕事してーって、家族からも怒られるさ(笑)」
とっても残念ではありますが、これまで長く働いてきた宮城さん。
酷使してきた右手を休め、ゆっくりのんびり過ごしてほしいです。
そんな宮城さんの丹前を、いつも布団を蹴飛ばしてしまう二歳半の息子用に買って帰りました。
背景ゴチャついていてすみません
身長94cmぐらいの息子が着ると、足元まですっぽりと覆ってくれるちょうどいいサイズ。
もっと大きくなったら腰のところで結んでいる紐を正面で結ぶようにすれば、上着として長く着られそうです。大切にしますね!
パラソル通りに一軒だけ残る貴重な丹前屋さんに出会えるのはおそらく今年まで。
是非近くを訪れた際は、のぞいてみてくださいね。
宮城さんの丹前屋は朝10時〜夕方4時頃までの営業。日曜日はお休みです。
昼食時間など休憩中でいないこともあるのでご注意を。