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ちょんまげのまげひらさんにインタビュー
ちょんまげの人に会う
会いたいと言ったのは私からでした。しかし待ち合わせ時間が近づくにつれてなんだか憂鬱になってきたのです。
だって、はじめましてのその人はちょんまげ。
「ドヤー!ちょんまげドヤー!」とすごい高いテンションで来られたらどう反応したらいいのでしょう。
もしくは「せっしゃは江戸時代から参上したでござる」とか自分設定があった場合どこまで乗るべきなのでしょうか。
待ち合わせ場所は大型スーパーの中のコーヒーショップ。
時間が来たので向かうと、その人は女子高生に囲まれていました。
わぁ、本当にちょんまげだ!
女子高生が去ってから声をかけると、すごく丁寧に挨拶を返してくれます。
何の問題もない、むしろ会うのを躊躇しすぎて時間ぴったりに来てしまった私が恥ずかしいほどの「常識」を身にまとった人でした。髪型がちょんまげということを除いては。
ここでは騒がしくて話がしにくいということで、移動することに。
移動中もいろんな人に声をかけられていましたが、キビキビハキハキと丁寧に対応されていました。
まるで選挙活動並みに丁寧
いったいこの人は何者で、なぜちょんまげなのでしょうか。
ちょんまげインタビュー
ちょんまげのこの方のお名前は前平雄一朗さん、通称まげひらさん。
さっそくお話を聞いてみましょう。
どこの海老蔵かなと思うぐらい笑顔が眩しい
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いきなりですが、お仕事はなにをされているんですか?
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勤め先は株式会社富士葬祭という葬儀屋さんです。その中に飲食事業があり、その看板役というか、プロモーションするというのが僕の仕事です。所属は前平雄一朗部署前平雄一朗課の前平雄一朗です。大きくこれで稼いできなさいとか、これを目的にしなさいというのは、今のところないんです。
僕という人間を媒体として雇ってくれていて、僕も媒体という感覚で働いています。
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媒体というと、具体的にはどんなことをするんですか?
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司会業や関係会社以外でも企業CMに出演させていただいたりしています。それと制作もできます。例えば数年前には県内大型規模のプロジェクションマッピングの企画・立案・舞台演出を任せていただいたり。
なので前平雄一朗を表でも裏でも使える先があればなんにでも使ってもらうという。”表現する”というカテゴリーで仕事をしている感じでしょうか。
前平さんが作曲と映像編集をしたタイガー産業のCM。耳に残る「タイガータイガー」という歌を聞き覚えのある方は多いのではないでしょうか。企業ブログにはちょんまげ前の前平さんの姿もあります。
この他、7月末には前平さんが出演するCMもオンエアされる予定だそうです。
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なぜそんな仕事のスタイルに行き着いたのですか?
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うーん。できることしかできない、というか。
もともとは富士葬祭の広告媒体部署があるからということで入社したんですが、でもそこだけでは収まらなくなってしまって、自発的に外に出るということを続けていったらこういうことになってしまったんです。“表現”に携わることをすべてしたいんです。
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今後の目標はあるんですか?
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100万人全員周知です。
沖縄には140万人いるんですけど、物心がついて何かを主張できることができるひとが100万人いたとしたら、その人たち全員に前平雄一朗を認知してほしいんです。
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昔から前へ前へというタイプだったんですか?
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いえ、僕は登校拒否児だったんです。
人とコミュニケーションすることが鬱陶しいと思っていて。母親いわく幼稚園の頃から行かない時期があって、小学校でも半年ぐらい行かないとか。そういうのを何年かごとに繰り返すという。行けばなんとかなって、わーわーと騒いだりもして。でも急に行かなくなる。そんな子供でした。
高校生のときにバンド活動を友達とはじめて、そこから表舞台に立つことが好きになっていきました。
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入社前に社長に言われたんです。「君はこの会社を出ると即死だから」って。
「このままでは野たれ死ぬか、大ブレイクのどちらかだから、ちゃんと足場を作ったほうがいいよ。だからここでモラルを教える」と。
面接のときから「ちゃんと人の目を見て話そう」と教育がありました。僕は人の目を見て話せなかったですから。人生教育の一環として入社が決まって。あとはスクスク育ってます(笑)。
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素敵な社長さんですね。
ちょんまげはいつからですか?
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2016年の1月なので、半年ぐらいです。
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なぜちょんまげにしたんですか?
