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アパート大家さんに沖縄の賃貸物件の謎を聞いてみた
沖縄賃貸物件の謎に迫る
僕が新潟県の実家から沖縄住み始めたのは1998年(19歳)のことなんですが、最初に住んだアパートは学生用の10畳ワンルーム(家賃2万7千円・大家さん手渡し)で沖縄に来て一番最初のカルチャーショックはアパートに浴槽が無いことでした。
それから時は流れて大学を卒業した僕は、企業に就職したり、転職したりいろいろあった末
- メゾン七五三
- メゾネットおかっぱ
なぜだか知らないけど変わったアパート名を集めるようなサイトのライターをやっているわけで人生とは分からないもんだなぁとしみじみ思います。
さて、沖縄で暮らすようになって15年余り。沖縄でのアパート暮らしが最初の僕にとっての一人暮らしだったので、いろいろこんなものかなぁと思っていたことが最近「あれ?これって沖縄だけ?」と思うことが増えてきました。
そこで本日はアパートの専門家に沖縄の賃貸物件にまつわる様々な疑問を聞いてみようという企画です。
- ボーダーインクより発刊の「あなたも沖縄でアパート大家さん!」
- 著者の仲村渠俊信さん。
今回お話をうかがったのは『あなたも沖縄でアパート大家さん!』という著書を書かれている仲村渠俊信(なかんだかり としのぶ)さん。以前は普通に勤め人だったのですが、あるとき中古アパートの購入を決意。今では6棟の中古アパートを所有しているのだとか。
それでは沖縄の賃貸物件にまつわる謎を次項から詳らかにしていきましょう。
沖縄のアパート、珍名の謎
- 本日は宜しくお願いします。
まず、早速なんですが沖縄のアパートって変わった名前が多い気がするんですが何か理由があるんでしょうか?
仲村渠さんが顔出しNGなのでこんな感じの写真です。
ああ、アパートの名前ね。具体的に全部知ってるわけじゃないけど僕の知っている範囲では棟数を持っていればいるほど、名前にはこだわらないですよ。僕も1棟目の時は購入したアパートの名前を変えたけれど、2棟目からはそのままだよ。割といい加減に付けてる人もいるんじゃないかなぁ。
逆もあるかもしれないね。ひと財産作ったという思い入れがあって、アパート名におじいちゃん、おばあちゃんの名前をつけたり、考え抜いた末に自分の思い入れのあるものを名前につけたけどそれが端から見たら変わって見えるみたいなケースもあるかもしれない。
DEEokinawaで前に出てきたカメトヨハウス。
これもおばあちゃんの名前なのかもしれない。
アパート名は地名や自分の苗字を入れたものが多いけど、変わった名前でいくと自分の屋号から名前を取ったり、門中(むんちゅう:沖縄でみられる親戚集団)の名前をつけたりしているものもあるね。門中のやつは門中が管理していて収益を門中で分け合っているらしい。
あとは施工している会社がシリーズとして出しているものには名前に一定の法則があったりもするよ。例えば照正組は「シャトレ○○」、沖創建設は「オアシス○○」みたいな感じでね。
沖縄の浴槽・トイレ事情
- 沖縄に来たときに僕が一番最初に驚いたのは浴槽がないアパートが多い事でした。これって一般的なんでしょうか?
うちも浴槽あるけど使わないね(笑)。寒いときに年に2-3回使う程度かな。僕が所有しているアパートにも浴槽はあるけど、みんなあまり使ってないんじゃないかな。
浴槽が無いアパートも持っているけど一切浴槽について苦情をきいたことがないね。「浴槽ないんですか?」って聞かれたこともない。ホームセンターに浴槽が売っているじゃない?沖縄だと必要な人は自分で買うという風習なんじゃないかな。まぁ買ったという人は見たことがないけど(笑)。
そういえばホームセンターでは浴槽が販売されている。
今の新しいアパートなんかは浴槽が付いているところがあるけど多分沖縄的な規格がなくて、セットで買った方が安いんだろうね。
- あとは沖縄のトイレってタイル張りで排水溝が付いているものが一般的な気がしますが、これも理由があるんでしょうか?
僕からしたら水じゃあじゃあ流して掃除したいよね(笑)。内地でよくある排水溝の無いトイレって逆に拭き掃除だけで綺麗になるの?って思うよね。
これはDEEokinawa事務所のトイレ。
- これって沖縄の建物は鉄筋コンクリートが多い事が理由だったりするんでしょうか?
うーん。僕が昔住んでた家はトイレが別棟で木造だったけど、水流してたきがするなぁ。すぐ乾燥するから腐るようなこともないしね。よく分からないけど単純に沖縄と内地の生活習慣の違いかもしれないね。
水道料金の怪
- 僕、沖縄に住んで4回引っ越してるんですが4回目にしてようやく水道代の請求が来るようになったんです。家賃に水道代が含まれる、って沖縄だと一般的なんでしょうか?
