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【入りにくい店に入ってみた】みえばし
沖縄の街を歩いていて大通りからふらっと路地裏などに入ってみると、営業しているのかいないのかも分からない、ものすごく入りにくい雰囲気のお店に出会うことがあります。
通るたびに気になって興味はあるのに、扉を開けるのにすごく勇気がいるような。
そこにあえて挑戦していくシリーズ、名づけて【入りにくい店に入ってみた】。
第一回:食堂 自流
第二回:カムイラーメン喫茶
第三回:平和食堂
第四回:聚楽苑(じゅらくえん)
第五回:マカビペット店
第六回:お食事の店 ホームラン
第七回:すきやき&おでんハウス 笑
第八回:USレストラン
第九回:宮古島の丼喫茶
第十回:お食事処 栄
第十一回:マイハウス
第十二回:司屋
第十三回:三星レストラン
今回は那覇市久茂地にある「みえばし」に入ってみました。
いったい何のお店なのか
お店は国際通りから少し入ったところ。那覇の中心部では見かけることが少なくなってきた木造2階建て赤瓦の建物。お店の前を通るたび、気になっていたんだけどなかなか入りにくい。
- お肉の店なのか
- 弁当・喫茶の店なのか
店の前には「お弁当」と書かれたのぼり、「お肉の店みえばし」という看板、案内板には「弁当・喫茶の店みえばし」の表示。
大衆食堂なのか
そして店内には「大衆食堂みえばし」の看板が。いろいろな看板を掲げていますが、一体何のお店なんでしょうか。
入ってみた
店内に入るとガラスショーケースとテーブルが置いてあります。お弁当の暖簾がかかっているので、食堂では無くお弁当屋さんのようです。
- お弁当が数種類
- ショーケースの中には揚げ物類
ご主人が当時のお話をいろいろ教えてくれました。
創業は約40年前
創業は約40年前。役所や企業、病院が集まる(現在の沖銀本店裏辺りから一銀通り近くまでは病院が多くあり病院通りと呼ばれていた)美栄橋町に食堂としてオープン。ちなみに当時の行政区画では久茂地町よりも美栄橋町の範囲の方が大きく、現在パレットくもじの一階に入っている郵便局の名前が美栄橋郵便局というのもその名残。
入口にあった「大衆食堂みえばし」の看板は、食堂時代に飲料メーカーからもらったもの。裏表両面あって外に置くタイプだったのだが壊れてしまったので、片面は店内の壁に飾り、もう片面は愛好家が持って行ったそう。
丼もの、そば、うどんなど食堂メニューの名残が今も壁に残っている
- 40年変わらぬ厨房
- お弁当でも出汁取り
食堂だった頃、テーブル席のほか座敷まであった広い店内は30~40名くらい入ることができ、混み合う昼時は皿洗いの手間を簡素化し回転を早くするため、一枚の大皿におかずとご飯を全て乗せて出していたとか。いわゆるワンプレートランチのさきがけ。
当時は深夜0時まで営業、新聞社などのマスコミ、警察など昼夜を問わず働く人たちで夜も賑わっていたそうです。
海洋博の頃
海洋博関連の事業で、工事の業者や役所関連など多くの人々が美栄橋界隈にも滞在。
- 約40年前のナショナル製14インチ白黒テレビ。ブラウン管以前の真空管
- 年代物のラジオは今でも現役。まったく壊れないのだとか
コンビニなどもない当時は、閉店後も「何か食べさせてくれ!」と戸を叩くお客さんのために「おこげしかないけど、それでもいいなら」と提供、お客さんは感謝してお金を払っていったそう。
転機は約20年前
1990年頃になり、まわりには様々な飲食店も増え始め、食堂から肉屋へ転身。周辺の飲食店に肉を卸すようになりました。
精肉店だった頃の名残、アメリカ製の肉挽き器。アメリカ土産でもらったもの
- 昔のレモン絞り器。その名もジュウーサー。アルミ製で軽量
- 食堂時代は豆を炊き、ぜんざいやかき氷も売っていたそうだ。食べてみたかった
外に掲げられていた「お肉の店みえばし」の看板はこの頃のもの。だから「精肉」って書いてあったわけだ。
しかし、次第にスーパーマーケットとの競合が激しくなり、4年程でお肉屋さんからお弁当専門に絞ることに。
そして弁当屋に
その後は弁当店として繁盛を続け、数年前までは6名のスタッフ(男3名女3名)を雇いバイクも4台保有。
この頃の閉店時間は18時だったが、閉店ギリギリの時間まで、かつてから常連だったマスコミや警察、気象台といった24時間稼働の、深夜まで働く人々の夜食となるお弁当をバイクで手分けして届けていたそうです。
食堂時代のカウンターが残る。客席だった場所は作業スペースに
カラー写真のメニューは、常連の気象台勤務の人たちお手製。
「多分、毎回お弁当を食べる度に写真を撮って、全種類たまったので1枚のメニュー表にまとめてくれたんだはずねー。」と。
人気商品マカロニサラダの仕込み中
通常のお弁当は、唐揚げ弁当、チキンフライ弁当、さかなフライ弁当、サバ弁当、シャケ弁当、トンカツ弁当、ポーク玉子弁当、メンチカツ弁当。これらはすべて400円。
その他に、カツ丼や他人丼(牛+卵、豚も可)、タコライスやオムライスなど一部のメニューは、注文弁当として今でも食べることが出来ます。これらも500円から600円。
せっかくなのでカツ丼とお惣菜を注文して持ち帰ることに。
- カツ丼 600円
- マカロニサラダと魚フライ それぞれ200円
カツ丼は、キャベツやにんじん、かまぼこなど、野菜たっぷりが特徴の沖縄のカツ丼。カツが1.5cmくらいの厚みがありボリューム満点。ピリリと胡椒が効いているのも美味です。お弁当のカツ丼らしからぬカツの厚さと量、ご飯もてんこ盛りで大満足できる一品。一つ一つ手作りなのがいいですね。
惣菜のマカロニサラダは隠れた人気商品。アルデンテに茹でられたマカロニは固すぎず柔らかすぎずの丁度いい歯応え。具はニンジンとキュウリ、卵もふんだんに使っています。味付けはマヨネーズにひと手間加えたオリジナル。ほんのり甘酸っぱくバクバク食べてしまいます。魚フライはちょっといい赤魚を使っているとのこと。
惣菜はいくら分と言えば値段に応じて詰めてもらえますよ。
12月いっぱいで閉店です
こうしてご夫婦お二人で切り盛りしてきたお店も、開店から40年を経たこの機に、思い切って今年12月いっぱいでお店をたたむことにしたそうです。
かつては衛生管理の基準が厳しく、現在の久茂地界隈のように屋台で弁当を販売するのはダメでしたが、その後規制が緩和されたり、他方では資本力や営業力を武器に持つ大手企業もお弁当に参入しはじめたりと、時代とともにお弁当業界も様変わり。
「商売は競争や勝負だけじゃなくてね、協力して商売していけたらいいのにね」
ポツリと少し寂しげに言った一言が印象的でした。お店の歴史やご主人の想いがぎゅっと込められている気が。
もっと早く知ることができたら良かったな、と思うお店でした。閉店まであと半月、懐かしい手作り弁当が食べたい方は訪れてみてはいかが?
弁当みえばし
住所 : 那覇市久茂地3丁目6−3
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜日