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冬季限定で開店する港町のいか屋
そこはまるで ”つげ義春” の世界
那覇市港町の那覇市沿岸漁港内に、毎年10月頃〜翌年4月頃までの冬季限定で開店する店があるのです。
その名も、いか屋。
どうでしょう、この佇まい。
プレハブ小屋にコンテナをくっつけたような簡素な建物。つげ義春的な雰囲気にぐっときます。(分かる人だけ分かればいい)
10時頃に訪ねたのですが、扉が閉まっていてノックすれども音沙汰無し。
「いか屋オープン」とでかでかと書かれているのに、まさか休みとか。
- ふくしまクンセイという店名?
- 燻製用の薪でしょうか
すぐ裏にある漁港を眺めながら十数分粘ってみたものの、開店する気配が無いので時間をおいて出直すことに。
いか屋、再び
そして午後。再び漁港へと戻ると、
開いてた!!!
「ごめんくださー・・・」
キッチン?
寝床?
入口付近に冷蔵ケースがひとつあるものの、そこにはこぢんまりとした生活感のある空間が広がっていました。そしてやはり人の気配は無し。
またもや漁船などを眺めつつ待つこと十数分・・・。
いか屋の前に白いワゴン車が停まり、おじさんが店に入っていきました。主、キタ!!!
「イカ買いに来たの?はいはい、どうぞ。」
危うく会いたくて会いたくて震えるところでした(締め切り的な意味で)。
聞けばおじさんは現役のウミンチュ。昼間はこうしていか屋をやりつつ夜は漁船で釣りに出かけるそうで、さっきまで釣りの準備をしていたとのこと。
「おじさんひとりでやっているからさー。いないときもあるわけよー。」
こちらがお目当てのセーイカ(ソデイカ)の燻製。一味マヨネーズがついて1パック500円です。
燻製の香りはそれほど強くなくほんのり香る程度ですが、とても柔らかくて噛めば噛むほどイカのうまみが染み出してきます。さけるチーズみたいに割きながら食べていると、もうひとつ、またひとつ・・・と止まらなくなるので危険。一味マヨがこれまたピリ辛でくせになる味なのです。
こちらは油味噌。同じく1パック500円。
こちらはイモ。・・・イモ?
ここで作ってるんですか?と尋ねると、コンテナがくっついている部分が加工場になっているそうで扉を開けて見せてくれました。
狭くとも機能的な加工場
写真右手に写っている四角い機械が燻製器。左奥の袋に入っているオレンジ色っぽいのがセーイカです。
網の上にセーイカを並べ、下で薪を燃やしてさっと燻製にするのだそう。塊のまま燻製にしたものを割いてパック詰めにしているわけですね。
「だーだー、油味噌も味してごらん」
油味噌といえば味噌を豚脂(ラード)で炒めたものが一般的ですが、この油味噌はイカやマグロの身がごろごろと入っていてひと味違います。ワタも入っているのかほんのりとした苦味もあって、間違いなくお酒が捗るやつです。日持ちするそうなので、思わず油味噌も1パック購入してしまいました。
以前はナマコも入れていたそうですが、最近は沖縄で採れるナマコは全部中国に輸出してしまうので残ってないのだそう。
「だーだー、お芋もあげようね」
さつまいもを素揚げしたもの。これは売り物ではなくおじさんのおやつのおすそ分けです。
営業は3月か4月まで
冬の間だけ営業する理由を尋ねると、夏場は漁が忙しくなるからだそうで、天候次第では3月20日頃に閉めるかもしれないし4月までやるかもしれず、まだ分からないとのこと。
閉めている間はこの看板が表に出ている
なんだかんだとおしゃべりしているうちに三線を取り出すおじさん。
驚くことに、その腕前はプロ級!
プ、プロですか?と聞くと「いやいや」と笑っていましたが、二見情話や十九の春など朗々と5〜6曲を歌いあげてくれました。少し鼻にかかったような声がまた味を出しているのです。
いかを買いに来ただけなのに、思いがけずのんびりとしたいい時間を過ごさせてもらいました。
基本的にお休みは無く朝から夕方まで開けているそうですが、今回のようにいないときもあるので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。私も冬の間にまた買いに来ようと思います。