【万国津梁の鐘のススメ】鋳造編
コラボ企画
- 万国津梁の鐘のススメ
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万国津梁の鐘のススメは沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)が行う「万国津梁の鐘プロジェクト」とDEEokinawaがタイアップして、万国津梁の鐘の魅力をお伝えする企画です。
万国津梁の鐘プロジェクト
万国津梁の鐘とは
万国津梁の鐘(ばんこくしんりょうのかね)という名前は知っていても、沖縄県民ですら、「どこにあるの?」「なにがすごいの?」などを説明できる人は少ないのではないでしょうか。
万国津梁の鐘は琉球王国時代の1458年に尚泰久王が鋳造させた和鐘であり、首里城正殿に掲げられていたとされていますが首里城のどこに設置されていたのかは定かではありません。
第二次世界大戦下では金属類回収令による供出をなんとか免れましたが、沖縄戦で被災し、表面にはその時の弾痕が残っています。
1978年6月15日に「銅鐘(旧首里城正殿鐘)」の名称で国の重要文化財に指定されました。
特に有名なのが鐘に刻まれた銘文。かつて琉球王国が海洋国家としてアジアの国々と交易する中で、世界の「架け橋」として活躍したことが誇らしげに刻まれています。
現在は沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)の常設展示室で台に乗せた状態で展示されていますが、来館者から「実際の音を聞いてみたい」という意見を受け、X線等によって鐘の状態を調査した上で2016年11月に打音を収録し、2017年2月から、開館時間内の毎時0分・30分に館内で音を聞くことができます。
万国津梁の鐘プロジェクトのワークショップが面白い
万国津梁の鐘の魅力を伝えるのはなかなか大変ですが、おきみゅーさんは手を変え品を変えこれまでたくさんのワークショップをやってこられました。
万国津梁の鐘プロジェクトのページには過去に行われた興味深い内容を見ることができます。
解体梵鐘 vol.0 万国津梁の鐘はどこに!?
首里城に掛かっていたというけれど、お城に鐘?本当に首里城に鐘がかかっていたのかな?ワークシートを使って万国津梁の鐘が掛けられていた場所を大胆予想!
解体梵鐘 vol.3 万国津梁の鐘の音をサイエンス!
時報として使われていたと考えられる万国津梁の鐘。
首里で撞いた鐘の音がほんとうに那覇の街まで聞こえたのか?
このワークショップでは目には見えない音のヒミツから鐘がごぉぉぉんと響く秘密まで、いろんな実験で大検証!
慈眼院首里観音堂さんの鐘を撞いて、おきみゅーまで聞こえるのかを試してみました!
解体梵鐘 vol.4 連続講座 万国津梁の鐘銘文の秘密
万国津梁の鐘には一体何が刻まれているのか?刻まれた内容を一言一言確認しながら、銘文をお手本に4回に分けて筆ペンで臨書!
2023年1月のワークショップ
そして次回は錫(すず)を溶かして、鐘の一部をトレースし再現するワークショップを開催予定だとか。
解体梵鐘 vol.8 万国津梁の鐘、名工に倣う
2023/1/9(月・成人の日)13:30-16:00
万国津梁の鐘はどのように造られているのか?
古来の鐘づくりと同じように砂を挽き回して製作された鋳型に模様を彫り、金属を流し込む本格的な鋳造体験です。
万国津梁の鐘をつくり上げた当時の名工の技を見ならい梵鐘の模様を自らの手で再現してみましょう。
琉球金工品の復元に携わる上原俊展氏を講師に迎え、鐘の具体的な製作技術や見どころを紹介します。
この体験で鐘を見る目が変わります!
