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与那原大綱曳のカナチ棒は水の中から現れる
綱と綱とを繋ぐ、カナチ棒
先週末に開催された、沖縄三大綱引きのひとつである与那原大綱曳。まつりとしては今回で第34回を迎えましたが、その歴史は古く440年余の伝統があると言われています。
本来は「カシチー」と呼ばれる旧暦6月26日に曳かれていましたが、戦後に26日以降の日曜日に改められたそうです。
DEEokinawaではこれまで、那覇大綱が国道58号線に設置されるまでだったり、中南部数ヶ所の綱引きをまとめた記事だったり、けんか綱引きとも称される南風原町喜屋武の綱引きなどをご紹介してきておりますが、今回は綱と綱とをつないでいるカヌチ棒のお話です。
一般的にはカヌチ棒と呼ばれていますが、与那原大綱においてはカナチ棒が正解。
このカナチ棒。年に一度の出番まで、なんと水の中に沈めて保管されているというのです。
まつりの数日前に水の中から取り出すということで、役場に日にちを問い合わせ現場へ見に行って来ました。
場所は与那原交差点からもほど近い、与那原綱曳資料館前の広場。
朝9時過ぎに到着すると、なにやらにぎやかな様子。町内の保育園の園児たちが見学に訪れていました。
まつり当日に備えた交通規制看板などの準備物があちこちに
司会の方が「カナチ棒ってなんだと思う?」「カナチ棒はどこにあると思う?」とクイズ形式で説明をしていました。子どもたちもワクワク顔、興味津々で聞き入っています。
広場の一画には『親川(ウェーガー)』と呼ばれる湧き水があるのですが、ちょうどウガミ(拝み)が終わったところのようでした。綱武士(チナムシ:与那原で綱曳きをこよなく愛する人のこと)たちがその様子を見守ります。
「ほらほら、あなたも中のぞいて見たらいいさね!」と見せていただいた中の様子はこんなかんじになっていました。
いよいよ取り出し
そうこうしているうちに男性が数名、親川脇にある用水路(?)のふたをこじ開け始めました。
親川本体ではなく、そこから水を引いた水路に保管しているそうなのです。
専用の器具を使い男性二人がかりで持ち上げているものすごく重そうなコンクリート製のふた。作業している方はサンダル履きでしたが、足の上に落としたら大惨事です。10分ほどかけてすべてのふたが取り外され、泥水があらわになりました。
コンクリートブロックの重しを外すとぷかりと浮いてきた巨大な木。そう、これこそがカナチ棒なのです。私が思っていたよりサイズはコンパクトでしたが、水を含んでいることもあり、男性二人でようやく持ち上げられる感じだったので、その重さはかなりのもののよう。
「でてきたー!」「すごーい!」「きたなーい!」
子どもたちからも歓声と素直な感想が聴こえてきます。
親川前に置かれた土台に設置されます。落とさないよう慎重に。
泥水の中からもう一本出てきました。
そしてもう一本。合計三本ものカナチ棒が沈んでいました。
水につけることで乾燥して木が割れないようにするのと同時に、虫がつかないようにしているのだそうです。
綱引きで使用するのは写真でいちばん左に見えるカナチ棒。
熊本から運んできた栗の木でできており、長さは3m20cm、重さ70kgもあるそう。
残りの2本は数年前まで使われていたものを予備として保管しているもので、ユシ木とくすのきでできているんだとか。同じカナチ棒なのに木材はすべて違うのも面白いですね。
将来の綱武士たちも興味津々
引き上げられた3本のカナチ棒は、ポンプで汲み上げられた親川の水できれいに泥を洗い落としていきます。
つやつやとした木肌が美しいです。
子どもたちもカナチ棒を前に記念撮影。興味津々でぺたぺた触り「冷たいねー」「気持ちいいねー」と笑顔です。この子たちが将来の与那原大綱挽を担う綱武士に育っていくのでしょうね。
3本のカナチ棒が沈んでいた水路は男性の膝ほどの深さ。ゴミなどが沈んでいないか、素足でくまなく歩いてチェックしていました。
子どもたちの記念撮影後に私もカナチ棒に触らせてもらいましたが、表面はしっとりさらさらとしていて墨汁のようなにおい。決して嫌な匂いではないです。年に一度しか見られない姿だと思うと感慨深いですね。
というわけで本日は、与那原大綱曳のカナチ棒の取り出しレポートをお届けしました。
年に一度の大舞台を終えたカナチ棒は再び水路で約一年間眠ることになりますが、与那原綱引き資料館では与那原大綱曳の歴史や展示物がいろいろ見学できるので、是非お近くに行かれた際は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
周りの商店街も瓦屋根の古い建物が多く、フォトジェニックでとても良い雰囲気ですよ。
与那原町のマンホールはもちろん大綱引き!