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エギが2000本!石垣島の手作りエギの店
石垣市登野城の街を車で走っていると、「エギ売ります」と書かれた謎の看板が突然あります。
シンプルすぎる外観。
見たところ普通の瓦屋根の民家ですが、一体何の店なのか?
営業しているらしい。
そーっと覗いて見ると、何やら作業している様子が見えます。
お店の人かなー?
意を決してガラスの引き戸を開けてみると、目の前に並ぶ謎の物体。
- 左壁!
- 右壁!
正面!
玄関の上がり口に置かれた台だけでなく壁一面に、針のような物が付いた木の棒が下げられています。
これが「エギ」?!
一瞬たじろいでいると、ご主人と思しき人から「あんたはイカ釣るね?」と聞かれました。
どうやらエギとはイカを釣る道具らしい。
取材させてほしいとお願いすると、身支度をされて戻ってこられました。さっそく、店の主である新城正雄さんからお話をお伺いしましょう。
にこやかなご主人。
エギとは何か?
この「エギ」とはイカを釣るための疑似餌です。調べたら、漢字で「餌木」と書くようです。
新城さんが作るエギは「キーギ(木エギ)」で、裸エギとカラフルな布を被せた布エギがあります。
不自然なカラーリングも、海中では良いんだはずね。
店舗兼自宅の壁に所狭しと掛けられたエギは、何と2000本!
一つ一つに材料を切り出した場所を示す「イソ五」や「五七三―五」といった文字が白字で書かれていて、新城さんにしかわからない暗号のようになっています。
名前がついた作品。
材料の木材を焼いて、一晩水につけて、小刀で削ると、木の表面に光沢が出るとのこと。
「木によって金色の光沢が出るものと銀色に光るものがあって、明るさで使い分ける。金色に光るエギは月明かりが明るい夜に、銀色のエギは曇り空で暗い時によく釣れるよ。」とは本人の談。
素人の眼ではよくわかりませんが・・・。
新城さんのエギの特徴は、針を付ける尾の部分が太いこと。
エビの形をしている。
針の重さで沈みがちな尾に浮力を持たせることで、水中で水平姿勢を保ちます。顔の下側にある鉛のオモリは、エギの沈む角度の調節に関係しています。
「今はもう鉛が販売中止になったから、昔の水道管を鉄工所に持っていって溶かしてもらって使ってるさ。」
これが特注の鉛の板
「今は一日2本作るのが精一杯だな。作ったら必ず自分で試している。水に入れた時に45度の角度で沈んで、鼻糸を持ちあげると水面にまっすぐ浮くエギが「合格」だよ。」
入口の台に並べられている新しいエギは、実際の海で引き試しする前の物で、1本1000円。壁に掛かっているエギは、ちゃんとイカが釣れたテスト済みで1本2000円で販売しています。
1000円のエギコーナー。
お買い得価格なのか、相場がわかりません。
水深3mくらいのリーフ内で使い、イカ以外にもタコや魚もかかることがあるそうです。見せてくれた写真では、かなり大物が釣れていました。
こんなイカ釣ってみたい。
7斤くらいって言われたけど、1斤600gとして、4.2kgということでしょうか。
それがどれくらい大物なのかも判断がつかないド素人の私が取材して、本当によかったのだろうかと心配になってきました。
この竿で釣るんだよね?
平たいエギは深い海用で、主にアカイカが釣れるそうです。
これは何の形なのかな?
さらにお話を伺ってみました
— いつからエギを作るようになったんですか?
元々はここで玄米(飲料)やバヤリース、ウイスキーなどを売っていたけど、年をとってから家族が心配して、どうしても辞めてくれって頼むから、2,3年前に店を辞めたわけさ。
それから、若い頃から趣味で作っていたエギを売るようになったんだけどね。
エギでイカを釣るのは、昔カツオ釣り漁船で八重山に来ていた鹿児島の人が、やり始めたみたいよ。自分は登野城の出身だけど、小学生4,5年生のころ西表島の白浜に住んでいて、南海炭鉱の技師からエギの作り方を教わったさ。
17歳の時に終戦になってからは、山からイヌマキなどの木を切ってきて、売っていたよ。当時はアメリカの占領下の琉球政府の時代で、立ち入りが制限されてたけど、申請したら山から木を切っていいと許可が出て、数人で山の深いところまで寝泊りしながら行って、木を切って川から流して運んだよ。
-(失礼ですが)売れてるんですか?
新聞とか、JTAの機内誌で紹介されてから、県外からの注文も増えてるよ。電話で注文を受けて、使う時間とか聞いてから合った物を送ってるよ。今も郵便局の人が(発送する商品を)取りに来ていたさ。
やはり、手作りのエギは、玄人ウケするようですね。
最後に名刺をいただくと、何と、実は三線の野村流古典音楽保存会八重山支部顧問と八重山古典音楽安室流保存会教師師範の肩書きをお持ちでした。
何か、スゴく芸の振り幅が広い方です。
せっかくなので、子どもの面倒をみてもらっている旦那へのお土産に、一つエギを買ってていこうかと思いましたが、何を買って良いのか、皆目わからなかったので止めました。
イカ釣りをされる方は、訪ねてみてはいかがでしょうか。エギを選びながら、新城さんの興味深いお話が聴けると思いますよ。
ゲストライター
- AYA
- プロフィール:生まれも育ちも沖縄本島。県民に多い苗字ベスト3入りする苗字だったのに、九州出身の旦那をもったばかりにイチイチ説明が面倒くさい苗字に。殺人事件が起こるドラマが好きでしゃべる機械キャラ萌え。