- DEEokinawaトップ
- 特集
- ぷちまあとで初めてのオトーリ
ぷちまあとで初めてのオトーリ
宮古島と大阪を舞台にしたNHK朝の連続ドラマ、『純と愛』が始まりましたね。
心待ちにしていた沖縄ファンも多いはず。私も毎朝の楽しみが増えました。
私たちもつい先日訪れた宮古島。
昼間の別件の取材を終え、なにかDEEネタは無いかと探していたところ、不敵な笑みを浮かべた宮古島に詳しい知人から「なんとも怪しい、いいお店があるよ」との情報が。
・昼はコンビニ、夜はバー
・店名はひらがなで「ぷちまあと」
・ピンク色の電飾看板が目印
・・・濃い。もうその情報だけで濃いです。
これは行かないわけにはいきませんね。
というわけで宮古島の夜の市街地へ繰り出しました。
その店は市街地の外れにあった
宮古島市平良の中心地にある公設市場から海と反対側に向かっててくてく歩き、道があっているか少し不安になってきたあたりで、ようやく暗闇に浮かび上がるピンクの看板が目に飛び込んできました。
(こんびにえんす まっちゃあ ぷちまあと)
うん、噂に違わず怪しい店構え。
ガラス越しに店内をのぞいてみても、薄暗いうえに人影が見えず、営業しているのかどうかさえも怪しい雰囲気。
しかしここは意を決して入店。
自動ドアの感応式メロディが鳴り、カウンター奥の扉から男性がのっそりと現れました。
こじんまりとした店内には、コの字型に並べられた会議室のような机と椅子。
- 周りの棚にはカップ麺類やお菓子、お酒
- 缶詰やレトルトカレー、ちょっとしたお惣菜も
- 冷蔵ケースにはチーズやピザ、漬物など
- そして何故か刺身と馬刺が
ビールやチューハイ、ソフトドリンクなど冷たい飲み物類はこちらの冷蔵ケースにずらりと並んでいます。
・・・で、ここは一体何屋さん?
不思議と一瞬で馴染んでしまう雰囲気
知人からの事前情報で ”飲み物は自分で冷蔵庫からとる” と聞いていたので冷蔵ケースからチューハイを取り出しカウンター席へ。
すると、氷を入れたグラスとちょっとしたおつまみがすっと出てきました。おお。
かりゆしウェア姿が渋い店主の伊波さん。生まれも育ちも宮古島という生粋のみゃーくんちゅです。
この店は6年ほど前から始められたそう。
なんでも同級生たちが夜な夜な飲みに来るので、つまみを用意したり酒の種類を増やしたりしているうちに、いつの間にかお店をやることになっていたんだとか。
昼間は商店として伊波さんのお母様が弁当や惣菜などを売り、夜20時からは伊波さんがバーとして営業しているそう。閉店時間はお客さんが帰るまで。
いろいろ面白いので店内をウロウロしていると、入り口の横にタイムカードが。小さいお店なのに従業員がいっぱいいるんだなあ・・・と思いきや。
なんとこれ、常連さんの出勤簿。
スペースに限りがあるので、最低でも週2回は来て常連に認定されないとタイムカードは作れないそうです。
しかもタイムカード昇格待ちの人が多数いるらしく「うーん、月6回ペースだと落ちちゃうかな。」と伊波さん談。
- 「宮古島まもる隊」「海猿隊」「オレンジ隊」「PAC3隊」
- なかでも気になったのが「バツイチ熟女四天王」
よく見ると名前だけではなく謎の屋号(?)で書かれていたりしますが、これらは特に伊波さんがつけたわけではなく自己申告だそうです。なんとなく、どんな職業の方なのか分かってしまうのがいいですね。
最初は他にお客さんもいなかったのですが、21時を過ぎた頃から続々と常連さんが来店。一気ににぎやかになってきました。なかにはくだんのタイムカードを押している方も。ちょっとうらやましいぞ。
そして店主の伊波さんはけっこうな音楽通。カウンターの奥に置かれた銀色のかたまり、なにかの厨房機器かとおもいきや実はBOSEのスピーカーでした。いい音でいい曲を聞かせてくれるのです。
常連さんから馬刺のお裾わけが。陳列が怪しいのであなどっていましたが意外や(失礼)美味しい!
