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豚は鳴き声以外食べられるのか
ラフテーやソーキ、テビチやミミガー、中味汁やイナムドゥチ。
鳴き声以外はすべて食べると言われるほど、沖縄料理には欠かすことができない豚肉。沖縄県の豚肉消費量は本土よりも1.4倍以上なんだそうです。
12月も後半にさしかかり、まもなく冬至(トゥンジー)がやってきます。この日は「トゥンジージューシー(冬至雑炊)」と呼ばれる沖縄の炊き込みご飯を作り、火の神や御先祖様に供え、健康などを祈願します。トゥンジージューシーには豚肉が欠かせません。
ま た、正月料理の定番といえば「お雑煮」を思い浮かべる方がいると思いますが、沖縄ではお雑煮ではなく「中味汁」や「イナムドゥチ」などの汁物を食べること が多いですよね。中味汁は豚の腸などの内蔵をかつおだしなどで、イナムドゥチは豚肉やかまぼこ、しいたけなどを白みそで。やはりどちらも豚肉を欠かすこと ができない料理。
そんな豚肉ですが、普段はスーパーで買っている人が多いのではないでしょうか。
これからの時期、何かと使うことが多い豚肉ですが、本当に鳴き声以外は全て食べることができるのか?知らない部位や豚肉の勉強をすべく、精肉店に伺いました。
町田精肉店
今回お世話になる町田精肉店さんは那覇市の栄町市場にある家族経営の精肉店。
朝9時30分頃に開店、19時くらいまで営業。しかし9時前から常連客が来はじめる。1年でもっとも忙しいのは、12月の28・29・30日。この時期になると、朝夕には行列できるほど。もちろん旧盆、清明も忙しいがその比ではないそうだ。
お父さん(宗順さん)この道37年のベテラン。その昔、今のように事前に食肉センターで大まかに解体し、適当な大きさに分けてから店頭に運ぶわけでは無かった時代は、相当の重さの部位も担いで運んだり、電ノコも無く鉈で解体して腱鞘炎になったり。
色々便利になった今も働くのは大好きで24時間働いているようだと家族も思うくらい。ちなみに娘さんにはマグロ(回遊魚だから)と呼ばれている。
お母さんと娘さんは店頭で接客。お母さんは「何円分」「何々を作りたいけど、どの肉がいいか」「赤身と脂の割合はこれくらいで」などお客さんの細かい要望に合わせてその場でお肉をさばいて売っている。調理や保存のコツなんかも教えてくれるきめ細やかな対応は、昔ながらの商売ならでは。
息子の宗太さんは、肉屋さんになって8年。未だに毎日師匠であるお父さんに怒られる日々だとか…。
それではさっそく解体の様子を見ながら豚肉の部位について勉強していきましょう。
※以下、肉々しい画像が続きます。苦手な方は目を細めて読み進めてください。
ソーキ
今では豚肉はおおまかに頭、胴、尻、脚などの部位を食肉センターで解体されてきます。お店で一頭捌くのに、だいたい30分くらいかかるそう。
包丁は部位ごとに使い分ける。常に研ぎながら
まずはソーキ(あばら)から。胴は半身の状態で届けられています。
- 背骨やアバラ骨の境目に包丁を入れ剥がす
- 感覚で覚えるしかないという職人技
ソーキ大きい。この後、整形(余分な脂を取る)という作業をする
小さな包丁を何度も研ぎながら少しずつ丁寧に剥がしていく感じ。ソーキ(肋骨・あばら・スペアリブ)は肉と脂のバランスが大事。肉を付けすぎても落とし過ぎてもダメなのだが、豚の個体によって脂の付き具合が違うので難しいそう。
Aロース・Bロース
沖縄ではロース肉は、AロースとBロースの2種類に分けられています。
Aロースは、ヒレ肉と並ぶ豚肉の最上部位。脂身は少なくとても柔かい。
Bロースは、いわゆる肩ロースと呼ばれる部位。脂身が多く濃厚な万能食材。
左側の赤身が多く見えているのがBロース、白い脂の膜で覆われているのがロース。Aロースは上(イー・上等って意味?)ロースとも呼ばれていた。これもこの後きれいに整形する。
内地に出荷する時は8mm程度の脂をあえて残して整形し出荷するが、沖縄では脂を取ってある方が人気。
三枚肉