家賃に込みってことかな。あまり一般的じゃ無いんじゃないかなぁ。各部屋に水道メーターをつけるとそれもお金がかかるんですよ。だから大家さんが水道代をまとめて払って、で家賃に含めちゃおうという考えがあったんだよね。
で、均等割だとそれが不平等だと。だから水道の子メータというのがあってですね。僕らはそうしてるんだけど各戸に水道の子メーターというやつを取り付けて毎月使った分だけ請求するんですよ。で、まとめて払うのは僕が払うわけです。
今は多分あまりそういうアパートはないんじゃないのかな。
- きっと僕が住んでいたアパートが古かったんでしょうね…。
- 水道回りでもう一点。以前DEEの編集会議で下のような芸術的な配水管が話題になったことがあるんです。これって何か理由があるんですか?
基盤の様に緻密に張り巡らされた水道管。ライター犬尾さん提供。
あーこれね。これはメーターを調べやすくするためだよ。普通は水道のメーターは各階の各戸にあるものだけど、それを全部1箇所に集めて調べやすくした形だね。
でも実際は昔の水道管は鉄だから、長ければ長いほど詰まったり故障するんだよね。誰かが考えたんだろうけど、メンテナンスの方が高く付くから普及しなかったんだろうな。
昔はこれ以外にも自動でメーターを調べる装置もあったんだけど、今は使っている人はほとんどいないんじゃないかな?まだ現役で動いてるやつもあるらしいんだけど。
沖縄のアパートには駐車場とクーラーが必須
- 沖縄のアパートでこれは無いとダメ!ってものはありますか?
基本的にエアコンは一部屋一台くらいの勢いで付けてるね。暑いからね。おそらくエアコンはほぼ必ずついてる。
あとは駐車場が必須だよね。全戸は必要無いけど、ある程度駐車場がないと厳しいんじゃないかな。昔アパートでそこそこ安くて、よい物件があってあったんだけど駐車場が無かったから買わなかったなぁ。隣の土地に駐車場があったんだけど、その土地がどうなるか分からないから怖いよね。
- お話にエアコンが出てきたんですけど、沖縄のエアコン室外機ってヤモリ防止みたいなものがついているじゃないですか。実際にヤモリが巻き込まれて故障するみたいな話ってあるんですか?
ヤモリガード。多分沖縄にしかない室外機の機能。
ああ、ありますよ。5万くらいのエアコンだったけど、ヤモリが入ったって修理費は2万円。もうバカみたいだよね。沖縄はヤモリが多いからね。ちゃんとガードしておいたほうがいいと思うよ。うちに話があったのは2回くらいだけどひょっとしたら入居者が自分で直している可能性もあるから、もっとあるかもしれないね。
水タンク事情
- 沖縄といえば建物全てに水タンクが付いてる印象があるんですが、水事情が改善されつつある今でもアパートには水タンクがついているものなんですか?
一家に一台水タンク。
ありますね。今は沖縄も水事情がよくなったみたいで大規模な断水はないけど、昔は本当に断水が多かったから。大規模な断水は今後はないかもしれないけど、一応怖いから設置してはいる感じなんじゃないかな。
タンクにある水は各戸で使っても1日くらいは保つ量あるんじゃないかな。ああ、でも渇水で断水することはなくなったんだけど、一昨年くらいの大きな台風の時にアパートが断水してしまって苦情が来たね。「なんで台風で断水するんだ!」って。
- そういえば台風の時、ウチも断水したことあります!
原因は停電なんですよ。台風の停電で水タンクに水を上げるポンプが止まってしまって、水タンクに水が貯まらない状態でみんなが水を使い切ってしまうと断水してしまうんだよね。本来はそんなこと滅多にないんだけど一昨年の台風は3日くらい停電が続いたから…。あれ以来台風の前にはポストに「水を確保しておいて」って投函するようにしているよ。
台風と大家さん
- 先ほど台風の話がでましたけど台風の被害は大家さんにとって深刻なんじゃないですか?
他はどうなのか分からないけど、うちは保険に入ってるから何あれば全部保障の範囲内だよ。入居している人達にも「被害があったら教えてください」という手紙をいれるんだけど、なかなか言ってくれないんだよなぁ。
- 台風の被害ってどんなものがあるんですか?
そんなに大きな被害はないかもしれないね。基本建物が鉄筋コンクリートだからね。一番多いのはベランダの仕切り板が割れることかな。隣のベランダが丸見えだから早く直してくれって言われるんだけど、台風が去った後はどの業者さんもパンク状態で修理に時間がかかったりするから、どのアパートでも仕切り版が割れるのはよくあることなのかもね。
これは僕が住んだ2番目の家である。台風で仕切り板が割れた。
あとは風の勢いでドアがバンッってなって壊れた、というのも聞くね。
一度だけ、台風で停電して水タンクの水がなくなって軽くなったのが原因なのか、水タンクが飛ばされたことはあったよ。屋上から飛ばされて通りの反対側まで飛んでたね。特に何所にもあたらなかったからよかったけど、あれば人や車に当たっていたら…と思うとぞっとするよね。
以前DEEで台風の落とし物特集をやったときの写真。
確かに台風後に水タンクが飛んでることがある。
- 怖いですね…。入居されている方から苦情が来たりもあるんですか?
