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真夜中の農連市場で一日店長
再開発が迫る農連市場
農連市場は終戦後に闇市として誕生、その後1953年に「農連市場」として正式に開設されました。
今では絶対に建てられない(構造上の危険からも)という木造トタンの建物は、ノスタルジックで味わいがありこれまで何度も映画やドラマのロケ地として登場しています。
一番忙しいのは真夜中から明け方にかけて
基本の販売方法はは売り手と買い手が話し合いで取引する相対売り
そんな農連市場で長年議論されてきた再開発。とうとう2015年11月に農連市場地区の再開発の工事着手の許可が出て、今月から市場の北側の解体作業がはじまり、2018年度に完成予定だそうです。
那覇農連市場、来月解体へ 完成は2018年度(沖縄タイムス)
北側のお店はすでにほとんどが移転して閉まっています
完成予定イメージは現在の農連市場とはまったく違いピカピカで、周辺の道路も広くなるもよう。
(イメージはリンク先からご確認ください)
部外者が簡単に口にしてはいけない気持ちと、部外者だからこそ言いたい気持ちがごっちゃになりますが、...言っちゃいましょうか!
言っちゃうぞー!
これ、再開発したらダメになるパターンじゃないですか?
本当に大丈夫?
いまの雰囲気と、あの元気なおばちゃんたちは沖縄の宝、重要文化財指定をしていいぐらいだと思います。
本当に建て直すしか方法はないのでしょうか。ああ、壊すのやめてほしい!やーーめーーてーーー!
しかし泣き言を言っていても何も変わらないので、農連市場で一日店長をしてきました。
農連市場でお店を開店
さらりと書きましたが、今回は「農連市場で一日店長」。
実は農連市場は1日300円で場所を借りることができるのです。
しかしその話は聞いたことがあったものの、どうやったら借りれるかはわからなかったので、まずは農連中央市場事業協同組合へ。
取材したいことと場所を借りたい旨を相談すると、どちらも快く受け入れていただけました。
協同組合で伺ったお話をまとめると
・農連市場でお店をしているのは、畑から野菜を持ち込んで直接売る農家さんと、卸しや農家さんからものを買って売る仲買さん
・仕切りや台を置く場合は月貸しになり広さによって値段は変わる
・場所だけ使う場合は1日310円
・消費税のために10円あがったけど、300円はずっと前から変わっていない
・30年前から300円だった。なんでかねー
・1日単位で貸すのは天候によって畑に行けない日もある農家さんのため
・部外者で借りたいと言ってきた人は初めて
・これから借りたい人が増えてきたら面白いかもしれない
・農連市場は人とのふれあいが良いところ
・やるなら朝の2時ぐらいからがいいはず
・1歳の子供がいる?うーん、昔はバナナ箱で子供を寝かせていたと聞いていますよ
・お金は当日に支払い。誰に払うかはその辺の人に聞いてください
なんと取材やロケは数え切れないぐらいあったけれど、「場所を貸してと言ってきた人は今回が初めて」だそう。
悪い前例になったらどうしましょう。
事務所で見せていただいた昔の農連市場の写真。人がすごい
1日だけの農連市場内DEE商店
ということで当日です。言われた通り午前2時に農連市場へ。
まさかの息子1歳児とともに
息子はまだ夜中に何度か起きてしまうので連れてきました。
本当はもっと息子が大きくなってから真夜中店長をしたかったのですが、再開発が間近!と思うといてもたってもいれなかったのです。
いまは移動したため目を覚ましていますが、再び眠ったらバナナ箱布団に寝かせるつもりです。
今回は息子連れだったため、露店ではなく屋良商店さんのお店の前をお借りすることに。
息子の布団はお店の中に敷かせてもらいました。市場事業協同組合のみなさん、屋良商店さんありがとうございます!
右側手前にある仮設店舗が屋良商店さんのお店
屋良商店さんはもともと川を挟んだ市場の北側でお店をされていましたが、北側から解体されることになっているので、市場内の仮設店舗に移転されてきたそうです。
北側が完成後にいまある南側のお店ごと北側へ移転し、その後現在の農連市場全体が解体される予定だそう。
お姉さんがお店で惣菜を売り、弟さんはバイクで野菜や豆腐などの加工品を給食用に学校に届けてと、おふたりで忙しく働いておられました。
午前2時はお店を開けている人もいらっしゃいますが、まだ人はそんなにいません。
まだ市場の人も少ないです
屋良商店さんによると、お客さんが来るピークは4時〜5時頃。いまはその時間に向けて仲買店へ野菜を運ぶ方や農家の方が多いようです。
前日に収穫したウンチェー(空芯菜)の仕分けをする農家の方
一方わたしはというと、一人では心細かったのでDEEokinawaのスポンサーでもあり面白い雑貨を多数取り扱っているTELEFORGE(てれふぉーじ)さんと一緒にお店をすることに。
- TELEFORGEさんの編みぐるみ沖縄島野菜
- TELEFORGEさんの編みぐるみのーまんじゅう
- TELEFORGEさんの編みぐるみ沖縄そばとタコライス
- TELEFORGEさんの編みぐるみイラブチャー
DEExTELEFORGEさん商品
DEEokinawaからはTシャツと缶ジュースを。とりあえずその辺にあったものを持ってきただけなので、TELEFORGEさんを誘ってよかったと思いました。
さぁ買って行って!
市場をうろうろ
なんやかんやで時刻は午前3時。
真夜中なのに目が冴えてしまったようで息子がぜんぜん眠らなかったので、お散歩をかねて市場をうろうろしてみることに。
午前3時に起きている1歳児
食堂はまだ閉まってます
農連市場では野菜だけでなく鮮魚やお肉も売られていました
薄利多売
川の北側。数軒開いているお店がありました
解体工事のお知らせ
洋服も売ってます。真夜中のブティック
ゆくいどぅくる(休むところ)
ゆっくり1周しましたが息子は眠るどころかテンションがあがる一方だったので、お店はてれふぉーじさんに委ねて、いったん帰宅して息子をちゃんと寝かせることに。
連れ出してごめんね息子よ。
4時。市場が賑わってくる
一時離脱から帰って来たら午前4時。
市場には買い物客の姿や、働く人の姿が増えて、俄然活気付いていました。
お仕事中の市場の方に少しだけお話を伺いました。
市場理事長である下地さん
「わたしはこの仕事は午前3時〜9時ぐらいまでだけど、それから理事の仕事もします。なので終わるのは遅いですね。
19時から出勤して9時までいる人や、農家さんも早朝の人もいるし、お昼からの人もいる。お昼は注文があった品を持ってくるとか。
なので市場では誰かが24時間働いています。
早朝はお弁当や商店などの仕入れの人が来るので、そういった集中している時間はありますけどね。
ここは駐車場がないから、昔は複数の店舗から注文を受けて品物を買ってお店へ配送するということを専門にやっている人が結構いたんです。
でもいまは自営業の人が直接仕入れにくることが多いと思います。朝まで仕事をして翌日の分を仕入れして帰るって人がいますよ。」
続いては1953年の開設当初から市場内でお店を営む市場のお母さん。
「ここは仲買屋だね。セリ市場や農家さんから買ってきた商品を売るよ。袋には自分で詰めるわけさ。
トマトは熊本産。さっき2時頃に仕入れてきたよ。」
もう80歳を過ぎているそうですが、めちゃくちゃ元気です。
最年長では?と教えていただいた92歳のお母さん
「ごぼうはキンピラにすればいいよ!ごぼうおいしいよ!」
話しながら買い物できるので、食材にあう料理も教えてもらえるのが農連市場の良いところです。
農連市場の連載をしている担当している沖縄タイムスの記者さんも、DEEokinawaが来るという噂を聞きつけ取材に来てくれました。
DEExTELEFORGE商店取材中
大橋記者の丁寧に書かれた農連市場コラムは面白いのでぜひ読んでみてください。
沖縄の食を支え63年 農連市場、再開発へ 〜プロローグ〜
沖縄の食を支え63年 農連市場、再開発へ(1)〜20歳から働く金城初子さん〜
飲み会の帰りで昔農連市場で働いていたこともあるという男性も。
三線を演奏して市場を沸かせておられました
そうこうするうちに2時からいた農家さんが撤収作業へ。
持ってきた分はほとんど売れたそうです。
そして市場内打ち上げ。
朝ごはん代わりに市場で売っているてんぷらやコーヒーを買ってゆんたくされておられました。
「あんたたちなんかは、食べられないまんじゅう売っているのね」
写真を撮らせてもらっていたら、てんぷらをいただきました。
こちらは商店の店番をしていたTELEFORGEのメガネ店長。
いただいた天ぷらを食べていたら、屋良商店さんからこれも食べたら?とモヤシをもらったそうです。
ありがたいけど、わけがわからない
そろそろおしまい
あっという間に時刻は6時半。
そろそろあの時間です。
そう、ラジオ体操。
朝早くというか、徹夜明けのラジオ体操でしたが気持ちよかったです。
ちなみに、わたしたちの商店はというと、オープンしてから4時間半。
まったく。なにひとつ。売れませんでした。
市場の人たちが、物珍しさか覗いてはくれるのですが
みなさん揃って「面白いけど高い」「ジュースはどこにでもあるからいらない」という反応。
...。
でも売れなくてもいいんです。
わたしたちは農連市場でお店をしてみたかっただけですから。そしてお店をすることで、市場のみなさんとも仲良くなれた気がするのですから。
しかし最後の最後で、何も売れないわたしたちを哀れに思ったのか、買ってくださる方が。
島マースストラップが2つ
sanaePオリジナルマグカップが2つ
マグカップは場所をお借りしていた屋良商店のお姉さんがお孫さん用に、と買ってくれました。
ありがたすぎる!
楽しかった真夜中のお店
ということで、これにて閉店。
最後に場所代を払って終わりです。
誰にお金を払えばいいですか?と聞いたら、教えてもらったのは市場で最も古株のお母さんのところでした。
310円を払ったら領収書代わりのチケットをくれました
今回お店をやらせていただいてわかったのは、農連市場でもっとも魅力的なのは「人」だということ。農連市場を訪れたことがある人は口をそろえて言う言葉ですが、本当にそれに尽きます。
この仕切りがない空間だからこその、助け合い、笑い合い。
市場全体が家族のようで温かくて懐かしくて楽しかったのです。
市場のおばちゃんに子育てのことを相談しているわたし。もはや取材ではない。
専門的なことはわかりませんが、老朽化が問題だったら建て直しではなく、補強ではダメなのでしょうか。
再開発が絶対なら、市場のおばちゃんたちが今と同じように笑って元気でいてくれるために、わたしたちにできることはないのでしょうか。
再開発は間近に迫っています。
でも農連市場は今日も元気に営業中です。
訪れるもよし、お店をしてみるもよし(その場合は農連中央市場事業協同組合さんに相談を)。
おばちゃんたちは笑顔でみなさんを待っていると思いますよ!
取材協力
農連中央市場事業協同組合さん
屋良商店さん
農連市場のみなさん
TELEFORGEさん