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【大人の社会見学】沖縄本島唯一の鰹節工場(前編)
みなさんは沖縄にかつお節工場があるのをご存知でしょうか?
宮古島に行ったことのある方はお土産で伊良部島産のなまり節が売られているのを見たことがあるかもしれませんね。では沖縄本島ではどうでしょうか?
実は、沖縄本島にも一つだけかつお節工場があるのです。
場所はカツオで有名な本部町。
今回は、そんな貴重なかつお節工場に社会見学に行ってきました。
長いので前編後編でお届けします。
本部町はカツオの町
昔からカツオの町として発展してきた本部町。
漁港に隣接した本部町営市場ではいたるところでカツオがお出迎えしてくれます。
市場にあるカツオベンチ
マンホールの絵柄にももちろんカツオ
毎年5月には鯉のぼりならぬカツオのぼりが空を舞う
生のカツオは良く見る
さて、そんな本部町とカツオ。かつお節工場があるとは聞くものの、よくよく考えると本部町産のかつお節というのを目にした覚えがありません。
鮮魚店にはかつおのたたき
カツオのお刺身はたくさん売っている
食堂にはカツオ入荷しましたの看板
カツオ定食
おやおや?本部産のかつお節はどこで手に入るのでしょうか?
社会見学前編では、まずは本部漁業協同組合の仲宗根哲也さんにお話を伺いたいと思います。
本部漁業協同組合でお話を伺いました
- 本部町は本島唯一のかつお節工場があると聞いたんですが
はい、漁業組合が工場を持っています。工場は昭和53年頃に建設されました。
漁港の奥に加工場が。中のようすは後編のお楽しみに
宮古島や伊良部島、石垣島ではまだありますが、本島ではここだけですね。もともとかつお節工場は町内に何軒かあったんですが。
- 工場は年中稼働しているんでしょうか?
期間が決まっていて、毎年10月から2月までの半年ほどです。でも半年間ずっと毎日稼働しているわけではないんです。
2016年は10月6日がかつお節加工場の初稼働日だった
- 昔からかつお節工場は半年だけ稼働というスケジュールなんですか?
昔は1年中やっていたと聞いています。
ただ今は漁獲量も減ってしまったので、今は半年で1年分を製造します。
- こちらではどれぐらいのかつお節を生産しているんですか?
かつお節になるのは9トンぐらいになります。
原料は40トン前後ですが、内臓を捨てたり乾燥していくうちにそのぐらいになります。
製品になるころには、ほとんど残らないですね。
- カツオは本部で獲れたものなんでしょうか?
今は本部で獲ったカツオをかつお節にまわすには足りなくて、買い付けている状態なんです。
平成24年からは鹿児島産のカツオを使っています。
かつお節になるカツオは約3〜4キロのサイズです。本部で鮮魚として出回っているのはもっと小さくて2〜3キロサイズです。
かつお節の原料になる鹿児島産のカツオ
平成22年に最後の大型カツオ船がなくなって、それで一気に漁獲量が減ったんです。
大型船があるときは年間200〜300トンあったんですが、いまは良くて100あるかないか、ですね。
1人か2人で操業する小型船、5トン未満の船がほとんどです。その船で大漁といったら1回の水揚で1トンぐらいです。普通は500〜600キロですね。獲る人も減りましたが、カツオも減ってます。
漁業者で40代といったら若くて、だいたい60代。一番長い人は80歳に届きそうです。
2人でカツオ漁に行っていた漁船
夜中の1時に出発して半日で100キロほど獲れたそうです。すべて一本釣り
- かつお節工場では何名ぐらい働いているんですか?
ぜんぶで10名ぐらいですね。
基本は昔からやっている近所のおばーたちですよ。
旦那さんがうみんちゅだったり。だから昔からずっとかつお節に係わっています
長い方で40年以上の経験を持っている方もいます。
- 本部産のかつお節を見たことがないんですが、どこで買えるのでしょうか?
