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中身汁に一番大事な「胡椒」とは何なのか
中身汁に一番大事な「胡椒」とは何なのか…タイトルで困惑された方も居ると思います。ちょっと意味が分からないと思うので順を追って説明させて下さい。
月刊沖縄社から1966年に発行された田島清郷著の『琉球料理』という本があります。『沖縄大百科事典』によればこの『琉球料理』という本は琉球料理についてまとめた最初の本だということで、様々な琉球料理の作り方がまとめられているのです。
なかなか内容も興味深くて、豚の脳を使った「脳天ぷら」とか、舌を使った「舌の生炒り」といった今では見たこともない料理から豆腐チャンプルーのような大衆料理まで幅広い内容が収録されています。
そこに「中味の吸物」という料理が掲載されています。これは今でもおなじみ中身汁のことなのですが、そこに気になる記述があるのです。
(「琉球料理」月刊沖縄社 1966年 田島清郷著)
現代における中身汁の薬味といえば生姜が一般的な気がするのですが、このレシピでは「胡椒」が薬味として使われており、生姜は胡椒の代用として使われていた、というニュアンスです。しかも「一番大事」とかかれているのでかなり重要なポイントだったのではないでしょうか。
「胡椒」ってあのコショウ?
中身汁の薬味の「胡椒」はピパーツなのか
さて、中身汁に胡椒という組み合わせにちょっとびっくりしましたが、沖縄では主に八重山でピバーツ(ヒハツモドキ)といわれる香辛料が存在します。
ここでいう「胡椒」とはピパーツである説が濃厚な気がします。
それを踏まえて市販の中身汁を見てみると…
裏の説明書きに「ヒハチまはたおろし生姜、きざみねぎを添えてお召し上がり下さい」という文字が。やはり『琉球料理』にかかれた「胡椒」とはピパーツのことで間違い無さそうです。
…と思ったのですが、同じ「琉球料理」の「血イリチー」のレシピには「胡椒」ではなく「ヒハツ」と材料が記載されているのを見つけてしまいました。ということはピバーチと胡椒は別物ということでしょうか?だんだん分からなくなってきました。
こうなったら実際に試してみよう
というわけで、いつもの流れです。中身汁を用意しました。
用意した胡椒はピバーツ、ホワイトペッパー、ブラックペッパーの三種類です。中身汁の胡椒とは何なのでしょうか。
ピパーツ
まずはピパーツ。
ピパーツは味はコショウっぽいのですが、独特な甘い匂いがあります。いつも何かに似てると思うのですが、あれだ。松茸のお吸い物の匂いです。
多分本命のピパーツ。中身汁に入れて食べてみましょう。
…?正直なところこれが薬味として成立してるのか分かりません。なんか全然味がしないのです。もう僕の中で生姜が中身汁の薬味として確立しているからなのか、ピパーツの量が少なかったのか、思ったような変化はありませんでした。
ホワイトペッパー
続いてはホワイトペッパー。目玉焼きとかラーメンとかで使うイメージです。
さて、ホワイトペッパーは中身汁に…
合う…!
これ、全然ノーマークだったのですがすごく合います。中身汁って鰹ベースの出汁に中身が入ってる感じなんですが、カツオベースの出汁にホワイトペッパーって魚介ラーメンにコショウをいれた状態を想像していただければ。いつもの中身汁とは違う、全く別の味ですが、これはこれでうまい…!
ブラックペッパー
ではブラックペッパーはどうでしょうか。ちなみにブラックペッパーとホワイトペッパーは同じコショウの実だそうで、ホワイトペッパーは完熟した実、ブラックペッパーは完熟前の実を使っているらしいです。
さて、見た目はピパーツに似た感じになりましたが、どうでしょうか。
微妙。これも薬味として成立しているかかなり微妙なラインです。最後に汁を飲み干す時にちょっとこれはアリかもしれない…!という感じ。
ホワイトペッパーがうまい
というわけで、1966年に発行された琉球料理の草分け本から中身汁の薬味のコショウは何なのかを調べていきましたが、結局のところホワイトペッパーが一番中身汁に合いました。これ、ぜひ試してみてください。そして多分書かれている「胡椒」はピパーツのことだと思います。なんとなく。
そんなにピパーツが中身汁に合うとは思わなかったのですが、冒頭の引用を見ると胡椒は「擂鉢で細かく粉にする」と記載されています。それでいくと用意したピパーツ、ブラックペッパーはやや粗挽きなのでもっと粉にしたら結果は違ったかもしれません。
それにしても中身汁の薬味はいったいいつから胡椒から生姜を使うことが一般的になったんでしょうか。僕の周りで話を聞いた限りでは生姜以外に中身汁の薬味を使うよ、という人を見たことがないのですが、他の薬味で食べているよ!という方がいらっしゃったら編集部にご一報頂けましたら幸いです。
本日は以上です。