2014.02.25

『カチダイ』とは何なのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
与那国島には『カチダイ』というものがある。これはいったい何なのでしょうか。
kachidai_03.jpg
カチダイとは
kachidai_02.jpg
カジキの刺身につけて

みなさんは『カチダイ』というものをご存知でしょうか?
与那国島でカチダイは、調味料や飲み物として昔から親しまれているそうです。居酒屋ではさしみ醤油と合わせて使われることも。これがほんのり酸っぱくて、甘いさしみ醤油にピッタリ。

なんなんだこれ...

聞くと泡盛の酒粕とのこと。酒造所に行くと分けてもらえるというので行ってみました。

酒造所へ

kachidai_18.jpg

与那国島の名産のひとつといえば、アルコール度数が60度ある花酒と呼ばれる泡盛(度数が高いのでスピリッツ扱い)。
花酒を作っている酒造所は、与那国島に3社あり、その中のひとつ『国境の酒 どなん』でお馴染み、国泉泡盛合名会社にやってきました。工場が移転し新しく大きくなっています。工場では、泡盛やグッズの販売や、工場見学も行っています。

カチダイができるまで

カチダイは泡盛を蒸留したときにできる副産物。泡盛の作り方をおさらいしながら見ていきましょう。

kachidai_11.jpg

1. 蒸米
原料のタイ米をよく洗い、水に浸けて水分を吸収させ、蒸し器に入れて蒸す。

2.製麹
蒸した米に黒麹菌を混ぜ、一定の温度で40時間寝かせる。デンプン質を糖分に変える酵素が作られる。

3.仕込み
成熟した黒麹に水と酵母を加える。これが『もろみ』と呼ばれるもの。もろみをタンクに入れ発酵させる。

4.蒸留
熟成したもろみを蒸留器で蒸留する。最初に出てくる酒のことを『花酒』と呼んでいます。

kachidai_06.jpg
花酒用タンク。香りがスゴい
kachidai_05.jpg
蒸留したての一番搾り花酒

kachidai_12.jpg

できたての花酒は、アルコール度数63度!80度近いものもあるのだとか。
一番搾りを試飲しましたが、あまりに強いお酒なので、のどが焼けるかと思いきや、意外とスーっとしています。このスーっという表現はアルコール消毒した時の感覚と思っていただければわかりやすいかと。個人的には水割りではなく、ちびちびとストレートで飲むのがいいですね。また香りを嗅いでいるだけで酔えるかもしれません。

kachidai_09.jpg

5.貯蔵・熟成 → 瓶詰め・出荷
できあがった花酒や泡盛は、貯蔵タンクで熟成されます。その後、瓶詰めされて出荷されていきます。

蒸留機に残るカチダイ

kachidai_16.jpg

蒸留後の蒸留機に残ったものが『カチダイ』と呼ばれる蒸留粕(酒粕)。何ともいえない泡盛だけの香りではないような。
通常、残ったカチダイは別のタンクに引きこまれ、廃棄業者に引き取られ廃棄されています。

kachidai_13.jpg

色が黒いのは、泡盛は黒麹菌を使っているため。日本酒を醸造してできる酒粕が白いのは米こうじを使うため。

kachidai_14.jpg
できたてのカチダイ。まだ温かい

できたての温かいカチダイ。少しドロッとした口当たりで、酸っぱい。酸味と甘みが混ざりあう、今まで味わったことの無い何とも表現しにくい味。
しかし、今どきカチダイを食すのは年配の方だけで、どなん工場の方や、町で会った人に聞いても「嫌い!」「苦手!」「食べないよー」と話していました。こうしてわざわざ酒造所までやってきてカチダイを貰っていくのは年配の方ぐらい。

なんとか活用方法がないものか?

