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みんなきっとウミガメを好きになる!ウミガメ勉強会@黒島研究所
以前、DEEokinawaでは黒島にあるウミガメの研究機関、黒島研究所を紹介しましたね。
この研究所では、年に数十回、特別に開催される『ウミガメ勉強会』なる、ウミガメ放流イベントがあります。親子やカップルにとても人気のあるイベントのようですが、当然一人でだって参加できます。
去る年末年始は黒島に滞在していたため、勉強会の様子をリポートしたいと思います。
DEEでは2度目ましての、黒島研究所
研究所の建物は築50年以上と、登録文化財級の年齢。それと同じく、勉強会も歴史あるものだろうと、所長の若月さんにお話をうかがってみました。
そもそも勉強会が始まったきっかけとは
−この勉強会っていつから始まったんですか。
2008年のリーマン・ショックで、日本中景気が悪くなったでしょ。八重山の観光産業も、この時壊滅的に打撃を受けたんだよ。その後2011年3月に震災があって、その月はお客さんが全くこなかった。どうしたもんかと頭を悩ませてたんだけど、たまたまコーラルウェイ(JAL系列沖縄路線の機内誌)に研究所を紹介してもらう機会が出来て、その時に勉強会を提案したわけ。
−えっ!?かなり最近なんですね。で、コーラルウェイの反響はどうだったんですか。
うん、劇的に客足が回復した(笑)
−良企画と広報媒体の合わせ技ですね〜。勉強会はいつ開催されているんですか。
春休み、夏休み、冬休みの、学生が長期休暇に入る時期だよ。最近は船会社からの提案で、秋のシルバーウィークもやるようになった。
ユメゴンドウの骨格標本の真下で行われるインタビュー・・・
−2年と少しほど続けてみて、主催としてはどうなんでしょうか。
お客さんは楽しい。僕らは運営費が入る。放流に使うカメはお金を払って漁師さんに捕ってきてもらってる。ほら、みんな幸せになれる!だからとても楽しい!それに、例えば高齢の方なんか、これまではこなかった層が足を運んでくれるようになったよ。
−(ええ話やん・・)勉強会の参加人数はどれくらいなんでしょうか。
日によって違うね〜。最大で60人の時もあったし、1人での開催実績もあるよ!(笑)だから安心して来てもらいたいね。
−ところで・・・
若月所長の手にあるものは
−なんでオール持って喋ってるんですか?
ウミガメのヒレをオールに例えるんだけど、今はオールを知らない子どもも多くて。だからこうして見せながら教えてるんだよ。
ほらほら、勉強会始まる!
−は、はい!ありがとうございました!
勉強会も、まずは座学から
本日は大盛況のようで、小さな島の研究所内にひしめく参加者。
まずは所長から、受付で渡された封筒の中身の説明があります。
説明を受けてびっくり。同封のランチ券とハガキはアオウミガメの糞で作られているそうですよ!
「臭わないから大丈夫!」
と言われたものの、以前こちらでもらったハガキは、控えめに言ってもかなり強い海の香りがしました。好きな人にこれを送って愛を告白したならば、100%恋破れてしまうだろうと強く思った記憶があります。
ランチ券は、黒島内のカフェや食堂で食事ができる引き換え券。
「ウミガメのウンチで作ったウンチ券・・・もとい、ランチ券だよ〜」
この所長、ちょっとアッチ系かもしれない。
所長「ウミガメが産卵する場所はどこだ?」
??「浜だー!」
というわけで、ウミガメの説明は職員の浜田さんにバトンタッチ。
日本で産卵するウミガメは3種類いるそうですが、見分け方は以下の通り。
- アオウミガメ:頭が小さい
- タイマイ:クチバシがとがっている
アカウミガメ:頭が大きい
・・・比較対象がないと、初心者にはちょっと難しいかもしれません。
ウミガメより、ウミガメ漁を行う漁師の方が絶滅危惧種であることや、陸ガメとウミガメの見分け方の説明があった後、衣装ケースに運ばれて何かがやってきました。
アオウミガメの子どもがわんさか!!
参加者に子ガメが配布され、細かくウミガメの体を観察したり、写真撮影をすることができます。
無表情でヒレをパタパタ、ピッタンピッタンさせるその姿に、会場は興奮のるつぼ。
「きゃ〜〜〜!!」
「かわいーーー!!」
主に女性客からあがる黄色い声。
私は自撮りで記念撮影に挑んでみたんですが、ブレブレでした・・・スタッフに頼めばよかった。
存分にカメの体を堪能したところで、座学が終了。放流するウミガメをみんなで選びに外へ行きましょう!