うーん、かつお節が出回っているのは本部町の中ぐらいですね。
そば屋を中心に飲食店や給食センター、老人介護施設とかが多いです。
出荷は基本は解体して燻(いぶ)して削って、とすべて工場で行ってから製品にして出荷してます。節の原料としてはほとんど出してないです。
たまーに、取引がある業者さんから譲ってくれないかと言われるぐらいですね。
節でどうしてもというなら売らないことはないんですが、自分で表面のタールを全部落として、中には骨も残っているので削ったりというのを個人でするのはだいぶ厳しいと思います。
でも半生状態のなまり節は製品として出していますよ。
なまり節
- かつお節と聞いて一般的に想像する、本枯節(ほんがれぶし)のかつお節は作っていないんでしょうか?
本部産のかつお節は荒節(あらぶし)というんですが、表面にタールなどがついた状態を削って出荷しているものです。
表面にタールがついた状態
荒節からタールを落として、カビつけして、さらに約3ヶ月間〜半年程寝かすと本枯節というきれいなかつお節になるんですが、そこまではやってないんです。
10数年前はやっていたこともあったんですが、需要が減ってきて今はやっていません。
- かつお節ができるまでの工程を教えていただけますか
最初に生の状態からさばいて解体します。
解体した後に2時間程お湯で煮ます。
魚の臭みやエグミを灰汁で出します。
そのあと毛抜きで骨を取ってバラします。ここからは全部手作業ですね。
そのあと燻す、つまり乾燥させるんですが、半生のなまり節にするものもあります。1日20キロぐらいですね。
乾燥させて部屋の中で10日ぐらい。ものの状態も見ながら。そして削って袋詰めして出荷。
なまり節は成形してもらって、袋詰めして終わりです。
これは言葉で説明するよりも実際見てもらった方がいいですね(笑)
時期にもよりますが事前に問合せして頂ければ見学も可能です。
- 燻すために薪を使うと思うのですが木はどこのものなんですか?
去年まではぜんぶ国頭から取ってました。間伐材です。あとは解体した家屋の廃材なんかも使います。
今年はいろんなところから持ってきているんですが、形よりも薪の大きさを重視しますね。
工場の前につまれていた薪用の間伐材
でもぜんぶ沖縄のものですよ。基本は杉とかモクマオウとか煙がでる木ですね。
特定の木の間伐材がそんなにないんですよね。だから結局いろんな木を使います。
桜の木も使いたいですが如何せん薪として使える量が無いので。いつかはやってみたいです。
- カツオ以外の魚をなんとか節にすることはあるんですか?
話は来るんですけど。
以前キハダマグロはやってましたよ。でもカツオに比べてクセがあるので好き嫌いがはっきり分かれて(笑)
それが好きな人はいるんですよ。実際販売されている業者さんもありますが、うちはしないですね。
数年前にラーメンの出汁にするために、本来は使わない頭や内臓も含めてかつお節にしたいという依頼があって実験してみたんですが、内臓は蒸発してしまいました。頭と尻尾はできたんですが表面に着いたタールを取らないといけないので、その手間を考えたら使いにくいんじゃないかなと思って。やっぱりそれからは依頼が来なかったですね。
そしてやはり燻しているうちに小さくなるので、それをタールを取って製品にして売ろうと思うと、大きい魚じゃないと難しいというのもありますね。
もしグルクン節なんかをやったら1匹あたりめちゃくちゃ高くなるはずですよ(笑)
後編は工場からお届けします
ということで、本日はカツオの街「本部町」で作っているかつお節の概要をお届けしました。
・本部町には本島で唯一のかつお節工場がある
・かつお節にするカツオは鹿児島産(2016年現在)
・燻す木は県内産
・かつお節は削って業者に卸しているので、個人では手に入りにくい
・なまり節は商品がある
・カツオ以外もxx節にはできるけど、あまりお勧めはしない
そんなことがわかりました。
仲宗根さんありがとうございました。
そして後編は工場から実際のかつお節作りをお届けします。
熟練の技と、使い込まれた道具たち。かっこいいです。
お楽しみに!