台風で断水したり停電したときに「水タンクをもうひとつ、屋上につけられないか」「停電の時に自家発電できないのか」って苦情というか要望はあったね。まぁでも自然災害だけはどうにもならんよ。それはみんな分かっているから言えば納得してくれるしね。
- 台風で思い出したんですが、僕一度台風の時に窓ガラスが割れて酷い目に遭ったことがあるんです。あのとき雨戸があれば…!って思ったんですが沖縄のアパートって雨戸がついてないですよね。
昔の木造の家にはあったんだけどね。今の鉄筋コンクリートでアルミサッシの窓にはないね。台風の時にはあったらいいと思うんだけど、普段は使わないからね。そんなにガラスが割れるほどの台風が来ないからなのかなぁ。
あと、内地のアパートの雨戸の役割って防犯がメインなんじゃないかな。沖縄で防犯といえば格子が窓にはついてるよね。
そういえば沖縄の建物にはこれでもか!ってくらい格子がついている
保証人協会と沖縄
- 話は変わるんですけど、沖縄で賃貸物件を借りるときって保証人以外に「保証人協会」みたいなものにも入らないといけないじゃないですか?あれは沖縄だけですか?
いや、そんなことはなくて、全国的に普及しているよ。ただ、沖縄で保証人協会ができたのは全国的に見てもかなり早い段階だったみたいだから、部屋を借りるときは保証人協会の審査を通すってことが一般的に浸透しているよね。
内地では保障会社を通したら保証人はいらないんじゃないかって所もあるらしいんだけど、僕は保証人も付けてもらう。何かあったときに連絡できなくて心配だからね。
- 沖縄は割と早い段階で保証人協会ができたんですね。これって沖縄には家賃の滞納が多かったとかが理由なんでしょうか?
そういうことなのかもしれないね。でも僕が持っている物件で家賃を払ってくれなかったということはあまりないねぇ。支払いが遅れたりはあるけどたいてい払ってくれるよ。
保証人協会の一番大きなメリットは入居前に保証人協会が審査をするんですよ。これが大きい。ちゃんと保証人に電話して所得の確認や本人に支払い能力があるかも調べるので、大家さんは安心だよね。何かあったら家賃も立て替えてくれるんだけど、たいていは話せばなんとかなるから僕は5回くらいしか立て替えてもらったことはないなぁ。
霊的な話
- 最後にお聞きしたいのですがアパートとかの賃貸物件ってたまに霊的な話があったりするじゃないですか、そんな体験はありますか?
うーん(笑)。あまりないんだけど、昔あるアパートを買ったときにその物件に人が住んでいないけど借りられている場所があって。あとから聞いた話だとそこに住んでいる人は部屋で具合が悪くなって入院していたらしい。
結局病院で亡くなったらしいんだけど、あとで身内の方が来て「ちゃんとユタも呼んでお祓いもして、きちっとやりましたからね」って言われて。その時始めて何があったんですか、って聞いて亡くなったことを知ったんだけど。
ユタの話によると亡くなったのは病院だけど、まだ魂が部屋に残っていると言われたらしく「ちゃんと成仏させました」といわれたね。まぁ僕は何も心配してなかったんだけど(笑)。部屋も本人はいないのにしばらく借りていたよ、多分ユタに何か言われたんじゃないのかな。
あとはしきたり的な話で行くと、吉日に引っ越しする家のヒヌカンに塩と味噌をお供えするっていうのがあるらしくて、「入居前だけど塩と味噌を置きに行っていいか」って問い合わせはあったね。でも最近はそういう話も聞かなくなったなぁ。
- なるほど!そんな話もあるんですね!本日はありがとうございました!
沖縄の賃貸物件の謎が明らかになったり、深まったり
というわけで本日は「沖縄の賃貸物件の謎にせまる」と銘打って『あなたも沖縄でアパート大家さん!』の著者である仲村渠俊信のインタビューをお届けしました。
なるほど!と思う話もあり、さらに謎が深まる話もあり、まだまだ沖縄の賃貸物件については奥が深そうです。DEEokinawaの読者の皆様もアパートあるあるみたいなものを編集部に教えてください。また追加で調査をしてみたいと思います。
この本読むとアパート買いたくなる。そんなお金無いけど。
最後にPRですが、ボーダーインク社から発刊されている『あなたも沖縄でアパート大家さん!』は著者の仲村渠さんがアパートの経営についてまとめた本で、沖縄での物件の購入から管理の方法、安定した経営のノウハウなどがわかりやすく解説されています。
最後の方に事例集が載っていて、家賃を滞納された話や、住人が失踪した話、不動産屋さんが手付金を返してくれなかった話などちょっとドキドキするような話も載っています。
本の目次や詳細はこちらからどうぞ。
インタビューに快く応じてくださった仲村渠さん、ありがとうございました!