放流されるカメとの激しい攻防戦を乗り越えろ
外にあるウミガメプール
ここには漁師さんに捕えられた、放流用のウミガメがユラユラと10匹ほど泳いでいます。
いるのは主にアオウミガメですが、サイズはピンキリ。
浜田さん「みなさんで、放流用のウミガメを決めてくださいね!関西人は大きいカメを選びたがるみたいですけど、今日いらっしゃいますか?」
くすくすと漏れる笑い声。
しばらくはみなプールを凝視するものの、やがて誰かが必ず口を開きます。
「あの子がいい!」
そうすると、職員が太いかぎ針の付いた棒でカメを手繰り寄せ、プールから引き揚げます。
よっこらせ〜い!
まぁサイズがそれなりであれば事は穏便に済むんですけどね。
選ばれたカメがデカイと、捕獲自体もちょっとした見世物へと変貌をとげます。
所長「おまえら!飛び込んで捕まえてこい!」
うわ、所長ってば、スパルタ!!
一瞬目を疑いましたが、実はこの光景は珍しくなかったりするのです。
時には、
やり切った感のドヤ顔
参加者のお父さんが、自ら捕まえに飛び込んだり。
プールに入って自ら捕獲したい方は、巨大なカメを選ぶとよいでしょう!
放流前は、ウミガメの計測と記念撮影タイム
ウミガメを無事捕獲し終わったら、屋外のスぺ—スでウミガメをあれこれ計測しましょう。
ノギスという道具で、ウミガメの甲羅の長さを、縦と横、両方計測します。
と、その前に。
今回放流するウミガメのデータを、手書きで記入できる手拭いが販売されています!勉強会をさらに楽しくし、思い出を持ち帰りたいのであれば、事前にこの手拭いを買っておくとよいでしょう。
参加者が計測できるので、やってみたい方は勢いよく手を挙げるべし!
浜田さん「はい、記念撮影は前のカメラをしっかり見てね〜。終わったら、カメラじゃなくてカメを見てしっかり測ってくださいね〜。」
引き続き、体重の測定をば。
ヒレで激しく抵抗するウミガメ
うん、重さで腰が壊れそう。
ここはお父さんが積極的に手を挙げてください。
そして、ウミガメは海へと還って・・・?
甲羅のサイズと体重、ウミガメに取り付けられているタグの番号を全て記録し、グループごとの記念撮影を終えたら、いよいよウミガメの放流に向かいます。
重い重いウミガメは、究極のエコカーことリヤカーに載せられ、ドナドナされる。
緑の小道を抜けて
海に出た
さて、いよいよウミガメを砂浜に解き放ちます!!
バイバイ、元気でね
・・・。
・・・・・。
なんというか。
はよ行け!
5分ほど経過しても、ほとんど前進しないウミガメ。
捕獲されて放流まで時間が経つと、少し野生が薄れて海に還ろうという本能が失せてしまうんじゃないかというのは研究所の見解ですが、それにしても危機意識が低い。
最後の最後まで、スタッフにお世話になるウミガメ
大丈夫かな・・・このコ、これから野生で生きていけるかな・・・。
今回は砂浜に置かれ、海に入り見えなくなるまで10分以上かかりました。
しかし、1年ほど前に勉強会で放流したカメは、『陸上は微塵も惜しまぬ』とばかりに10秒かからず視界から消え失せました。
カメにも個性があるってことですね。
ともあれ、これから広い広い大洋で天寿を全うできるように、頑張って生き抜いてね。
放流会を終えて
ウミガメの放流をしている団体や機関は、日本中にあります。
しかし、黒島研究所の勉強会に参加すると、どこかで放流したウミガメが見つかった際に、希望者に連絡がいくという素晴らしいシステムがあるのです!
ウミガメが漁師の網にかかったり、浜に打ちあがったりした時、見つけた人が足に付いているタグを見て近所の水族館等に連絡すれば、研究所から参加者に電話がくるそうですよ。まぁ、何年後か分からないし、連絡がこない可能性だってあるわけですが。
とは言え、これは黒島研究所の勉強会に参加した人だけの特権ですね~。
気になる次回の放流会の日程ですが!
インタビュー中に決まりました(笑)、3月28日から4月5日です。
世の学生は春休み、しかし社会人にとっては年度末と始めの最も苦しい時期。そうはいいつつも、機会があれば勉強会に足を運んでみてはいかがでしょうか?
研究所のみなさん、お世話になりました〜!
明日も、黒島研究所のお話です。
取材協力:
NPO法人日本ウミガメ協議会附属黒島研究所
[お問い合わせ]Tel:0980-85-4341
http://www.kuroshima.org/
ウミガメ勉強会申込先:
安永観光
Tel:0980-83-0055
石垣島ドリーム観光
Tel:0980-84-3178