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【ゆーふるやー探訪記】中乃湯
湯船につかる文化が無いことで有名なここ沖縄にも、「ゆーふるやー」と呼ばれる銭湯が存在する。
この沖縄の銭湯、本土の銭湯と比べてみるとひと味もふた味もちがう。
10年ほど前、私が移住前に沖縄貧乏旅行で安宿に泊まっていたときに初めて銭湯を利用したのだが、本当にカルチャーショックを受けた。同行の友人と「これはすごい」「ほんとうにすごい」「他の銭湯も行ってみよう」と興奮しきりだっ た。
ピーク時は県内に300軒以上の銭湯があったそうだが、一般家庭への浴室の普及による客数現象や道路拡張による立ち退きなどにより次々と廃業し、現在那覇 市に2軒、沖縄市に1軒が残るのみとなった。本当に残念である。
沖縄の貴重な文化遺産ともいえる「ゆーふるやー」の記録をなんとか残しておきたい!
そんな想いで、県内の銭湯を取材して巡りたいと思う。
第一回「ときわ湯」(2009年10月閉店)、第二回「旭湯」(2011年5月閉店)、第三回「日の出湯」に続き、今回は沖縄市の「中乃湯」をご紹介。
2011年現在、沖縄県内で営業している銭湯は「日の出湯」「中乃湯」の二軒のみ。
ゆーふるやー探訪もこれで最後となってしまうのが寂しい限りである。
地元おばぁたちの社交場
中乃湯は沖縄市を走る国道330号線、安慶田交差点を南向けに曲ってすぐのところにあります。
コンクリづくりの真っ白な建物と、壁に直接書かれた「中乃湯」の文字が目印。
入り口やベンチに塗られた水色のペンキとのコントラストがかわいらしい。
全国紙にも取材されたことがあるそう。2年前の2009年で、既に残り4軒だったのですね。
入浴料は大人350円・中人150円・小人100円。
燃料費の高騰による値上げに関するお詫びの貼り紙も。いえいえ、じゅうぶん安いです。
こちらが店主の仲村シゲさん。
目がとてもきれいで上品な雰囲気の、沖縄のアンマーです。
のれんをくぐると、昔使われていたであろう番台の名残が。
飾られているのはお孫さんの写真。
いざ中へ
ここ『中乃湯』も清く正しい沖縄銭湯スタイル。脱衣所と浴場の仕切りは無し。
しかし、天井が高く窓も大きいので湿気がこもってジメジメ、ということはまったくありません。
洗い場の中央に位置する楕円形のかわいらしい池。
ロッカーも入り口と同じく水色にペイントされています。扉はあるけど鍵は無いので貴重品は番台に・・・というより、ここに貴重品を持ってくるのは野暮ってもんです。仕切りが無いのでいつでも浴場から見えますしね。
以前訪ねた那覇の日の出湯では、水とお湯が洗面台でミックスされるタイプでしたが、こちらはひとつにつながったホースでミックスされるタイプ。これはこれでけっこう使いやすいです。お湯の蛇口はけっこう熱いのでご注意されたし。
時折、左奥の細長い扉(おそらく外にボイラーがある)がぱかっと開いて「お湯どんなねー?」とシゲさんが顔をのぞかせます。
「大丈夫よ〜」と応える常連のおばぁたち。
お湯はうすい緑色。
中の湯のお湯は地下水をボーリングして汲み上げているそうで、なんとこれがれっきとした温泉。
お湯をさわってみると、とぅるとぅるしています。お肌によさそう。
入浴者心得。
洗濯に関する注意書きはやはりここでも。
ちなみにこれまでのゆーふるやー取材ではいつもほぼ貸切状態だったため気兼ねなく写真が撮れたのですが、今回は時間帯(夕方)もあってか5〜6名の先客が。
まぁそのうちあがるだろう、と私もゆっくりお風呂に入りながら待つことにしたのですが、まぁ、おばぁたちのお風呂の長いこと長いこと。
ユンタクしつつ、からだを洗いつつ、髪を洗いつつ、湯船につかりつつ、ユンタクしつつ、またからだを洗いつつ、垢をこすりつつ、湯船につかりつつ・・・。
のぼせるかと思いました。
でもこうして足しげく通ってきてくれるおばぁたちがいるからこそ、中乃湯も元気に営業を続けていけるのでしょうね。
お風呂上りのゆんたくがまた楽し
お風呂からあがって、外のベンチでユンタクしていたシゲさんと常連さんに混じって少しお話を伺ってみました。
「え、ここ?そうねー、もう40年あまりなるかねー。」
中乃湯はシゲさんが店主をつとめてから40年、ご主人がやっていた時代から数えるともう50年あまりの営業。
この商売で息子さんを大学まで行かせたそう。
現在は宜野湾に住む息子さん、毎週末になると掃除を手伝いに帰ってくるそうです。孝行息子!
常連さんA「ここのお湯つかったらよ、お肌ツルツルーなるさ。お湯がいいからみんな通ってくるんだよ。」
常連さんB「杖ついた人も元気なって歩きよるさー。」
たしかにみなさん若々しくてお肌ツルツル。
あと、膝の痛みにはヒアルロン酸を注射するといいとか、膝に溜まった水を抜くのはくせになるからやめたほうがいいとか・・・。常連さんたちの話を聞いているうちに、妙に中高年の膝事情に詳しくなってしまいました。
入浴前後、ベンチに座ってシゲさんを囲んでユンタク。きっとこれが常連さんたちの元気の源であり、まちの社交場としての中乃湯の役割なのでしょうね。
地元の方たちのお話を聴きながら外のベンチで飲む霧ティー(一部の学生たちは「霧の紅茶」のことをそう呼ぶらしい...)の美味しいこと美味しいこと。県外出身の私には方言が聞き取れないこともあり、どこか海外のアジアの国に来てしまったかのような錯覚に陥りました。
「またいらっしゃいね!」
はい、是非また来ますとも!
銭湯の入り口脇にあるシゲさんの事務所。年代物っぽいミシンが渋いです。
これから沖縄にも短い冬が訪れます。
中乃湯でゆったり温泉につかって日頃の疲れを癒し、シゲさんや常連さんとの楽しいユンタクで元気をチャージしに行ってみてはいかがでしょうか。
中乃湯
住所:沖縄県沖縄市安慶田1
定休日:木曜・日曜
営業時間:15:00〜21:30
料金:大人(12歳以上)350円/中人(6歳以上)250円/小人(6歳以下)100円
※2014年3月13日現在の情報です