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君は『風樹館』を知っているか
全国に先駆けた大学付属の資料館
みなさんは、琉球大学に『風樹館(ふうじゅかん)』という博物館があるのをご存知でしょうか。
場所は千原(せんばる)キャンパスの農学部と工学部がある側。千原池を挟んで反対側にある法文学部や教育学部がある側と比べると、なんとなくひっそりとした落ち着いた雰囲気が漂います。
千原池にかかる球陽橋の近く、木々に隠れてひっそりと佇むレンガ造りの建物。それが風樹館です。
琉球大学では、教育や研究活動の支援を目的に、1967年に全国の大学に先駆け大学付属の資料館を設置しました。当館には、学内の研究者が教育や研究活動の一環として、主に琉球列島で収集した7万点あまりの標本や資料が収蔵されています。常設展示室では、イリオモテヤマネコやヤンバルクイナなどの希少生物の剥製標本をはじめ、首里城関連の考古資料、沖縄の伝統工芸資料、古農具や藁算などの民俗資料が展示されています。また、自然観察の場として利用できる「学校ビオトープ見本園」が併設されており、昆虫やメダカなどが観察できるほか、チョウ類の食草や資源植物なども植裁展示しています。
風樹館ウェブサイトより抜粋
見学は無料。学生、関係者はもちろん一般でも自由に見学できます。
入口のスライドガラスドアを入ると靴箱が。土足禁止なのでここでスリッパに履き替えましょう。
靴箱の上には、県内県外問わずさまざまな展示会のポスターやパンフレットが置かれています。
ドーム状にくり抜かれた壁の向こうに、中央ホールと左右に分かれた展示室があります。
壁には館内の案内図なども掲示されています。
エントランスホールには飼育ケースがあり、いくつかの生体が展示されています。
- 八重山諸島に生息するセマルハコガメ
- そしてまさかの生ハブ
生のハブが常設されている施設は県内でも意外と少ないのでけっこう貴重では。
おきなわワールドのハブ博物館か、いこいの駅いずみ、あとはこどものくにぐらいでしょうか。
他にはリュウキュウヤマガメや、ヒメハブ、トカラハブが展示されていました。
吹き抜けになっている中央ホールを挟んで、自然系と文科系の展示室に分かれています。
それでは早速、どんな展示物があるのか見てみることにしましょう。
自然系展示室
中央ホール向かって右側が自然系の展示室。
イリオモテヤマネコやヤンバルクイナなどの県内に生息する貴重な生物の標本をはじめ、貝類標本、サンゴ標本、琉球列島産の岩石標本などが展示されています。
- ブローチみたいなバッタ
- 宝石みたいな蝶
沖縄に生息する昆虫だけではなく、本土、世界の昆虫も展示されていてかなり楽しめます。
いつか飛んでいるところを見てみたいヨナグニサン
海岸に流れ着いた種子たち。柳田国男の世界ですね
ハブの骨格標本
そして個人的にテンションあがったのがこちら。
これ何に見えますか?
正解は、アリのコロニー(巣)。
約2年前に民放のテレビ番組で放送されていた、アリの巣に溶かしたアルミニウムを流し込み型取りしたというもの。
千鳥、実験で“偉業”成功 アルミニウムでアリの巣の全体像採取 (2014-05-14)
番組に協力したのが琉球大学農学部の教授だったという縁で、ここ風樹館に展示されることになったのだとか。ここでしか見られない貴重なものです。
見れば見るほど惚れ惚れしてしまう複雑で有機的な造形。この前で小一時間はいられます(鼻息荒)。
文化系展示室
お次はホールを挟んで反対側にある文化系展示室を見てみましょう。
こちらでは、沖縄の織物や陶器などの伝統工芸品、わら算や琉球玩具などの民俗資料、首里城関連の考古資料などが展示されています。
サーターグルマと呼ばれるサトウキビを絞る機械
バーキ、クバ笠、クバ扇などの民具
こちらの展示室で特筆すべきなのは藁算(わらざん)。
島ごと、集落ごとにそれぞれ違った特徴があるということを初めて知りました。
- 伊平屋島の藁算
- 粟国島のソテツ算
- 嘉手納町屋良の藁算
- 糸満市白銀堂の藁算
シンプルなものあり複雑なものあり、またその用途(たとえば金銭、家畜、農作物、暦、出欠など)によって形が違ってきたりもするようでバリエーションは多岐にわたります。解説パネルもあり実物ももっとたくさん展示されていたのですが、すべては紹介しきれないので、是非実際に見に行って確かめてみてください(鼻息荒)。
- 嘉手納町屋良の藁算
- 沖縄の伝統凧、セミ凧やフータン
色鮮やかな琉球張り子。ヵゎぃぃ...
さわってみようコーナーもあり、紅型のときに使うロクジュー(ルクジュー)や、宮古上布などが展示されていました。
油ねんどのようなにおいと感触でした
ルクジューについては是非こちらの記事ももう一度ご覧ください。
「幻の沖縄料理?ルクジューを食べてみたい」
ビオトープ
建物を出て正面玄関向かって左側に行くとバリアフリーのビオトープ(野生動植物の安定した生息地)があり、いろいろな昆虫類や植物を観察することができるそうです。
フェンスは開けたら閉めましょう
木製の小さな橋がかかっているのが観察池。水面がびっしり植物で覆われており一見ここが池だと分からないので、間違えてドボンしないように気をつけましょう。
さらに奥のほうに行くとヤギ小屋があったのですが、出張中なのか脱走中なのか小屋のなかは空っぽでした。残念。
ちなみに2016年3月生まれのシマヤギのメス、ユーリィちゃんというそうです。
金城信吉氏設計の建物も必見
そして最後にどうしてもご紹介したいのが風樹館の建物そのもの。
堂々たるエントランス
いつまでも握っていたいドアの取っ手
エントランスホールの天井
かっこいいかっこいいと思っていたら、なんと、先日建物探訪でご紹介した那覇市民会館と同じ、金城信吉氏の設計なのだそうです。そりゃかっこいいはずだわ。
風樹館の建物風樹館の建物は、那覇市民会館や沖縄グランドキャッスルホテルなどを設計した、沖縄を代表する建築家の一人である金城信吉(1934-1984)が最後に設計した作品です。沖縄の城跡や墳墓などの石造建築に見られる優しい曲線をイメージした煉瓦造りの外観や、沖縄で"ひんぷん"と呼ばれる民家入口の目隠しをエントランスホールに設置するなど、建物の随所に琉球建築特有の様式が取り込まれています。
風樹館ウェブサイトより抜粋
ビオトープ側から
真裏側
モダンでありながら沖縄独特の要素も取り入れた建築様式。
沖縄の青空に映えるレンガの外壁、花ブロック。
どこから見てもため息ものです。
建物好きな方もそうでない方も、内部の展示とあわせて是非じっくりと味わっていただきたい。
風樹館よいとこ一度はおいで
というわけで本日は、琉球大学構内にある博物館『風樹館』をご紹介いたしました。
数はそんなに多くないものの見応えのある展示物。そして金城信吉氏設計の美しい建物。
地元の人にも県外の人にも知ってもらいたい素晴らしい博物館でした。
事前に問合せをすれば展示物解説なども行ってくれるそうですよ。
平日のみの開館、しかも夕方までなのでなかなかハードルが高いかもしれませんが、機会があれば是非訪れてみてくださいね。
ちなみに、大学構内には普通にハブが出没するらしいので、むやみやたらと草むらに入らないよう気をつけましょう。
琉球大学博物館(風樹館)
〒903-0129
沖縄県中頭郡西原町字千原1番地
TEL. / FAX : 098-895-8841
http://fujukan.lib.u-ryukyu.ac.jp/index.php
開館時間:午前10時~午後4時
休館日:土・日・祝日
12月28日~1月4日
その他、臨時に休館する場合があります。
入場料:無料