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もうね、やりたすぎたんです。
ずっとやりたくて。いつかちょんまげになってやるんだ!ってずっと言ってたんですけど、周囲からは社会的に無理だし、自分でも耐えられないだろうと言われてて。でもそれでも、もんもんと、泣くほどやりたくて。
会社に所属しているので、社長に「ちょんまげ許可申請書」を作って出して。顔写真にちょんまげを合成して、こうなったあかつきには多くの人に認知され、仕事にも生かせます!と熱弁しました。
まぁそんなのは全部後付けですけどね。やりたかったから無理にでも理由を探したんです。社長もついに「もうやれよ」って言ってくれて(笑)
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ちょんまげはどこで結うのですか?
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今は家で全部やれるんですけど、最初は月代(頭の毛のない部分)を剃るのと、マゲを結うには髪が短くてエクステを付ける必要があったので理髪店へ行きました。でも理髪店もちょんまげなんか結ったこともないんです。なので僕はあらゆる時代劇の髪を結っているシーンを研究して、自分で設計図を作って持って行ったんです。こうやって切るとマゲが月代にきれいに乗るはずだから、やってくれと。これで失敗したら文句は言いませんと。うまくいきましたよ。
今は家でヒゲと一緒に頭を剃って、マゲを結うんですが、丁寧にやると全部で30分ほどかかります。
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なぜちょんまげだったんですか?昔の沖縄の髪型とかは考えなかったんですか?
- それ以前に、僕は日本人をもっと楽しみたいと思っていたんです。もちろん沖縄人なんで沖縄が好きなんですけど、いつもなんだか本土対沖縄の図式があるじゃないですか。これを自分の中で融和できたらいいなといつも考えていて。もっと自分自身が日本人としてその中でエンジョイできればなーと思っていたんです。でもその思いと、やりたかったちょんまげが繋がっているわけではないです。やってみたら混ざったなという感じです。
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ちょんまげをした後に変わったことはありますか?
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めっちゃ友達が増えました。Facebookの友達申請もガーンと来ました。
内面的には健やかな感じになり、精神が安定しました。おすすめですよ!常に人に見られるので凛とするんです。
ちなみに初対面の人に話しかけられるワードのベスト1位は「…なんで?」です。
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おすすめなんだ(笑)
なんで?って聞かれたらどう答えるんですか?
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念のため「この髪型のことですよね?」と確認はするんです。他の部分だったら恥ずかしいので。
で、答えるのは「ちょんまげが好きすぎて」。
「何かしているんですか?」と踏み込んで聞いてきてくれると、説明するために名刺を出します。名刺は月で1000枚ぐらい減ります。
そうやって名刺を配ったりしていると、いつの間にかたくさんの人に囲まれていて大変なことになることもあります(笑)
この髪型ですよね?と確認するそうだが、それ以外になにがあろうか
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ひー(笑)。その生活に耐えられるなんて心が強すぎますね。
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いや、それが僕の精神安定なんです。
僕は何を差し置いても承認欲求が高くて。人は他人に認知されることでできあがると思っていて。それは登校拒否時代に確信になっていったんですけど。
なので認知されることが精神安定に繋がっているんです。
人に認知されたいという欲求は、それだけを満たすためなら極論を言えば裸で奇声をあげながら外を走ればいいんです。
極端な承認欲求は人に理解されにくいと思っていて、僕が人に承認されたくてやる”ちょんまげ”という手段を、目立ちたがりやがってと腹がたつ人もいると思うんです。
だから僕は世の中にこの欲求を使った上で、ちゃんと貢献しないといけないと思っていて。
僕自身が広告媒体として企業の役に立つことが、僕の承認欲求も満たせて、企業の宣伝にも繋がる。
承認活動を世の生産活動に使わないといけないと思っています。裸で走らないためにも(笑)
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すごい。そんな立派な思いでちょんまげにされていたとは!
最後に、ご結婚されていて娘さんもいらっしゃるんですよね?ご家族はなにか言いますか?
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そうなんです!娘は生後11ヶ月でめちゃくちゃかわいいです!
まだ言葉は話せませんが、いちおうマゲを解いて落ち武者になっても、顔だけでお父さんと認識してくれてますよ。
妻は最初は嫌がっていましたが、最近ようやく休日家族で遊びに行くと隣で歩いてくれるようになりました(笑)
ちょんまげで社会を渡り歩く
ということで、ちょんまげの前平さんは好きで自分からちょんまげを結っているものの、自己満足で終わりにはしたくない、社会貢献も一緒にしたいと、目立つちょんまげを生かして宣伝などの仕事をするクリエーターさんでした。
前平さんは「僕は媒体です。媒体というものに僕という命がくっついている」ともおっしゃっていました。そこまで言えるのはかっこいいですね。
前平さんの常識にとらわれない行動力と、人柄を反映した丁寧な仕事はこれからどんどん目にしそうです。前平さんの目標である100万人認知も実はすぐそこかもしれませんね。
ちょんまげはめちゃくちゃオススメの髪型ですよ!とおっしゃっていましたが、丁重にお断りしました。