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クバ巻ボトルができるまで
与那国島の名産のひとつ、クバの葉で巻かれた泡盛ボトル。見た目がとても可愛いこのボトルはどのように作られているのでしょうか?今回も『カチダイ』でお世話になった、『国境の酒どなん』でお馴染みの国泉泡盛合名会社さんにお願いして見学させてもらうことができました。
ところでクバとは?
与那国島にはクバの森がたくさんある
クバとは沖縄の方言でビロウのこと。
ビロウとは15mほどに成長するヤシ科の常緑高木。葉っぱは掌状で2mほどにもなりとても丈夫。もちろん与那国町の町木になっています。また、沖縄市のマンホールにもクバの木がデザインされていたりもします。
- クバ笠
- クバ餅は、クバの葉で包んだ与那国島の伝統的な餅
葉や幹は工芸品や民具などに使用されることが多くあります。特に葉は色々と使われていて、クバ笠やクバオウジ(扇)、クバジー(ウブル)と呼ばれる水汲みや柄杓などの民具。屋根に葺いたり、サバニの帆にも使われていたことも。
丈夫な幹は床材として、また三線の棹に使われていたこともあるそうです。
昔は新芽を茹でて食べていたそうですが、現在は禁止されているとのこと。食べてみたかっただけに残念。
このように色々と使われているクバ。クバの葉で巻かれているあの泡盛ボトルはどのようにして作られているのでしょうか。作業中の1軒におじゃまさせて頂きました。
クバ巻職人
クバ巻きボトルは工場内で作られていると思いきや、島内に住む職人さんの自宅に届けて、各自宅で作業をしてもらってます。
今では職人さんも減ってしまい、5〜6軒のお宅のみ。
敷地内の作業場に、オジイとオバアが仲良く並んで手際よく分担作業。
10ケース分くらいのダンボール箱が搬入され山積みになっていましたが、二人で作業をして一日3ケースを目安に作るそうです。
ー 1本仕上げるのにどれくらいかかるんですか?
オジイ:1時間!
オバア:また嘘ばっかり!簡単にやれば5分で終わるさー。でも、クバの葉の硬さや大きさなんかに合わせてひとつひとつ丁寧に巻いていくから15分くらいかね。
まずクバの葉を採ってきます。
島のあちらこちらに自生していますが、勝手に採っていいわけではありません。クバの葉を採っていい時期は決まっていて、時期が来ると公用林に入り採ってきます。自分の山を持っている人は時期は関係なく採っていいのだとか。
採ってきたクバの葉を洗って乾かします。
ー 採ってきたクバの葉はどれくらいで使えるようになるんですか?
夏は1週間くらいで乾くけど、冬は1ヶ月以上かかる。乾くと葉が青白っぽくなってくる。干し過ぎると色が赤くなって長持ちしないし割れてしまうし、出来上がった後の見栄えも劣るので、適度な具合に乾かすコツが必要。少しだけ緑色が残り、粘りがなくなってきた頃が頃合い。触ってみればわかるさーね。仕事はなんでも仕事が教えてくれるさー。
使えるクバ葉の選定は手の感覚と見た目。乾いたクバの葉を手に取り、葉の特徴をつかみます。
一枚の葉の中にも、長い部分や短い部分があったり、硬さも違うのでどう使うか見極めます。
- 根元側を切る
- クバで巻いたらゴムで止める
葉の根元側をカットし、左右と中心部と分けて裂いていきます。根元側を瓶の口側に当て、葉を広げながら瓶の形に沿わせ、尚且つ葉のキレイな部分同士を芯目に逆らわないように丁寧に合わせて、ぎゅっと形を決めたら輪ゴムで仮止め。
黒い本ゴム(一升瓶、二合瓶、三合瓶、赤ちゃん瓶。それぞれ大きさを使い分けている)で瓶の口をしっかり留めたあと、クバの葉を一本細く裂いた紐で横に結んでいく。しっかりと片結びしてはみ出した部分をハサミで切って、これで上半分がほぼ完成。
- 葉先の半分ほど切り落とす
- 隙間ができないように包んでいく
続いて瓶をひっくり返し、底の部分へ。瓶の丸い形の通りにはみ出している葉は、だいたい1/2は長いまま、端っこの四分の一は完全に切り落とし、間に 残った残り四分の一は長短の真ん中の長さで切る。この段違いの長さを上手く生かして底の丸い形を隙間なくピッタリと巻いていく。とにかく速い!
