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実録アカウミガメの孵化現場
見ちゃった、とうとう見ちゃった!
沖縄に住んでから、きっといつかは見てやるぞと思っていたものがありました。
これまでにも何回かは挑戦してみたけれど、そのときは見ることができず。
しかしようやく目にすることができたのです。
それがウミガメの孵化(ふか)。
ワラワラワラワラ〜
砂の中からカメが出て来て、海に帰っていくまでの時間はおそらく20分ぐらいの出来事でした。
でもその20分間は興奮しすぎて長いようなあっという間のような不思議な時間だったのです。
人間とウミガメが共存する浜
本島某所にある自然の砂浜。
先月友人が、近くに亀が産卵する浜があるよと連れて行ってくれたのがその砂浜でした。
全長50mほどの砂浜は特に変わったところはない沖縄によくある場所のように思えましたが、砂浜の奥の方にはいくつもの旗が立てられていました。
「海がめ産卵注意」
旗にはウミガメを見守るボランティアの方からの注意書きが書かれていました。
この浜には海で泳いだり、バーベキューにやってくる人も多く、誤って卵を踏んでしまわないように目印を立てているそうです。
ウミガメが産卵にやってくる砂浜に入ってしまって良いのかなとも思いますが、ここは人間がいなければ雑草が多くなってしまってウミガメが海から上がって来れない場所なんだとか。
そんな場所があるんだなという思いとともに、ウミガメの卵があると書かれた旗の前で多くの人が楽しそうに過ごしているのはなんだかとても良い光景に思えました。
ウミガメが産卵してから孵化するまでは53日〜55日。
7月15日に産卵が行なわれたので、孵化は9月6日〜9日。
みんなで大事に見守っていきましょう。
孵化の朝
9月7日の朝。すっかり孵化予定日のことは忘れていたのですが、なんとなくウミガメが産卵したあの浜へ泳ぎに行ってみることにしました。
午前8時。満潮の少し前に浜に到着すると、浜には数人の人が1ヶ所に固まってなにかをじっと見ていました。
なんだろう?と覗いてみると。
生まれとる!
子ガメが生まれていたのです。
砂の中から出てきたのはアカウミガメの子ガメ。アカウミガメは通常50〜100匹単位でワラワラと生まれ一斉に海を目指す習性があるそうです。
しかし外へ出て来てきたのは1匹だけ。
たった1匹なのに力強く浜を歩き、海に入って行きました。
見守り隊の方によると、子ガメが孵化するのは満潮の前後1時間。普通は夜に孵化することが多いけれど、今から一斉に出てくるかもしれない。
すでに卵から出ている子ガメが砂のすぐ下に待機しているので、後は下の方で動き出せば下から突き上げられて、火山が噴火するように子ガメが砂からどんどん出てくるだろうということでした。
丸を書いた部分直径15cmぐらいに子ガメが固まっているそうです。
ときどき砂がモゾモゾと動きます。その度に生まれるのか!?とドキドキします。
しかし残念ながら満潮のピーク時刻を過ぎてからは、モゾモゾと砂が動く間隔が少しずつ長くなり、とうとう動きがなくなりました。
子ガメは波の近づく音で動きはじめ、波が遠ざかる音で動きを止めてしまうそうです。
「どのタイミングで生まれると最も生き残れる可能性が高いのかを知っているんだよ」と見守り隊の方がおっしゃっていました。
ということで、一斉に生まれるのは次の満潮前後ということに。
我慢の時間
それから11時間後の午後7時前に砂浜に戻ると、すでに何人かが子ガメが生まれる穴を囲んでいました。
穴を覗かせてもらうと、1匹の子ガメの頭が砂の中から出ていました。
しかし子ガメはピクリとも動かず。まだその時ではないようです。
そのまま日が暮れて辺りは真っ暗に。
子ガメは敏感だから静かにしよう。人工の光も当ててはいけない。
日が暮れてからは真っ暗な穴を、数人でただただ静かに見つめるだけの不思議な時間が流れました。
じっと見ていても何にも見えないし、音も聞こえませんでした。
何分ぐらいそうしてたかはわかりませんが、見守り隊の人が薄明かりでそっと穴を照らすと。
子ガメが組み体操みたいになっとる!
間近でじっと見ていたはずなのに、物音も気配もなく子ガメが何匹も出ていたのに驚きました。
どうなるの?これからどうなるの!?
しかしそれからまた何分間も組体操のまま子ガメたちはピクリともしないのです。
満潮時刻まではあと30分ぐらいです。朝に教えてもらった「波の音を聞いてタイミングを待っている」状態なんだと思いました。
子アカウミガメの大噴火
あまりの動かなさにしびれを切らし「置物か!」と言ってしまったとき、端の子が手を少しだけピクリと動かしました。
・・・ピクリ。
・・ピクリ。
ピクリピクリ
波が大きくなっていくような感じで周りの子ガメたちも反応しだしました。
そして突然。
全員始動!
長い待ち時間が嘘のように子ガメは一斉に動き出したのです。
砂の中からも後から後から溢れるように子ガメたちが這い出てきます。
こ、これが子アカウミガメの大噴火!
そして生まれた子ガメたちは一目散に海を目指します。
真っ暗な砂浜なので、子ガメたちを踏まないように気をつけながら後を追います。
先頭の子ガメが海に到着。
ザバーン!
子ガメたちは波に翻弄されるように波打ち際を流され、泳ぎ、また流されます。
波と一緒に足下に流される子ガメたちを前に、私たちは一歩でも動くと小さな命を踏んでしまう気がして、ただただその姿を見ていることしかできませんでした。頑張れ、頑張れ。
全ての子ガメが海へ出たのを確認して、子ガメが生まれて来た穴に戻って来てみると、たくさんの小さな足跡だけが砂の上に残っていました。
アカウミガメは1回の産卵で50〜150個程度卵を産むそうです。
約50日後に一斉に孵化して海に出て行き、数々の試練を経て生体になれるのはその中の1匹いるかいないかだとか。そして世界の海を泳いだ後、生まれてから約20年後に潮の匂いを頼りに生まれた浜に産卵に戻ってくるそうです。
※専門家ではないので間違えてたらすみません
子ガメたちのこれからの長い試練を思うと、今日巣立った子ガメたちが1匹でも多く元気でこの浜に帰って来てほしいと願わずにはいられません。どうか達者で。
フライング子ガメの旅立ち
私は午前と午後で2度浜へ行きましたが、午前中から午後の旅立ちまでずっと見守っていた人がいました。
お名前をKunkichiさん。
Kunkichiさんによると最初に1匹フライングで生まれた後に、お昼頃にも数匹フライングで生まれてしまったそうです。
夜は暗くて海の中までは追うことはできませんが、日中だったのでKunkichiさんは海に入った子ガメに泳いでついて行ったそうです。
その写真がこちら。
わぁ!!
干潮に近づき干上がってしまっているところもある海を、子ガメは本能なのか潮の流れに乗ってスイスイ泳ぎ、沖に出たそうです。凄いなぁ。
タイミングさえあえば、こんな一場面を見せてくれる沖縄の自然に改めてシビレた夏の日の出来事でした。