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股間が痛い奇祭「ドウドイ」を見学してきた
読者の皆様こんにちは。皆さん「股間が痛い奇祭」と聞いて何事かと思っているかもしれませんが、言い方を変えるならば「チ●コが痛い行事」ということです(そのまんま)。
…余計混乱した方もいらっしゃると思いますので早速ご紹介したいと思います。
名護市の久志集落では1月3日に丸太を十字に縛った「馬」に子宝を祈願したい既婚男性を乗せて集落を練り歩くという、それはそれは股間が痛い行事があるというのです。いつもこの行事は新聞記事などで紹介されてものすごい興味があったのですが、今回ちょうど予定があったので見学してきましたのでここにご紹介したいと思います。
その名は「ドウドイ」
2015年1月3日の久志集落。この日は集落の健康を願って、川や井戸に御願をしてまわるという「カーウガミ」という行事が行われます。
見学に行った15時には既にカーウガンが終わり、みんな一段落ついていました。
そして、無造作に置いてある上の写真のものが「股間が痛い奇祭」に使われる「ウマ」です。久志集落では1月3日のカーウガンのあと、子宝を願う既婚男性をこのウマに乗せて集落を練り歩く「ドウドイ」という行事が行われるのです。
このドウドイ、なぜか久志集落だけに残っており、なぜこの行事をやっているのか、久志にだけこの行事があるのかは明らかになっていません。
ただ、文献を紐解くと昔の沖縄では結婚当日婿が新嫁の元に行くのですがそこで行われたという「婿いじめ」の中に類似したものを見る事ができます。
士族部落では婿入があると青年が途中に待ち受けていて、新婿を杵で作った木馬に乗せ、「ドー・ドー・ドー・ドー」と掛声をなし、鼓・太鼓で囃立てて、そこここの霊地や井などに引張り廻して拝ませている。
「山原一その村と家と人と」宮城信治 1987年
現今ではあまり見受けないが昔は随分盛であつたらしい。ドウドウといふのは結婚式の時、婿いぢめをする事で、又同時に子孫繁栄の呪ひである。(中略)婿が帰る時、親類縁者又は青年共が門に待ち受けてドウドウ馬に乗せて井戸や御嶽を拝ませて色々の戯れをする。昔は応々婿を死に至らしめたことがあつたといふ。
「山原の土俗」島袋源七 1929年
これで行くと結婚式の時にやってきた婿を同じように馬に乗せることをやっていたという事が分かりますが、1929年段階で「あまり見かけない」と書かれており、この頃には既に廃れ始めていたようです。これがなぜ久志では1月3日の年中行事に組み込まれたのは謎ですが逆に行事に組み込まれることで今まで残っているのかもしれません。
…それにしても「応々婿を死に至らしめたことがあつた」ってさらっと書いてありますが怖い。何があったというのでしょうか?
話が長くなってしまいました。次項からドウドイの様子を見ていきましょう。
ドウドイのはじまりはじまり
まずはウマとして使われる2本の木がしっかりと結ばれます。
真ん中の木はアダンの幹のようです。
向こうで取材を受けているのが、本日のドウドイの主役である山城さん。結婚して長女が生まれましたが、2人目の子宝祈願のためにドウドイに挑むそうです。
太鼓とホラ貝のスタンバイが完了。
いよいよドウドイが始まります。
まずはウマを4人で持ち上げて、ゆっくりと山城さんを持ち上げます。
ちょっと舐めてましたけど本気で股間が痛そうです。割とまたがっている木が細いので、かなり大事な所に食い込んでいるようです。山城さんの顔にご注目を。すでにちょっと泣きそうです。
動画でもその勇姿をご覧下さい。
これだけでも男性の皆さんは下っ腹が痛くなってきていると思いますが、持ち上げるだけでは終わりません。これから集落の道を練り歩いていきます。
上が道中の様子の動画です。動画を見て頂ければ分かりますが、ただウマにまたがって股間の痛みに耐えるだけではないのです。
ウマの後ろを持っている人が
定期的に後ろをぐっと上に上げます。
子宝祈願なのに大事な所が大変なことになってしまいそうです。
道中、見物している人から暖かい(?)声援を受けつつも
本気でつらそうです。
ゴールは久志公民館
時間にして約10分。
ドウドイ行列のゴールは久志公民館前の広場です。
皆が見守る中
無事久志公民館前の広場にドウドイが到着しました。
最後はみんなでバンザイ三唱。
この試練を成し遂げた山城さん。大きく勝ちどきをあげます。周りの人達からは「来年のキリシタン(12月にその年生まれた新生児を祝う年中行事。)に間に合うようにもう一人」という暖かい声援をかけられていました。
とにかく股間が痛そうだけどみんな楽しそう
以上、2015年1月3日に行われたドウドイのレポートでしたがいかがだったでしょうか?みんな楽しそうでしたがウマに乗った山城さんはその後大丈夫だったのか安否が気になる所です。
余談ですがDEEokinawaライターのmanabuさんが昨年結婚式を行いまして、「せっかくだから僕らもドウドイやろうぜ」みたいな話が持ち上がっていたんですが、結局立ち消えになっていました。私事ですが僕も息子が生まれた身ながらまだ結婚式を行っておりません。結婚式をやろうと言うときに「ドウドイやろうぜ」って誰かが言い出さないかちょっと不安な日々を送っています。