カチダイを持ち帰ってきた

kachidai_20.jpg

何かに使えるはずと思い、那覇まで持ち帰ってきた『カチダイ』。数日、冷蔵庫で放置しておくと何やら分離してきます。

kachidai_21.jpg
1日目
kachidai_19.jpg
10日目

kachidai_34.jpg

与那国島のおじいおばあの中には、昔からこの上澄みだけ毎日飲んでいる人もいます。そう、これは健康志向から一大ブームになった『もろみ酢』の元。
もろみ酢は、泡盛の酒粕(要するにカチダイ)を圧搾・濾過してできたもの。クエン酸由来の酸っぱさに加え、アミノ酸やビタミン豊富な健康飲料ですよね(酢と付くけど酢ではない)。

与那国島では、もろみ酢が開発されるずっと昔から、飲んだり料理に使うのはもちろんのこと、畑に撒いて土壌をよくしたり、家畜の飼料に混ぜたりしていたそう。しかし、家畜の飼料や土壌調整の肥料も良くなり、使われることが減ってきました。

こんなに栄養豊富なのにもったいない!もっと簡単に日常的に使うことはできないか調理してみました。

カチダイでマース煮

与那国島で、カチダイを魚のマース煮に入れるととても美味しくなると聞いた。島ではカジキがよく釣れるので、カジキのアラ汁などにも使われているという。
しかしマース煮はシンプルな料理だけに難しい。プロに任せよう...。

kachidai_29.jpg
困ったときの『ももたま菜』
kachidai_22.jpg
500mlほど用意。めっちゃ分離してる

kachidai_23.jpg

調理はいつもお世話になっている『ももたま菜』さんへ持ち込みお願いしました。
ここ数日、海が荒れていたため良い魚が売っていなかったということで、今回はグルクンを用意。ちなみにカチダイは初めて見たとのこと。

kachidai_24.jpg
通常通りマース煮を作る
kachidai_25.jpg
途中でカチダイを投入

kachidai_28.jpg
グルクンのカチダイ煮

煮詰まったカチダイはドロッとしたソースに。素のカチダイは酸味が強いですが、温めて煮詰めると甘みが増します。味は違いますがバルサミコ酢的な感じ。
ごはんのおかずより、酒の肴にピッタリ。甘い刺身醤油とも相性抜群です。味噌とも合いそうですね。その他に、ドレッシングやデザートにも使えるかもとのことでした。

カチダイをみそ汁に

マース煮以外に合うと教えてもらったのが、みそ汁や豚汁に加えるということ。

kachidai_35.jpg
普通のみそ汁に入れて煮こむだけ
kachidai_34.jpg
見た目は変わらない

少し酸味があるみそ汁に。みそ汁に合います。気のせいかもしれませんが食欲増進作用があるかもしれません。
いつもより気持ち長めに煮込むと酸味が弱まり(入れただけだと酸っぱい)、味噌の甘さが際立ちます。

沖縄本島では『かしじぇー』に

カチダイは与那国島だけの物なのでしょうか?
泡盛を蒸留したときに残った酒粕。泡盛を作っている酒造所ならあるということですね。呼び名は違いますが沖縄本島にもあります。
本島だと『かしじぇー』と呼ばれています。この『かしじぇー』を使った料理が食べられるところあると聞き行ってきました。

kachidai_33.jpg
首里にある『ほりかわ』
kachidai_30.jpg
咲元酒造のかしじぇーを使用

kachidai_31.jpg
かしじぇーそば 750円

kachidai_32.jpg

かしじぇーが練りこまれた平麺。かしじぇーがスープに溶け出しあの酸味がほんのりと。これは合いますね。
もろみ酢とコーレーグースを混ぜた調味料を入れると味が引き締まってまた美味です。

捨てるなんてもったいない

与那国島では日常的に使われていた『カチダイ』。
とても栄養豊富な物ですが、もろみ酢に加工されている以外はほとんど廃棄されています。酒造所の方も、捨てるのはもったいないけど、使い道がわからないと言っていました。何かいい使い道はないものか。
泡盛造りで必ず出るカチダイ。もっと広まってもいいと思うのですけどね。

酒造所によっては、カチダイ(かしじぇー)を譲ってくれるところもあるので、新たな特産品作りに挑戦してみては!

---------------------------------------
国泉泡盛合名会社
与那国町与那国2087
TEL:0980-87-2315
---------------------------------------

月間ベストワースト記事投票実施中

関連する記事

フォローしたらいいことあるかもよ

DEEokinawaの新着記事や裏話、面白写真などが毎日届くかもしれません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright©DEEokinawa All Rights Reserved.
このウェブサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。すべての著作権はDEEokinawaに帰属します。

ページのトップへ