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宮古島島尻地区の奇祭パーントゥ
宮古島を訪れたことのある人なら、一度はこの神様の写真を見たことがあるんではないでしょうか。
全身に泥を塗った神様「パーントゥ」です。
姿だけでも十分異様ですが、この神様は目が合えば泥をつけようと襲いかかる性質があります。
先日宮古島の島尻集落でパーントゥのお祭りを見て来ました。
お祭りの由来
パーントゥとは正式には『パーントゥ・プナハ』と呼ばれる、国の重要無形民俗文化財。
「パーントゥ」は宮古方言で鬼や妖怪、「プナハ」は祈願祭という意味です。
百数十年前に島尻集落の北の海岸にクバの葉で包まれた仮面が流れてきました。
流れついた日はちょうど集落のお祭りの日。神女たちは仮面を海の彼方からの来訪神だと考え豊作円満をもたらすので大切に保管するようにと村の人々に伝えたそうです。
時は流れ、現在では漂着した仮面を親(んま)とし、さらに中(なか)、子(っふぁ)の3つの仮面を使い、集落の若者が体中に泥を塗って、その上にキャーン(シイノキカズラ)で作った蓑を着て神の化身となり、人々に泥を塗って厄を払い無病息災を願う祭りとなっています。
島尻集落の入り口にある看板
つまり3人の神様が人々に泥を塗ろう(厄払いのために)と企んでいるお祭りなのです。
パーントゥが行なわれる日は、旧暦9月の戊の日から数日内。
しかし日程の最終決定は集落の神職者によって決められるので、直前になるまで日程が分かりません。
パーントゥがやってきた
集落のはずれにパーントゥが生まれる聖地「ンマリガー(生まれ井戸)」があります。
昔は子どもが生まれた際に、ンマリガーの井戸の水を産湯に使っていたそう。
パーントゥの泥はンマリガーの井戸から泥をくみ出し使っているそうです。
つまりヘドロ。
そう、パーントゥは姿もさることながら強烈なにおいも伴って生まれるのです。
ンマリガーは一般の人は立ち入り禁止。
私たちはンマリガーの近くの広場でパーントゥが現れるのを待ちます。
取材陣もたくさん来ています。
時刻は午後5時。薄曇りの空の下、子どもたちもこれからはじまるお祭りに浮き足立っています。
そしてその時がやってきました。
ンマリガーの方をうかがっていた子どもたちが「きたーー!」という大声をあげながら逃げて来ます。
遠くにパーントゥの姿が!
走るパーントゥ。逃げる子ども。
パーントゥになるのは若い青年なので足がめちゃくちゃ速いです。
- 差し出されるお兄さん
- やられた
泥をつけられると厄払いになってご利益もあるというのに、この焦燥感は一体どうしたことでしょう。
頭ではつけられた方がいいとわかっているのに、近づいてくると思わず後ずさりしてしまうのは人間の心理でしょうか。
集落で大暴れ
集落に入ったパーントゥを距離をとりながら追いかけるも、いきなり方向転換したり、走り出したりするパーントゥに捕まえられ泥をつけられる人が増えていきます。
新築のお家に入るパーントゥ。
お家に入られてしまった島尻さん80歳。
家も顔も泥だらけなのに、なんだか嬉しそうです。
赤ちゃんにも泥を塗ります。
このように、新築の家屋や新生児に泥をつけるのは、新しい命に好んで取りつく悪霊を祓うと同時に、嘉例をつける(祝福する)という意味もあるからだそうです。
新築屋でおもてなしされる神様。
お酒が振る舞われていますが、よく見ると畳はブルーシートで覆われています。
お返しの壁汚し。
転ばされて襲われる子ども。
ギャーって言いながら襲われた友人。
叫んでいたから口の中まで泥が。
ものすごく臭いけど、味はしなかったそうです。
泣く子と大笑いする母と呆然とする子
駐車している車も襲われます
日は暮れるけれどパーントゥは終わらない
パーントゥが現れるのは17時から20時ぐらいまで。
本当に怖いのは日が暮れてからです。
この中のどこかにパーントゥがいます。
いた!
家の明かりがあるとはいえ暗いところも多いので、油断すると前から歩いてくるパーントゥとぶつかってしまいそう。
1人を見つけていてもあと2人がどこにいるかわからず、聞こえてくる悲鳴を目印にするしかないという恐怖。
数十年前にパーントゥ役をしたことがあるという男性に話を聞きましたが、昔は観光客もおらず集落だけのお祭りだったので「今よりずっと面白かったよー!」と笑っておられました。
パーントゥ後の我々
最初から最後まで3時間パーントゥを見た私たちの姿を。
使用前の私と友人。
使用後
襲われることそれぞれ2回。
すっかり薄汚れた女になりました。
しかし、これで病気もせずに元気に暮らせるし、良いことがあるはずです。
パーントゥさんありがとう。
以上、怖くて楽しい鬼ごっこ、宮古島島尻地区のパーントゥ・プナハでした。