細く裂いたクバの葉を上下に2本、胴体に結ぶ。この作業には、オバアのこだわりがあります。
この後オジイの手によって、どなんの商品ラベルが貼られていくが、ラベルの大きさとぴったり一致するよう幅を合わせて、紐の位置を決める。結んだ紐の線もまっすぐになるように、葉の自然な突起でくびれている所から割れていかないように。なにより仕上がりが美しくなるようにと。
- ラベルの端がクバの紐の上にくるように調整
- 不要な部分はキレイにカット
ミニボトル、二合瓶、三合瓶、一升瓶のクバ巻ボトルがありますが、オバアが『赤ちゃん瓶』と呼ぶ100mlのミニボトルは、その小ささゆえ、更に細かい作業で巻くのが難しいのだとか。オバア専用の道具もあるようです。
キレイに巻き終わったボトルは、隣で作業するオジイに渡されます。
オジイの力仕事
オバアの手で巻かれたボトルは隣のオジイへ。
まずどなんの商品ラベルを口側と胴体に貼っていきます。シールだと思いきや何とラベルに糊を塗っての手作業!
ボトルを置いている台はオジイのお手製。「自分のやりやすいように工夫せんと」
- 指でラベルに糊を塗ります
- ペタっ
オバアこだわりの、ラベルの幅に合わせたクバ紐の上にラベルを貼ります。店頭で見てみると確かにバラバラなものが多い。ラベルの端がビシッと揃っているものはここで作られているものかもしれませんね。
- クルクルっと縄を結って
- ボトルに巻き結んでいきます
ラベルを貼り終えた次は力仕事。細い縄で瓶の重さに耐えうる持ち手をくくりつけます。外れたりしないよう、結び方にもこだわりを持ってギュッギュッと結んでいきます。あまりに素早く縄の通し方結び方がまったくわからない。
ラベルが貼られ、縄も結ばれたボトルは再びオバアの元へ。
オバアが仕上げ
瓶は再びオバアの手に戻り仕上げ。細く裂いた葉を、根元は繋げたまま更に細く裂き、青いキャップを隠すように、オジイが付けた取手の紐を巻き込みながらねじり上げて行く。ものすごい難しそうな技だけどものすごく速い!
- 裂いたクバの葉をキャップに被せる
- 取っ手となる紐も一緒に巻いていく
ここしっかりと横にグルグル巻いておけば、上から取手を持っても抜けない(ただしさすがに一升瓶の重さでは抜ける時もあるとか)。ここもオバアこだわりポイント。
店頭で売られている、他の職人さん製作のボトルを持ってチェックすることもあるそう。
とてもキレイに巻かれている。横に垂れたクバ紐がかわいい
「紐は外れるし、ラベルの位置もズレてる物があるさ。どこのバカ野郎がやったかね?と思うことあるよー。速くやるより丁寧にやらんと」
仕上がりを重視するオバアは、合格点を出していないみたいだ。
- キャップの部分だけ外せます
- 空港で売られていたものを見ると確かに
お土産には手作業のクバ巻ボトルを
ここまでの行程で約15分。
いったいどれくらい長い間この作業を続けてきたのかと思いきや、なんと島の職人さんのなかでは新人なんだそう!ご夫婦は長いこと那覇に住んでおられたのち与那国に帰郷。野菜を育てながらクバ巻きを始めたとのこと。わずか30分ほどで見られた見事な手さばき、随所のこだわり。
「速さも大事だけど仕上がりはもっと大事。お客さんが手にするものだからね」
酒屋さんで『どなんクバ巻ボトル』を見かけたら、瓶の上を持ってみて抜けなかったり、ラベル下の紐の位置がピッタリ合っていたら、それはオジイとオバアの作品かもしれません。
突然の訪問にも職人さんを紹介していただいた国泉泡盛合名会社さま、やさしく丁寧に教えてくれたオジイオバア。ありがとうございました。これからも長くクバ巻ボトルを作り続けて欲しいですね。
※国泉泡盛合名会社にて工場見学は行っていますが、今回のクバ巻工程は通常見ることはできません。