「これ宮古馬だからね〜」とニヤリ。
※宮古馬は日本在来馬では最も少ない天然記念物として保護されています。
宮古島の話ですっかり常連さんとも話が盛り上がり、ぷちまあとの魅力にどっぷりはまりかけたその時、そっと伊波さんから手渡されたのはこのグラス。
「これって・・・!」
初めてのオトーリ体験
そう、手渡されたのはオトーリグラス。
常連さんとの話の中で、オトーリはまだやったことが無いという私の話を聞いていた伊波さん。
それならば、とオトーリを体験をさせてくれました。
宮古島では居酒屋などでもオトーリ用のピッチャーが出されるのですが、これに予め氷と泡盛と割り水を入れ薄めの水割りを作っておくのです。いちいち割らなくていいので、オトーリの際にはこれがたいへん便利。
まず親となった人が口上を述べます。初めましての人がいる場合は自己紹介でも、お天気の話でもなんでもOK。
そのあとグラスの泡盛を飲み干します。
さきほどのオトーリグラスには、「いぴっちゃ(少し)」「なから(半分)」「ずみ(ちょうどいい)」「やまかさ(たっぷり)」というラインがプリントされており、お酒の弱い人は「いぴっちゃで」など自己申告で調整するのだそうです。
同じグラスを使って、座のメンバー全員に順番に回していきます。
このとき親がお酒をつぐのがルール。
ひととおり回し終えたら親交代。僭越ながら私が親をやらせていただきました。ひととおり口上を述べたら「オトーリ回します!」と宣言。ちなみに口上ではちゃっかり沖縄DEE級読本の宣伝をしておきました。
「まあまあ、どうぞどうぞ。」
そして最後に親に戻ってきたグラスで飲み干して初めてのオトーリ終了です。
伊波さんいわく、「宮古島のオトーリと聞いて単に酒をがぶ飲みするようなイメージが先行しているけれど、本来はその "場" を楽しむための飲み方。酒の量も自分の好みに合わせて調整すればいいし、もちろん一気飲みもしなくていい。ひとつのグラスでお酒をまわすことで、その場にいる全員と目を合わせて話ができる、それがオトーリのいいところだね。」
店の中央に置かれた机と椅子がコの字型に配置されているのも「これならお客さん同士、顔と顔を見合わせて話ができるから」との配慮から。「ここではみんな昼間の職業を忘れて、ただの人間対人間として、寛いでいくんだよ。」
- 伊波さん秘蔵の与那国の花酒が登場。60度なので火がつきます。
- 強いけど古酒なのでまろやかで美味い!
オトーリをまわし終わると、みんな仲良くなってこの笑顔。
いやーーーーー初めてのオトーリ、初めてのぷちまあと、めちゃくちゃ楽しかったです!
伊波さんの粋な計らいに感謝です。
ちなみに「でぃ〜」は宮古の方言では「てぃーすっす」と言うそうですよ。
ちなみに昼のぷちまあとは
翌朝、ぷちまあとの昼の顔を見にあらためて訪れてみました。
夜に比べると怪しさは半減するけど、なんかクリーニング屋さんっぽい。
建物向かって左側の外階段を使って上がれる2階は広いワンフロアになっており、「ぷちまあとII(ツー)」として団体さん用の貸切カラオケルームになっているそう。次回は是非のぞいてみたいと思います。
昨日オトーリをまわしたあのカウンターでは美味しそうなお弁当が売られていました。
ちなみに昨夜来ていた常連、イケメン・マックさんのタイムカードをちらりとチェックしてみると、退勤(?)時刻はなんと4:31。遅ッ。
宮古島のディープな夜を体験したかったら、是非ぷちまあとへ。
めくるめく世界が待っているかもしれないし、待っていないかもしれません。