(おきみゅーのサイトにリンクします)
鋳造のワークショップが本当にできるか前実験
ワークショップの講師は金細工職人の上原 俊展さん。
沖縄で唯一の「シルカニゼーク(錫細工)」の職人で、100年前に途絶えてしまった沖縄の「錫文化」を復活させるために取り組んでいる方です。
琉球錫文化再興のために沖縄に移住し、現在は「金細工まつ」を立ち上げ琉球の錫文化の研究と、錫細工の新しいかたちを提案されています。
※上原さんの作品は美術館・博物館内にあるミュージアムショップ「ゆいむい」でも取り扱っているそうです。
もともとは仏具や梵鐘づくりの町、富山県高岡で職人をされていたということで、まずは万国津梁の鐘を含め、鐘がどうやって作られるのかをおしえていただきました。
土と砂でつくられた内型の上に外型を置き、間の隙間に溶かした青銅(銅と錫などの合金)を流し込んで型を作るそう。
この作り方、シンメーナービ工場の制作の過程と一緒です。
鐘も金属を溶かして固める鋳造(ちゅうぞう)で作るんですね。
ただ鐘とシンメーナービとの違いは原材料はもちろんですが、見た目。
縦や斜めの線は模様として描かれていますが、横の線は継ぎ目の場合も。
シンメーナービは1つの外型を被せて作っていましたが、大きな鐘の場合は外型をなん分割かにして重ねてから鋳造するので、継ぎ目がわかるそう。
模様は外型を作ったときに中に手を伸ばして、描いておき流し込んだ後に浮き出るようになっている場合と、その部分の型を別につくっておき、本体の型に埋め込む方法があるそうです。
鐘の上についている龍の部分にも、よく見たら継ぎ目があって、半分ずつ作った後にガッチャンこしているのがわかります。
上原さんによる鐘の作り方解説と一緒に鐘を見ると、見方がわかります。
「この技術すごい!」「ちょっと曲がってるのが味ですね」とか言えるようになります。
鋳造ワークショップ
さてワークショップです。
鐘本体を鋳造できたらすごいのかもしれませんが、それをするにはまず参加者が何年も修行しに行かないとのレベルです。
今回は鐘本体ではなく意匠の一部をトレースして作ってみようというワークショップ。
- これは鐘をつく「撞座」と呼ばれる部分
- 万国津梁の鐘の下にある「草の間」の模様
シンメーナービ工場ではマグマのようなアルミを鋳造していたので「あれをおきみゅーで!?」と思ってましたが、上原さんが扱う錫は約230度で溶ける比較的安全で扱いやすい金属だそう。
模様を描こう
ワークショップでは基本的には鐘の意匠の一部をトレースということですが、実験なのでなんでもいいよと言われて好きな模様を描くことに。
模様を描く砂型の材料は上原さんが工房の近くで見つけてきたもの。
今回は約230度で溶ける錫の鋳造なので問題がないですが、それでも沖縄では珍しい鋳造向きの土です。
鐘を作る場合は沖縄には他府県で鋳造に使っているような熱に耐えうる土(マグマが元になったような岩石)が少なく、途中で形が崩れてしまうので精巧な模様が作りにくいそうです。
、鐘を作る青銅の溶ける温度は1200度。それだけの強い土が鐘を何個も作れるほどたくさんあるはずもなく、また燃料である薪にも限りがあるため、万国津梁の鐘を含めて、沖縄にある鐘はほとんど本土で作られていたと考えられています。
- 錫を流し込んだら浮き出るので、トレース紙を反転してあたりをつけます
- 細いペンのようなもので彫ります
- miooon作:社畜
- やんばるたろう作:コラボ違い
内型と外型を一緒に万力で挟みます。
鋳造します
錫を流し込むのですが、安全性が高いとはいえ約230度に溶けた金属。
結構怖いです。ちゃんと上原さんのいうことを聞き慎重にしましょう。
少し時間をおいて外型を外してみると
おおお!
想像以上にいい感じに出来上がりました!高尚である!
どちらもちゃんとわかりますね。
でもやんばるたろうは企業違いでまじでコラボ元のおきみゅーさんに怒られるよ!
ワークショップの参加者募集
解体梵鐘 vol.8 万国津梁の鐘、名工に倣う
2023年1月9日(月・成人の日)13:30-16:00(13:00受付開始)
@博物館実習室
参加費¥5,000(材料費、博物館常設展示室入場料込)
小学4年生以上対象(小学生は保護者同伴)
汚れても良い服装でご参加ください。
定員20名
(おきみゅーのサイトにリンクします)
ということで鐘の一部を作るワークショップの実験模様でした。
ワークショップでは鋳造以外にも今回わたしたちが受けた上原さんによる鐘の見方解説もあります。
最初の解説で鐘の見方がだいぶ変わりましたが、鋳造したらもう一度細部まで鐘を見たくなりました。
体験を通して沖縄の歴史文化を学べるワークショップ。おすすめです!