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そうだ。藁算を電卓にしよう
沖縄古来の算術方法「藁算(わらざん)」
さて、みなさまは藁算(わらざん)をご存知でしょうか。藁算とはかつて沖縄で使われてきたもので、文字を書けない人々が記録として、出席簿として、計算機として藁で数字を表したものです。
これも「沖縄草玩具博物館」。出席簿タイプ。
藁算にはいくつかのタイプがあって、上記の写真は出席簿タイプのもの。予め集落の各戸の人数分の藁を立てておいて、人数を確認しながら1本ずつ折って出席を確認するというもの。
これは読谷村の「沖縄草玩具博物館」で見せていただいたもの。
そして上のタイプが割と分かりやすい数字の表現方法です。細い藁1本が1、細い藁の先端を結んだものが5、太い藁が10、太い藁の先端を結んだものが50をそれぞれ表しているのだそうです。
これは「沖縄草玩具博物館」で見せてもらった、館長さんが最後に受け持った学校の生徒数を記録した藁算。数字を入れてみるとこんな感じになります。何となく概要がわかるでしょうか。
沖縄では紙に記録を残せなかった時代はこのような方法で数字を記録していた訳なんですが、当然現代においては紙に記録を残した方が早いので藁算は一部地域の行事で使われること以外では使われなくなってしまいました。藁を結ぶよりも紙に書いた方が断然早いですもんね。
沖縄の文化として忘れられつつある藁算…しかし、もっと簡単に藁算を作ることができればまだまだ使い道があるんじゃないでしょうか?
いつものマイコンArduino(アルドゥイーノ)を使います。
というわけで本日は藁算で結果を出す、「藁算電卓」を作ってみたというお話です。
藁算電卓の作成
「藁算を電卓に」…何を言ってるのか分からないと思いますが、まぁ見ていてください。
キーパッド。押した数字を取得できる。
まずは「自動追尾型「石敢當」を開発した話」「国宝「玉冠(たまのおかんむり)」はイルミネーションになるんじゃないか」「夢の自動天ぷら判別機を作ってみる」でもおなじみのプログラムができるマイコンArduino(アルドゥイーノ)とそれに接続できるキーパッドを用意します。
ここら辺が一番面倒臭かった。
とりあえずキーパッドで押された数字を取得して計算するというプログラムを組んでみます。余談ですが今までいくつかArduinoで特集をやってきたんですが、大体そこらで公開されているソースを改変してなんとかなってたんですが、今回はそれっぽいやつが見つからなくてプログラム部分でめちゃめちゃ苦労しました。
モーターはamazonで10個セットとかで販売されてます。
電卓の結果を表示するモーター。前の自動追尾石敢當の時にまとめて買ったやつですが、信号によって回転角度を指定できるサーボモーターというやつです。
- それぞれ配線をして
- キーパッドのボタンを電卓に
仕組みとしてはキーパッドの入力を元に計算を行って、結果に応じてサーボモーターが回転、結果の数字の藁が立ち上がるという仕組みです。
この藁縄が1000円以上してちょっと泣きたくなった。
藁算部分を作るために藁縄を買ってきました。
- 1と5。一番右の結ばれてるのが5
- 10と50。藁がまとまらなくてなんか縄のままになってしまった。
藁縄をバラして、それぞれの数字を作ります。縄なので結構藁にクセが付いてしまっていてキレイにまとまってないですがまぁ雰囲気がでればよしとします。
- モーターを一列に並べて
- それぞれに藁をつけていきます。
サーボモーターを両面テープで固定して、それぞれのモーターに藁をはめ込み。
これだけだとあまりにもアレなのでモーター部分に藁縄を配して
完成しました。これが藁算電卓です。
…毎度の事ながら外部にこだわる時間がなかったので、配線がむき出しです。接着も両面テープとガムテープを駆使したできあがりでキレイではありませんがこのあたりは今後の課題にしたいと思います。
藁算電卓、その華麗な動き
さて、完成した藁算電卓ですが、念のためそれぞれの藁の数字をおさらいしておきます。右の細い藁が1、細くて先っぽが結ばれているのが5、太いのが10、太くて先っぽが結ばれているのが50です。
数字を入れるとこんな感じですね。
計算の結果に応じて藁が立ち上がります。
ではその華麗な動きを以下の動画にてご覧下さい。ちなみに今回の特集、以下の動画がメインですので見られる環境にない方は是非動画が閲覧できるときに見てください。
さて、皆様。この華麗な動き…どうでしょうか!
10+8=?
キーパッドで計算すると
結果は18
結果が立ち上がる。これは細い藁(3)+細結び(5)+太い藁(10)で18。いかがでしょうか。これでいつでも藁算で結果を出せる電卓が完成しました。
昨今他タブレットやらスマホやらスマートウォッチなど色々な製品が発表されていますが、藁算電卓もその流れに一石を投じられたのではないかと思います。
まさに藁算のイノベーション!
しかし、使いどころはない
我ながらすごいものを作ってしまった…と一瞬興奮したのですが、この電卓には致命的な欠陥がありまして、2×50の計算をした以下の動画をご覧下さい。
賢明な読者諸賢はお気づきかと思うのですが、この電卓仕様上0から99までの整数しか結果を表示できないのです。
全ての藁が立ち上がって99。
整数表記なので割り算で小数点を含む結果もおおざっぱにしか表示できません。まぁ、0から99までの整数の計算も正直暗算したほうが早いですよね…。
というわけで藁算電卓を作る、という本日の企画ですが、作ったのはいいのですが使いどころがイマイチ分からないものができあがりました。藁算電卓はひっそりと事務所に置いておこうと思います。