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謎の民具「トゥイヌクチ」で椿の油を絞ってみた
謎の民具「トゥイヌクチ」
皆さんは「トゥイヌクチ(鳥の口)」なる民具をご存じでしょうか?楕円型の二枚の木の板からなっていて、溝が掘ってある下の写真のような民具です。
謎の民具「トゥイヌクチ」
これ、沖縄市郷土博物館の収蔵庫に眠っていたものらしいんですが、調べていくうちにこの民具はどうやら「椿の油を絞るための道具」らしいということが明かになりました。
この二枚の板をどのように使って椿の油を絞るのか…?
この謎を解明すべく、沖縄市郷土博物館では聞き取りを行って使い方をリサーチ、さらにはトゥイヌクチのレプリカを作って本当に椿の油が絞れるのかという試みを行うことになりました。
というわけで本日は沖縄市郷土博物館からお誘いを頂いて、この謎の民具トゥイノクチを使って椿の油を絞るまでの様子をお伝えしたいと思います。
椿の油を絞る試みが始まった
3月24日。沖縄市の東南植物楽園の一角をお借りして、実際に椿の油を絞ってみる作業が始まりました。
- 東南植物楽園の
- 一角をお借りしての検証
実験では本物のトゥイヌクチを使う訳にいかないのでこの日のためにトゥイノクチのレプリカが用意されていました。
- レプリカ制作風景
- レプリカ
イスノキ(ユシギー)というかなり固い木でできています。
この企画、色んな所が協力をしてくれたそうで、椿の種は「沖縄椿協会」(そんな団体があるって初耳でした)が倉敷ダムなど各所から10kgも拾ってきてくれたそうです。種類は「ヤブツバキ」というやつで沖縄でも結構生えているのだとか。
椿油を絞る手順としてはまず、この椿の種を細かく砕いていきます。
ムーチー蒸すやつ
そして細かく砕いた椿の種を袋詰めにして蒸します。
椿の実が蒸し上がったら、いよいよトゥイヌクチの出番。園内の木に設置されたトゥイヌクチは溝がある方を2枚合わせてロープで固定されています。
まさにトゥイヌクチ(鳥の口)だ。
蒸し上がった椿の種をトゥイヌクチに挟んで…
てこの原理で椿を絞る
体重をかけることでの板の間に入れた椿から油がしみ出てきて、溝を伝って油が
2,3滴落ちてます。
…落ちてくるハズらしいのですが、全然落ちてきません。なんか暗雲が立ちこめてきました。
試行錯誤
この日各所から結構な人数集まってたので不安がよぎります。
というわけで、そんなに簡単にいかないことが分かった椿の油絞り。ここから試行錯誤が始まります。なんせ手作業で椿の油を絞るという作業は沖縄本島で少なく見積もって70年は行われていないらしく、誰も正確なところがわからないのです。
沖縄椿協会の皆様
まず、木の上に設置していたトゥイヌクチをベンチに設置することに。体重を乗せやすくします。
水も加えてかなり細かく砕いていきます。
椿の実も割と粗めに砕いていたものをより細かくしてみます。
- 学童の子ども達
- 野草の天ぷらが振る舞われた
その間、地元の学童の子ども達が見学に来たり、沖縄山野草の会の皆様が野草の天ぷらを振る舞ったりしてくれました。
試行錯誤を加えること2時間余り…
ついにトゥイノクチを伝ってポタポタと油がしたたり落ちてきました。割と感動的な光景です。
それでも油分は結構少ない。
上の写真の黄色い部分が、椿の油です。絞りたての油はピーナッツのような香ばしい香りが漂います。
調子に乗ってなめてみましたがめちゃくちゃ苦かったです。油分と一緒に種の皮などの不純物など(多分これがめっちゃ苦い)が混じってしまっていて、きちんと分離しないと食用にはできなそう。
その後も黙々と椿を絞り続け…
とれた油と絞りかす
油を取っていったんですが、左の絞りかすに比べて絞り出せた椿油(瓶の中の黄色い部分)はごくごくわずか。7.5kgの椿の種を絞って、とれた油は150gでした。この昔の沖縄でこのトゥイヌクチを使って油を絞っていたとしたら、絞り出した油はかなり貴重なものになりそうです。
まぁそれでも、最初に全然油が出てこなかった状況から考えると割と成功したと言えるんじゃないでしょうか。
割と原始的な方法だった
とれた油を分けてもらった
この椿油、沖縄では髪の毛につけてヘアオイル的な使い方をされていたそうで
TSUBAKI:日本の女性は、もっときれいになれる。
僕も椿油を付けてみました。
結構髪の毛がしっとりした気はしますが、これが正しい使い方なのかちょっとよく分かりません。椿油はまだ余ってるのでちょっと何かにできないか試してみたいと思います。
というわけで謎の民具トゥイヌクチから始まった椿の油を絞ってみるという試み、如何でしたでしょうか?意外に原始的な仕組みの民具でしたが、こうやって実際に試してみるとホントに当時の苦労が忍ばれます。
沖縄での椿の利用に関する情報はほとんど残っていないらしく、このトゥイヌクチについて情報をお持ちの読者の方がいらっしゃったら是非編集部宛に情報を頂けますと幸いです。