ソーキとロースを外して現れるのが、三枚肉。沖縄そばの具やラフテーなどに使われていますよね。
チラガー・アゴ肉
続いて頭。頭はチラガーとアゴ肉に分けられます。まずはアゴ肉を切り離します。
首側から刃をいれますが、骨も組織も細かい部位なので、傷つけないよう包丁の背を使って慎重に進めていきます。ほぼ骨から剥がしきれたら、ひっくり返すように、頭からアゴ肉を外します。
続いてはチラガーと呼ばれる豚の顔の皮。まず鼻先真ん中に切れ込みを入れます。
チラガーという部位はこういうこと。上半分のみ
チラガーを売る時は、まつ毛があるし硬いので眼の周りを切り取ってあげる。くちびるや鼻先だけ買う人もいるそう。生でもボイルでも受け渡し可。耳毛が生えてるから、耳介らしき所も切り落とす。鼻先も落とす。これでチラガーが完成!顔の半分だったとは知りませんでした。
舌(タン)は根元のほうが脂乗りがよく柔らかい。
アゴ肉は「いつもみたく顎を4つに分けて」という注文で買って行くお客さんもチラホラ。
気になる脳みそですが、捨てることなく売られています。沖縄では、体の調子が悪いとき、同じ部位を食べることがあるそうです。おじぃおばぁの世代は頭痛の時に、脳みそをおつゆにして飲むそう。
目は研究などで使われることもあるので引き取られていくのだとか。
クンチャマー・シリー・メーグーヤー・シリグーヤー
クンチャマーは首肉のこと。この部位だけ欲しい人もいるとか。脂を残して処理した首肉をショルダーベーコンに加工して出すところもある。油みそや煮付け、いりちゃーやシンプルに砂糖しょうゆで煮しめなど。アゴ同様、他の部位とは脂の食感が異なりコリコリしてる。
メーグーヤーはうで肉のこと。グーヤーヌジーと呼ばれています。シリグーヤーはもも肉の辺り。チビジリとも呼ばれます。
その他の部位
途中、刃の形が違う包丁にチェンジ。これは皮と脂を剥ぐのに使うもの。ここで出た脂は飲食店が持っていき、ギョーザのコクだしやラードとして使うんだそう。皮は煮付けに使われることが多い。
店頭で見た心臓はだいたい生体体重100kgぐらいの豚のもの。下茹で処理されたものか売られています。
スライスしてサラダにすると美味だそうだ。ミミガーやキュウリなどの具を、コーレーグース、キムチ、酢味噌、酢醤油等であえる。お祝いの席に。シンプルに塩だけで食すのもアリ。
腎臓はマメと呼ばれている部位。真っ二つに切った断面に見える腎杯らしきものは硬いので切除。これをあえて欲しがる人がいる、これまたマニアな部位の一つ。おつゆや炒め物などに。昔は風邪をひいた時など、シンジムンとしてニンニクと炊いておつゆにして飲んだり。食用以外では研究用に。
尻尾は炒め料理などに。本当は、豚のシッポはくるんとしててかわいいが、今は機械で挟んで切断する際に真っ直ぐになってしまうそう。げんこつは豚骨スープなどの出汁取りに。
鳴き声以外すべて食べられるのか
鳴き声以外は全て食べることができると言われる豚ですが、さすがにそうはいかないみたいです。
捨てる部分はいくつかあります。まずは爪。足先にある爪は切り落としてから店頭に並んでいます。
もうひとつは頭蓋骨。チラガーとアゴ肉、注文があれば脳みそを外した頭蓋骨は業者に引き取られ廃棄されます。
最後にリンパ。もも肉やうで肉付近にあるリンパはキレイに取り除かれます。
血はチーイリチャーに使われ、背骨やげんこつなどは出汁に。脂身はラードに。腸などは中味汁に。
「豚は爪とリンパと鳴き声以外は食べることができる」ということでしょうか。ほぼ鳴き声以外は食べることができますね。
ということで、豚肉についておおまかに紹介しましたが、今回紹介しきれなかった部位もまだまだあります(各部位の名称は地域やお店によって違います。)
お客さんの細かい要望に合わせてその場でお肉をさばいてくれたり、スーパーでは売られていない部位があったり、調理や保存のコツなんかも教えてくれるのは精肉店ならでは。スーパーだけでは知らない世界がありますよ。豚肉のことで困ったら精肉店へ行ってみてはいかがでしょうか。
町田精肉店
栄町公設市場商店街
営業時間:9:30〜19:00頃まで
定休日:日曜・正月