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農連市場の謎自販機に迫る
沖縄のディープスポットに存在する、さらにディープなアレ
長年に渡って沖縄の台所の役割を果たしてきた農連中央市場。かなり昔から移転の話が持ち上がっては消え、持ち上がっては消え、を繰り返してきたようですが、本当にこの場所からなくなってしまうそうですね。昔から変わらない沖縄の空気を堪能できる大切なスポットなだけに、とても残念です。
木漏れ日射す、ガーブ川沿いの風情ある道。
以前の記事『【復帰40周年特集】農連市場の風景』でもチラッとご紹介しましたが、こちらには有名な自販機があります。それがこちら。
ちょっと分かりづらいんですが、どんな飲み物が出てくるか分からない自販機です。
『?甘い物色々出ます』 50円也。
『お茶色々出ます』 同じく50円也。
私、5年前にこの自販機の遊び心に大興奮し、買ってみたことがあります。
甘いものセレクト。いちごみるく味のQoo。50円でいいのか。
この時、自らが手にしたもの以外に何が出てくるのか気になりつつも、それ以上の必要性を感じなかったためその場を立ち去ったのですが、心の奥底ではずっと何かがくすぶっていたのです。
というわけで今回は、この50円の『甘い物』に一体何が詰まっているのか確かめてみたいと思います。
「自販機さん、これで買えるだけください」
というわけで、
給料日はまだ先のはずなのに、冷たい風が吹きすさぶ我がサイフから、千円札を取り出します。
1,000円で50円の商品を買えるだけ買う・・・つまり、これから甘い飲み物を20本購入するということです。
そして先に言っておきたいことがあるんだ。
私、甘い飲み物は苦手の部類です。
・・・。
・・・ええ、自分でも分かってます。この行為に何の意味もないということをね!!
しかし、人にはやらねばならぬ時があるのです。
- バイバイひでよ・・・
- 運命の第一投目、いきます。
ピッ!ガコン。
ドキドキ・・・。
じゃんっ。
スーパーでたまに見かける、『Ligo』。のグレープ味。
5年前に出てきたものはQooのイチゴミルク、今回は炭酸系。一口に『甘い物』と言っても、自販機の主の舌はだいぶ幅広くカバーしているようですね。
続けていきましょう。
Super Chillのレモンライム味。Super Chill・・・って、どれだけ冷たいんだ。。
- Super Chillのコーラ味
- そしてまたレモンライム
なんだか全部炭酸ですね。主のナウ・マイ・ブームは炭酸なんでしょうか。
とりあえず、炭酸以外を頼む。
残念!またレモンライム!
なんだかこの時点で、この実験の行く末に暗雲が漂ってきました。もしや全部これ系だったりして!?いやいや、20本あるんだから絶対に何か別のものが入っているはずだ!
あれ??
6本購入した段階で、3つある甘い物のうち、早くも一つに売り切れを表す×印が点灯。
ちょっと早いんじゃない?と思いつつ、万が一最後までこのラインナップが続くようであれば、1,000円使い切る前に全部売切れになってくれ・・・という思いが頭を過ぎります。
新たなラインナップ登場。Ligoのオレンジ味。似たような系統ではあっても、初見はやはりテンションあがるあたり、もう完全に感覚がマヒしてます。あぁ・・・。
だいぶ増えてまいりました。。
ほぼ見世物状態の後半戦に突入
農連市場の周辺は、昼間けっこう人通りがあります。こんなアホなことをしていると、いぶかしんで見られるか、後ろ指さされて笑われるかのどちらかです。
怪しい!これは怪しすぎる!!!
引いてみると、確かに笑う側の気持ちが分かるってもんですね。
でも、中には心優しき方もいて、この状況を見てわざわざビニール袋を渡してくださった方もいました。こんな時は本当に、人の優しさが心にしみます。どこかで誰かがバカなことをしていても、その人にきっと優しくしてあげようと、心の中でそっと誓いました。
ギャー!またレモンライムきた!!
だいぶ積んだ。気持ち的にも詰んできた・・・あと、2本。
その時、地元の方と思しきおばぁが不思議そうにこちらにやってきました。
「あら!あんたたち、なにしてる?」
—何が出てくるか分からない自販機から、何が出てくるか確かめてるんです
おばぁはケラケラと笑って、自販機にお金を入れました。
「ちょっといい?お茶が飲みたくてね!」
そう言っておばぁが押したのは、『お茶色々出ます』のボタン。出てきたのは・・・
沖縄のソウルドリンク、さんぴん茶。
やはりか!
私がこの実験でお茶を選択しなかったのは、この結果が予想できていたからです。やはり甘い物にして正解だったか・・・いや、今はもうそんな思いも遠い彼方な感じなんですけど。
ついに、ボタンを20回押しきった
というわけで。
農連市場にある謎自販機、『?甘い物色々出ます』の中身は、こちらとなりました。
●Ligoグレープ味×1缶
●Ligoオレンジ味×3缶
●Super Chill コーラ味×6缶
●Super Chill レモンライム味×10缶
・・・どうしよう・・・5缶くらい買った段階でなんとなく予想してましたが、現実になって欲しいなんて全く思ってなかったんですけど・・。
もう一度言いますが、甘い飲み物は苦手な部類です・・・苦手なんです!!!
しかしそんなことは言ってられない。
破れないように、丈夫なカメラ用リュックを用意してきました。
355ml/本 × 20本 = 約7.1kg
缶とリュック自体の重量を考えると、背中に約8kgの重量を負ったことになります。まるで初期ドラゴ○ボールで悟○とクリ○ンが行った修行ですよ。
あまりの重量に真っ直ぐ歩くことすらできません、慣れるまでは相当危険です。
誰か、この自販機について教えてくれ。
おや。
目の前にちんまりたたずむ食事処が。
太陽も真南より少し傾いた頃合です、ここで食事をしながらちょっと話を聞いてみることにしましょう。
とても笑顔が素敵で優しいおかあさん。
—すみません、あそこにある50円の自販機って、いつから設置されているんですか?
「あれね?もう長いよ、10年くらいかな。」
—あの自販機って有名なんですか?
「そうねー、前川清さんの番組に出てたよ!50円とか60円とかあるでしょ。面白がって、じゃんじゃん買って喜んで帰って行ったよ!これほら、本人がやってるから。」
—本人?
「自販機の前の家があるでしょ?」
自販機同様、年代を感じる建物。
「あの自販機は、その家の主がやってるわけ!自分で買って入れてるから安くしてるの。スーパーなんかで安く買ってくるんじゃないでしょうかね。で、結構色んなのがあるみたいよ」
—お母さんはあの自販機で買うことあるんですか?
「あるよ!安いからね!私だけじゃなくて、この辺の人は買ってるよ!」
そうだったのか。
自販機に入れる商品は企業との契約であれば勝手に補充してくれるから楽ですけど、個人営業なら自己調達という手間が生まれます。その手間をかけてもこの低価格で販売しているのは、地域住民、市場で働く人、はたまた目の前を通りかかった人たちに対する、主さんの好意なんでしょうね。
年季の入った農連市場の自販機には、こんな秘密が隠されていたのでした。
おかあさんはこちらを利用されているとのことだったので、
去り際、一番数の多かったレモンライムを1本差し上げました。
またご飯食べにきますね。
一連の行動で得たものとは
謎自販機の秘密に一歩迫れたのはとても嬉しかったのですが。
今、私の目の前には現実というものが鎮座しております。
今回の件で得られたもの。
それは、薄くたまった5年分のもやもやが晴れたという小さなスッキリ感と、言葉にできない脱力感。そして、なかなか飲めない甘い炭酸飲料17本・・・。
あらかじめ予想していたこととは言え、いざ目の前に突きつけられると、かなりくるものがあります。
どなたか、大量の甘い炭酸飲料の有効活用についてよいアイディアをお持ちの方は、どうかご連絡をお待ちしております。
そして、あの自販機から甘い炭酸以外に出てきたものをご存知の方も、ご一報ください。待ってます。
ゲストライター
- 牧
- いいオトナなのに、未だ少年の心が原動力の三十路過ぎ。『面白いことは骨の髄まで味わいつくす』をモットーに、休日はオモロー求めて沖縄を駆 け巡る。その模様は、「おきなわバカ(仮)」にて、やや毎週末更新中。